ドゥーギン娘の暗殺、いつもの「雑な自作自演」から見えるロシア諜報機関の対立
もしウクライナがロシア国内で暗殺作戦を実行するなら、大物の政治家や軍人を狙うはずだ。ウクライナのロシア占領地域では、本国から派遣された高位の文官数人が暗殺されており、ウクライナ軍特殊部隊は数多くのロシア軍将校を殺害している。
今回の事件に漂うのはむしろ、ロシアの仕業という疑惑だ。ドゥーギナを殺害すれば、ロシアの情報機関とプーチン体制は多くのよこしまな利益を得る可能性がある。
ロシア情報機関の一角であるFSBとSVR(対外情報庁)は対立関係にあり、プーチンの寵愛を争い、ウクライナでの不手際の責任をなすり付け合っている。FSBはウクライナでの工作活動に失敗しており、プーチンは担当部署であるFSB第5局のトップを解任・投獄した。
その一方で、ロシアのウルトラナショナリズム主義者らは、ウクライナでのプーチンの「穏健姿勢」やお粗末な戦績への批判を強めている。
つまり、今回の暗殺事件はロシア情報機関のウルトラナショナリストへの警告だったのではないか(ウクライナへの攻撃が手ぬるいと、ドゥーギンはプーチンを批判していた)。同時に、ドゥーギンはFSBとSVRの対立の犠牲者、あるいは同じスラブ民族であるウクライナへの侵攻を非難する愛国者の標的になった可能性もある。
ドゥーギンの車を爆破したのは誰か。答えは分からない。だがロシア側の犯行とすれば、想定できるシナリオはいずれも犯人に何らかの「利益」をもたらす。一方、ウクライナの場合、得るものはゼロだ。
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