コラム

嘘をばらまき続けたポンペオは、国務長官にふさわしくない

2018年05月05日(土)13時30分

ポンペオは共和党右派の武闘派として民主党にかみつき続けてきた Aaron P. Bernstein-REUTERS

<オバマの国籍問題から駐リビア領事館襲撃事件、ロシア疑惑に至るまで、多くの事実をねじ曲げてきたポンペオ>

この記事が読者に届く頃には、米上院本会議でマイク・ポンペオの国務長官就任を認めるかどうかの採決が終わっているだろう(編注:4月26日に承認)。難航しつつも最終的には承認されるとの見方が現時点では強いようだが、採決はかなりの僅差になる可能性が高い。

明るい性格で、最近は謙虚な姿勢も見せるようになったが、ポンペオは政界で敵の多い男だ。下院議員を6年間務めた後、昨年のトランプ政権発足後はCIA長官を務めている。その間、共和党右派の武闘派として、民主党を攻撃するために陰謀論と真っ赤な嘘をばらまいてきた。

陸軍士官学校を首席で卒業したポンペオは、陸軍士官として5年間勤務。その後、ハーバード大学法科大学院を優等で修了した。下院議員に当選したのは2010年。草の根保守派運動「ティーパーティー」の台頭が追い風になった。

CIA長官への就任後は、プロの情報将校たちの話を「聞く力」を発揮し、手ごわくて巨大な組織をうまく運営してきたようだ。「よそ者」で「政治家」の長官に懐疑的な傾向が強いCIAにあって、これは評価すべき点かもしれない。

しかし、ポンペオがおぞましい嘘を拡散してきたことは紛れもない事実だ。特にひどい嘘が5つある。

■イスラム教徒
反イスラム勢力と結び付きがあるポンペオは、イスラム教指導者が01年の9.11テロを十分に批判していないと主張。3000人余りの罪なきアメリカ国民らの殺害に加担したと言われても仕方がない、とまで非難した。

実際には、アメリカのイスラム教指導者は9.11テロを厳しく批判していたが、ポンペオは発言を撤回していない。

■オバマの出生地
ポンペオは、オバマ前大統領の出生地がアメリカではなく、アメリカ大統領を務める資格がないという荒唐無稽な主張を広め続けた。この主張は露骨な嘘であり、人種差別的な発想も見え隠れする。

■ベンガジ疑惑 
12年にリビア東部のベンガジの米領事館がイスラム過激派に襲撃され、大使を含むアメリカ人4人が死亡した。ポンペオなどの共和党政治家は、当時の国務長官だったヒラリー・クリントンの職務怠慢が事件を招いたと主張。16年大統領選では、クリントン批判の材料にも用いた。

しかし、外交や情報活動の専門家の目から見れば、共和党の主張は事実を歪曲している。クリントンは事件と関係がない。ポンペオらは、政敵の足を引っ張るために、外交官の死を利用し、真実をねじ曲げている。

プロフィール

グレン・カール

GLENN CARLE 元CIA諜報員。約20年間にわたり世界各地での諜報・工作活動に関わり、後に米国家情報会議情報分析次官として米政府のテロ分析責任者を務めた

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

EU産ブランデー関税、34社が回避へ 友好的協議で

ワールド

赤沢再生相、ラトニック米商務長官と3日と5日に電話

ワールド

マスク氏、「アメリカ党」結成と投稿 自由取り戻すと

ワールド

OPECプラス有志国、増産拡大 8月54.8万バレ
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:トランプvsイラン
特集:トランプvsイラン
2025年7月 8日号(7/ 1発売)

「平和主義者」のはずの大統領がなぜ? 核施設への電撃攻撃で中東と世界はこう変わる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「飲み込めると思った...」自分の10倍サイズのウサギに挑んだヘビの末路
  • 2
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...父親も飛び込み大惨事に、一体何が起きたのか?
  • 3
    「本物の強さは、股関節と脚に宿る」...伝説の「元囚人コーチ」が説く、正しい筋肉の鍛え方とは?【スクワット編】
  • 4
    孫正義「最後の賭け」──5000億ドルAI投資に託す復活…
  • 5
    後ろの川に...婚約成立シーンを記録したカップルの幸…
  • 6
    「やらかした顔」がすべてを物語る...反省中のワンコ…
  • 7
    「飛行機内が臭い...」 原因はまさかの「座席の下」…
  • 8
    「詐欺だ」「環境への配慮に欠ける」メーガン妃ブラ…
  • 9
    職場でのいじめ・パワハラで自死に追いやられた21歳…
  • 10
    反省の色なし...ライブ中に女性客が乱入、演奏中止に…
  • 1
    「飲み込めると思った...」自分の10倍サイズのウサギに挑んだヘビの末路
  • 2
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...父親も飛び込み大惨事に、一体何が起きたのか?
  • 3
    「やらかした顔」がすべてを物語る...反省中のワンコに1400万人が注目
  • 4
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
  • 5
    仕事ができる人の話の聞き方。3位は「メモをとる」。…
  • 6
    後ろの川に...婚約成立シーンを記録したカップルの幸…
  • 7
    【クイズ】「宗教を捨てる人」が最も多い宗教はどれ?
  • 8
    普通に頼んだのに...マクドナルドから渡された「とん…
  • 9
    砂浜で見かけても、絶対に触らないで! 覚えておくべ…
  • 10
    職場でのいじめ・パワハラで自死に追いやられた21歳…
  • 1
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 2
    「飲み込めると思った...」自分の10倍サイズのウサギに挑んだヘビの末路
  • 3
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 4
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 5
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事…
  • 6
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 7
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 8
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
  • 9
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
  • 10
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story