北朝鮮「スリーパー・セル」を恐れる必要はない
ロシアの美人スリーパー
通常、スリーパーはターゲット国で、与えられた任務に近い分野の仕事を得ようとする。そして、一見したところ愛国的な市民という隠れみのを作り、その国の国家安全保障関係者に取り入り、政府の「計画や意向」に関する情報を引き出す。
スリーパーがターゲット国で就く仕事と、本国から与えられた任務が全く異分野の場合もある。例えば自動車修理工場で働いているけれど、最終的な任務はほかのスパイの脱出作戦を実行することかもしれない。
最近の有名なスリーパーとしては、10年にアメリカで逮捕されたロシアの「美し過ぎるスパイ」アンナ・チャップマンがいる。彼女の任務は、欧米諸国の男と結婚して、姓を変えて、アメリカに移住して、普通の生活を送りつつ、世界の金融の中枢に入り込むことだった。
だから彼女は、アレックス・チャップマンというイギリス人と結婚して、姓を変え(旧姓はクシュチェンコ)、イギリスの市民権を取得し、離婚して、アメリカに移住した。そしてニューヨークの金融業界でばりばり働き、貴重な情報を与えてくれそうな男がいれば、自分の体を差し出して手に入れた。
チャップマン逮捕後にロシア側の関係者が明らかにしたところによると、チャップマンはオバマ政権高官をたぶらかし、アメリカの外交情報を手に入れようとしていた。
「もし」を重ねる危険性
日本に潜伏する北朝鮮のスリーパーは、もっと恐ろしい任務を与えられているという。その主張に裏付けはないが、北朝鮮による拉致問題や、外国での殺人や韓国への攻撃が、その主張にもっともらしさを与えている。
だが実際には、スリーパーはターゲット国に長期間滞在し、その社会と文化に深く組み込まれてしまうため、いざ作戦開始の指令が出ても「普通の生活」を続けたがることがよくある。
また、カウンターインテリジェンス(防諜)に従事する者は、複数の「もし」をつなげて考える危険性を忘れてはならない。「もしXが事実なら、Yも事実かもしれない。そしてYが事実なら、Zも事実かもしれない。そして......」というわけだ。こうした思考プロセスはよくあるもので、本来なら信じ難いこと、つまりスリーパー・セルが動き出して国家を脅かすというとっぴな脅威が、目前に迫っているように感じられてしまう。
「トランプ大統領」の出現を19世紀に予見した男 2024.03.28
日本は尖閣沖の中国製漂流ブイを撤去せよ 2024.03.06
「ボストンを変えた」交響楽団に音楽監督として乗り込んだ小澤征爾が打ち破った上流社会の伝統 2024.02.28
まるで「対岸の花火」......日本人は金正恩の「ミサイル挑発」にどう向き合うべきか? 2024.02.06
フーシ派海賊攻撃と、国際秩序を不安定化させる「3体問題」 2024.01.23
もうEVに乗り換えるしかないのに、日本の「出遅れ感」と「痛恨のミス」が気になる... 2023.12.27