コラム

高市早苗氏はなぜ敗北したか―ネット保守の過激すぎる応援がアダに

2021年10月01日(金)21時42分

中堅企業であっても、中国本土や香港に現地法人を設立することはまったく珍しい事ではない。中国と取引がある企業をファミリー企業として持つから、その政治家の思想信条までも中国に忖度する、という理屈は端的に飛躍であって、中国と取引関係を有する山のような企業の株を有する他の政治家も、同じように批判されなければならないが、これだけの経済規模を持つ中国と直接・間接にもまったく取引がない、という日本企業の方が例外的であり、理屈になっていない

6】「日本端子」疑惑がさらにエスカレート

しかし日本端子をめぐって特に問題とされたのが、この海乱鬼氏のツイートから波及した次の問題である。日本端子は中国本土に現地法人を持つだけではなく、中国企業と合弁しているのである。

確かに日本端子の現地法人である「北京日端電子有限公司」が、「北京京東方科技集団股分有限公司(BOEテクノロジーグループ)」と合弁しているのは事実である。だがこの合弁事実が如何にも不自然であるとして、ジャーナリストの有本香氏が、夕刊フジの連載(2021.9.25WEB公開)で以下のように疑問を呈した。


"海外事業がほぼ中国のみで展開されている「日本端子」について、多くの国民がいぶかしく思うのは、不釣り合いな合弁相手だ。同社のサイトによると、関連会社である北京日端電子有限公司(北京市)の合弁相手は「北京京東方科技集団股分有限公司(BOEテクノロジーグループ)」だという。ディスプレーで世界屈指のシェアを持ち、営業規模2兆円を超える大企業が、100分の1以下の規模の日本の中小企業に、特例的な株式比率での合弁を許してきた。その理由は「日本端子が、河野ファミリーの会社だからではないか」と誰もが思う。"

なるほど私もこの記事を読んで、即ち日本端子とBOEの合弁案件の背後には、河野一族(特に会長である洋平氏)と中国の特殊な関係があるのではないか、と思った。

保守系論壇誌『正論』のWEB番組、『チャンネル正論』が、2021年9月23日に公開した"@CHANNELSEIRON 「編集長の言いたい放題」番外編~メディアが報じない河野太郎問題~"において、有本氏にやや先行してこの"疑惑"を株式会社アシスト代表取締役社長の平井宏治氏が詳細に解説している。その中で平井氏は、


平井)非常に素朴な疑問があるのはですね、メンツを重んじる中国が、中国を代表する大企業です、ここがですね売上高155億円の日本企業。まあ中堅企業です。と、合弁会社を継続している理由は何だろうか、ということですね。BOEを組むとすれば例えばパナソニックとかね、ああいうクラスなんですよ。ええ。ところが部品の会社を合弁で組んでいるというのは、合弁事業をたくさん仕事柄見ている私からすると非常にちょっと違和感を感じますね、と。やはり中国と関係の深い方々なのでね。そういったこと(疑惑)がある、かもしれないな、ということあります。

有元隆志・聞き手)これやっぱり河野太郎さんというか、河野洋平さん、お父さまがこの会社だというのが非常に大きかったと推測されますか。

平井)そうですね、そういう推測は成り立ちうると思いますね。はい、やはり普通のね、こういう言い方アレですけど、町場のね、150、60億円の日本企業が中国に行って、BOEと合弁組みましょうと言えばですね、よほどの特別な技術でも持っていない限りは、まあ門前払いですよね

プロフィール

古谷経衡

(ふるや・つねひら)作家、評論家、愛猫家、ラブホテル評論家。1982年北海道生まれ。立命館大学文学部卒業。2014年よりNPO法人江東映像文化振興事業団理事長。2017年から社)日本ペンクラブ正会員。著書に『日本を蝕む極論の正体』『意識高い系の研究』『左翼も右翼もウソばかり』『女政治家の通信簿』『若者は本当に右傾化しているのか』『日本型リア充の研究』など。長編小説に『愛国商売』、新著に『敗軍の名将』

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