コラム

高市早苗氏はなぜ敗北したか―ネット保守の過激すぎる応援がアダに

2021年10月01日(金)21時42分

しかし結果としてネット保守は、こうした岩田氏の見解をほぼトレースしており、一郎氏が親ソだからダメ、洋平氏が河野談話を出したからダメ、その息子の太郎氏もダメとして一括りに「河野反日(売国)三代」として河野批判を展開した。批判するのは自由だが、理屈としてはあまりにも粗雑と判決するしかない。

5】「日本端子」疑惑に火が付く

総裁選も中・後半になってくると、高市支持とセットで展開される河野批判はますますエスカレートした。ネット空間で急激に話題になったのは、所謂「日本端子」に関する疑惑である。日本端子は1960年8月に設立された主に端子、コネクタの設計・開発及び製造を手がける中堅企業である。

同社の現会長は河野太郎氏の父である河野洋平氏、社長は太郎氏の弟である河野二郎氏である。太郎氏自身が同社で勤務経験がある。また、洋平氏の資産公開によって、同社の株(非上場)の30%を持つ大株主であることが判明しており、太郎氏自身も同社の4000株を保有しているとされる。いわば日本端子は、河野一族のファミリー企業であると言ってまず差し支えはない。しかし日本端子と河野氏の関係性が批判的に指摘された。

私の調べでは、この日本端子に関する問題を最初に伝播したのは、ツイッターで約8.5万人のフォロワーを有するネット保守界隈では有名な「海乱鬼 @nipponkairagi」氏によるツイートであり、その日付は2021年9月20日(総裁選投開票9日前)である。同氏によれば、


"日本端子の企業情報。河野家で会長、社長、取締役を押さえて、株主に河野太郎自身も入ってる。売上も安定してるし得意先の中国と仲良くないと河野家も自分も困るって事か。これじゃ中国様に対して強く出るわけないし、靖国参拝を中国様に遠慮するわけだ。総裁になったら誰の為に働くか想像がつくよな。"

とし、このツイートが猛烈に閲覧されたことで河野批判の前衛として日本端子がクローズアップされた。海乱鬼氏は同ツイートの中で、調査会社の企業情報を添付し、その主張の傍証としている。事実、日本端子は中国に進出しており、河野太郎氏に少なくない額の政治献金も行っている。

私自身、複数の信用情報から確認したが、日本端子は100%出資の現地法人として、中国本土に「北京日端電子有限公司」(1995年12月設立)、「昆山日端電子科技有限公司」(2012年11月設立)を有し、香港にも「香港日端電子有限公司」(1996年7月設立)の三社を有する。

プロフィール

古谷経衡

(ふるや・つねひら)作家、評論家、愛猫家、ラブホテル評論家。1982年北海道生まれ。立命館大学文学部卒業。2014年よりNPO法人江東映像文化振興事業団理事長。2017年から社)日本ペンクラブ正会員。著書に『日本を蝕む極論の正体』『意識高い系の研究』『左翼も右翼もウソばかり』『女政治家の通信簿』『若者は本当に右傾化しているのか』『日本型リア充の研究』など。長編小説に『愛国商売』、新著に『敗軍の名将』

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