コラム

投資に最高性能のAIを使っても、それで差はつかない。ChatGPTの時代に個人投資家が勝つには何が必要か

2023年12月28日(木)17時35分

fujino231228AI-2.jpg

レオス・キャピタルワークスの最高投資責任者、藤野英人氏(「お金のまなびば!」より)

「平均的」な価値観ではAIに淘汰され、世界に後れを取る

では、AIが発達した未来で個人投資家にできることは何なのだろうか。藤野氏は続ける。

「日本市場予測において、多くのファンドマネージャーは自分たちなりに銘柄の相対的な魅力度を判断するモデルを作り、会社調査をして、業績のコンセンサス予想より上に行くか下に行くかの当てっこゲームをしている」

「しかし、決算データや予測数値、月次報告、グローバル市場や競合企業の動向を読み込み、リアルタイムに業績が上がるか下がるかの確率を予想するのは、人間よりもChatGPTのほうが瞬時にできる。そうすると投資家にできることは、短期予想ではなく、5年、10年の長期をどれだけ見るか」

今井氏によれば「AIが普及すると、個人の能力差にあまり意味がなくなる」。生成AIは既存のデータを集めて学習するので、アウトプットも「平均的」になっていき、そうすると、いかに「非凡であるか」「極端であるか」が求められる時代が到来しそうだ。

「変わった考えを持った人に全力投資すれば、たとえ失敗したとしてもそれが物語として消費されるから、それはそれでお金になるだろうと。極端なことをやっている人に賭けるのが、これからの社会では『あり』なのではないか」

藤野氏もこれに同意し、「日本人は平均値であることを尊ぶ文化、アメリカ人はアウトスタンディング(傑出すること)を尊ぶ文化がある。目立つこと、極端なこと、違うことを喜ぶ社会のほうが世の中の進化は早くなる。僕らのあり方を変えないと、アメリカとの差がますますついてしまうのではないか」と危機感を募らせた。

投資以外の分野では、教育は変革期を迎える可能性が高いと今井氏は分析する。AIに質問すれば24時間いつでも回答がもらえるようになれば、教師の役割や教育のあり方は大きく変わるだろう。

また、以前からホワイトカラーの仕事の大部分はAIにより削減されると指摘されてきたが、どうやらこれは知的労働に限った話ではないようだ。

「10年後の未来は研究者の間でも意見が分かれるので予想が難しいが、走ったり、スキップしたりといった物理的動作も、AIはおそらく出来るようになっているだろう。ホワイトカラーだけでなく、肉体労働の仕事もなくなっているかもしれない」と今井氏は言う。

今井氏はさらに、「そう遠くない未来、パソコンやスマホに常駐して、何でもしてくれるAIパートナーが登場するのではないか」と続けた。

AIがあれば何でも解決する社会がすぐそこまで来ている。そのとき、我々はどう生きるべきなのか。「人間のあり方」がこれほどまでに問われる時代は過去に類を見ない。

構成・酒井理恵

●YouTubeチャンネル「お金のまなびば!」

プロフィール

藤野英人

レオス・キャピタルワークス 代表取締役会長兼社長、CIO(最高投資責任者)
1966年富山県生まれ。国内・外資大手資産運用会社でファンドマネージャーを歴任後、2003年にレオス・キャピタルワークスを創業。日本の成長企業に投資する株式投資信託「ひふみ投信」シリーズを運用。投資啓発活動にも注力しており、東京理科大学MOT上席特任教授、早稲田大学政治経済学部非常勤講師、日本取引所グループ(JPX)アカデミーフェロー、一般社団法人投資信託協会理事を務める。主な著書に『投資家みたいに生きろ』(ダイヤモンド社)、『投資家が「お金」よりも大切にしていること』(星海社新書)、『さらば、GG資本主義――投資家が日本の未来を信じている理由』(光文社新書)、『「日経平均10万円」時代が来る!』(日経BP 日本経済新聞出版)など。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

ロシア大統領府、ウクライナ和平プロセス停滞とのFT

ワールド

イラン攻撃で3週間の作戦計画、イスラエル軍 レバノ

ワールド

自衛隊の中東派遣、「情報収集」目的で政府検討 ホル

ビジネス

原油先物が上昇、ホルムズ海峡の混乱長期化を懸念
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:教養としてのミュージカル入門
特集:教養としてのミュージカル入門
2026年3月17日号(3/10発売)

社会と時代を鮮烈に描き出すミュージカル。意外にポリティカルなエンタメの「魔力」を学ぶ

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する「安価で栄養価の高い魚」の正体
  • 2
    ズボンを穿き忘れてる! 米セレブ、下を穿かず「目のやり場に困る」衣装...「これはオシャレなの?」
  • 3
    「筋肉はモッツァレラと同じ」...なぜウォーミングアップは「2セット」でいいのか?
  • 4
    米軍も防ぎきれないイランのドローン攻撃──イラン製…
  • 5
    幼い子供たちの「おぞましい変化」を克明に記録...「…
  • 6
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」…
  • 7
    機内で「人生最悪」の経験をした女性客...後ろの客の…
  • 8
    「ネタニヤフの指が6本」はなぜ死亡説につながったの…
  • 9
    世界の視線は中東から日本へ...企業主導で築くインド…
  • 10
    ぜんぜん身体を隠せてない! 米セレブ、「細いロープ…
  • 1
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する「安価で栄養価の高い魚」の正体
  • 2
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」を裏付けるような動画を公式に投稿してしまう
  • 3
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...撮影はパパ
  • 4
    「日本より、自分の国(フランス)を心配すれば?」…
  • 5
    米軍も防ぎきれないイランのドローン攻撃──イラン製…
  • 6
    「このままよりはマシだ」――なぜイランで米軍の攻撃…
  • 7
    職業別の収入に大変動......タクシー運転手・自動車…
  • 8
    キャサリン皇太子妃、英連邦デー式典に出席...公開さ…
  • 9
    ズボンを穿き忘れてる! 米セレブ、下を穿かず「目の…
  • 10
    世界の視線は中東から日本へ...企業主導で築くインド…
  • 1
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する「安価で栄養価の高い魚」の正体
  • 2
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」を裏付けるような動画を公式に投稿してしまう
  • 3
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...撮影はパパ
  • 4
    見事なカンフーを見せた中国ヒト型ロボットのからく…
  • 5
    アルコールは血糖値を下げる...「脳と血管を守る」医…
  • 6
    「日本より、自分の国(フランス)を心配すれば?」…
  • 7
    「ヘル・コリア」から日本へ7万人 ── 大企業の高給より…
  • 8
    日本の若者「韓国就職」憧れと現実のギャップ ── ビ…
  • 9
    命は長し、働け女たち――88歳「働くばあさん」が説く…
  • 10
    「水道水」が筋トレの成果を左右する...私たちの体に…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story