コラム

「宇宙で同期と待ち合わせ」が実現! その舞台「ISS」を知る7つのキーワード...日本の貢献、日本人宇宙飛行士の活躍

2025年08月08日(金)22時25分

これまでに、宇宙での健康データなどの医学に寄与する成果や今後のさらなる国際宇宙探査に必要となる技術実証、科学の発展に貢献する観測などが得られてきた。

宇宙飛行士は微小重力環境で筋力や骨密度が急速に衰えることから、将来の宇宙進出のための検証としてだけでなく、地上で加齢変化によって運動器が衰える現象の加速モデルとしても注目されている。また、地上よりも高品質なタンパク質結晶が作れることから医薬品の開発に役立てたり、幹細胞を用いた再生医療の実験を行ったりしている。


再生率を向上させた水・空気再生システムの技術実証や、宇宙での火災に備えた重力の影響評価も、継続して行われている大切なミッションだ。ISSで忙しく作業する飛行士を支援するJAXA開発の自律移動型船内カメラ「イントボール2」について、大西さんは「仕事の相棒というよりもペットのようで、癒し効果もあった」と宇宙から笑顔で語った。

大気のない宇宙からの観測を活かして、世界初の科学的知見も得られている。11年には巨大ブラックホールが星を吸い込む現場の観測に成功した。

24年には宇宙事業を推進する民間企業が連携したコンソーシアム「SORAxIO(ソラクシオ)」が発足し、「きぼう」日本実験棟の民間利用のハードルを下げるためのルール作りが進められており、民間利用の加速が期待されている。

4.ISSへの日本の貢献2 補給機「こうのとり」と新型補給機「HTV-X」

ISSでの生活に必要な物資は、宇宙飛行士とともに打ち上げられたり、すでにISS内にあるものでまかなったりするだけでは不十分だ。そこで、定期的に補給機がISSに水や食料、衣類、実験機材などの物資を届けている。

日本の宇宙ステーション補給機「HTV(愛称:こうのとり)」は、09年の技術実証機(1号機)から20年の9号機までのすべてがH2Bロケットで打ち上げられ、補給ミッションを完遂した。1回につき最大約4トンの補給物資を送り、帰りには使用済み衣類や使わなくなった実験機器などを積んで、大気圏再突入時の断熱圧縮によって焼却した。

プロフィール

茜 灯里

作家・科学ジャーナリスト。青山学院大学客員准教授。博士(理学)・獣医師。東京大学理学部地球惑星物理学科、同農学部獣医学専修卒業、東京大学大学院理学系研究科地球惑星科学専攻博士課程修了。朝日新聞記者、大学教員などを経て第24回日本ミステリー文学大賞新人賞を受賞。小説に『馬疫』(2021 年、光文社)、ノンフィクションに『地球にじいろ図鑑』(2023年、化学同人)、ニューズウィーク日本版ウェブの本連載をまとめた『ビジネス教養としての最新科学トピックス』(2023年、集英社インターナショナル)がある。分担執筆に『ニュートリノ』(2003 年、東京大学出版会)、『科学ジャーナリストの手法』(2007 年、化学同人)、『AIとSF2』(2024年、早川書房)など。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

プーチン大統領、トランプ氏にクリスマスメッセージ=

ワールド

ローマ教皇レオ14世、初のクリスマス説教 ガザの惨

ワールド

中国、米が中印関係改善を妨害と非難

ワールド

中国、TikTok売却でバランスの取れた解決策望む
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 2
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 3
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...どこでも魚を養殖できる岡山理科大学の好適環境水
  • 4
    「時代劇を頼む」と言われた...岡田准一が語る、侍た…
  • 5
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 6
    ノルウェーの海岸で金属探知機が掘り当てた、1200年…
  • 7
    批評家たちが選ぶ「2025年最高の映画」TOP10...満足…
  • 8
    「個人的な欲望」から誕生した大人気店の秘密...平野…
  • 9
    「衣装がしょぼすぎ...」ノーラン監督・最新作の予告…
  • 10
    【銘柄】「Switch 2」好調の任天堂にまさかの暗雲...…
  • 1
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 2
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツよりコンビニで買えるコレ
  • 3
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 4
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低…
  • 5
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 6
    批評家たちが選ぶ「2025年最高の映画」TOP10...満足…
  • 7
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリ…
  • 8
    懲役10年も覚悟?「中国BL」の裏にある「検閲との戦…
  • 9
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開した…
  • 10
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 5
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 6
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 7
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 8
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 9
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」と…
  • 10
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story