コラム

【独自インタビュー】宇宙飛行士の2人に聞いた、訓練秘話とコミュニケーションの極意(米田あゆさん・諏訪理さん)

2024年11月11日(月)17時35分

諏訪 私は、実は以前はそれほどコミュニケーションが得意だとは思わなかったんですよね。特に若い時はそうでした。ただ、前の職のときに「この仕事は人が好きじゃないとできない」というようなことを言われたことがあって、「ああ、そうか」と思いました。

前職は仕事柄、色々な人と話す機会があって、話していくと、意外と面白いんだなと気づきました。それぞれの人にそれぞれのストーリーがあって、思わぬ興味や趣味を持っていたりして「人って本当に面白いんだな」とあるとき思い始めたんですよね。それで人と話すことが何となく好きになって、今に至ります。

今、振り返ってみると、色々な人と話すことが重要だったのかなと思います。自分の場合は、それを自ら進んでやったというよりは、何となく強制的にやらざるを得なかったのですが、結果としてそれがよかったのだなというふうに思っています。

◇ ◇ ◇

米田さんはいつも前向きで、その言葉や頑張っている姿を見せることで私たちにパワーをくれます。宇宙飛行士認定の記者会見では、「友人に『おめでとう』と同時に『私自身も頑張らなきゃな』と言われて嬉しかった。自分の行動が誰かの力になっているんだと改めて感じた」と目を輝かせていました。

一方、諏訪さんは、子どもたちへのメッセージで「自分もそうだったが、何も興味を持てないような時期もあると思う。そういうときは頑張らずに、なんとなく色々とやっているうちに、夢中になれるものが見つかってくると思う」と伝えたことがありました。今回のコミュニケーションの話でも「自分は決して特別ではない。流れに乗っているうちに良い結果が得られることもある」というような、一般の人に寄り添った視点が印象的でした。

2人は11月から、初めてのミッションの決定を待ちながら、NASA(アメリカ航空宇宙局)のジョンソン宇宙センターで新たな訓練「プリアサイメント訓練」を開始します。参加ミッションが決まれば「アサインド訓練」が始まり、2️年ほど続く見込みです。次にメディアの前に現れるときは、米田さん、諏訪さんとも、さらにたくましく、魅力的な宇宙飛行士になっていることでしょう。今から楽しみです。

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正式な認定を受けた2日後、10月23日に記者会見に応じた2人 筆者撮影

プロフィール

茜 灯里

作家・科学ジャーナリスト。青山学院大学客員准教授。博士(理学)・獣医師。東京大学理学部地球惑星物理学科、同農学部獣医学専修卒業、東京大学大学院理学系研究科地球惑星科学専攻博士課程修了。朝日新聞記者、大学教員などを経て第24回日本ミステリー文学大賞新人賞を受賞。小説に『馬疫』(2021 年、光文社)、ノンフィクションに『地球にじいろ図鑑』(2023年、化学同人)、ニューズウィーク日本版ウェブの本連載をまとめた『ビジネス教養としての最新科学トピックス』(2023年、集英社インターナショナル)がある。分担執筆に『ニュートリノ』(2003 年、東京大学出版会)、『科学ジャーナリストの手法』(2007 年、化学同人)、『AIとSF2』(2024年、早川書房)など。

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