コラム

宇宙でしてみたい実験は? 米田あゆさんと諏訪理さんに聞いた「宇宙飛行士」としての自覚と興味、AI観

2024年11月08日(金)20時00分
米田あゆさん、諏訪理さん

正式に宇宙飛行士に認定された米田あゆさんと諏訪理さん(10月23日の記者会見にて) 筆者撮影

<「宇宙飛行士候補者」から「宇宙飛行士」になって一番変わったこと、宇宙空間での実験をデザインできるとしたらどんな考察をしたいか、宇宙開発におけるAIと飛行士の棲み分けとは...認定直後の記者会見、独自インタビューで2人に聞いた>

今秋は、日本の宇宙開発に関する嬉しいニュースが続いています。

4日には次世代の大型基幹ロケット「H3」4号機が打ち上げに成功、搭載していたXバンド防衛通信衛星「きらめき3号」を軌道に投入しました。

この成功で「きらめき」は1~3号の3機体勢になり、太平洋からインド洋に及ぶ自衛隊の主な活動地域で高速大容量の通信が可能となります。これまでは民間衛星を一部利用していましたが、統合幕僚監部の一元運用になることでセキュリティが向上し、陸海空自衛隊を統合した指揮運用が容易になります。

一方、10月21日には、JAXA(宇宙航空研究開発機構)の宇宙飛行士候補者だった米田あゆさん(29)と諏訪理さん(47)が約1年半の基礎訓練を終え、宇宙飛行士として正式に認定されました。

2人は2023年2月、4127人という過去最多の選抜試験受験者の中から宇宙飛行士候補に選ばれました。晴れて認定を受けたことで、歴代のJAXA宇宙飛行士は13人となり、7人が現役として活躍しています。米田さんは最年少、諏訪さんは最年長での認定といいます。

JAXAの宇宙飛行士募集は13年ぶりで、専門性が緩和され、初めて学歴不問になったことも話題となりました。ただ、合格した米田さん、諏訪さんが2人とも東京大学の卒業生だったことから、「結局、学歴も大切だったのではないか」という世論も少なくありませんでした。

けれど、候補生決定時から取材する筆者は、「米田さん、諏訪さんは、分かりやすい学歴がなくても、きっと合格しただろう」と信じています。「コミュ力おばけ」が集まる宇宙飛行士の中でも、ひときわコミュニケーション力に優れていて、発言の節々に「次世代型宇宙飛行士である」と感じられ、ワクワクするからです。

今回、筆者は、宇宙飛行士認定直後の記者会見に参加し、米田さん、諏訪さんへの独自インタビューの機会も得ました。2人の宇宙飛行士としての自覚と責任感、和気藹々とした雰囲気などを伝えます。

プロフィール

茜 灯里

作家・科学ジャーナリスト。青山学院大学客員准教授。博士(理学)・獣医師。東京大学理学部地球惑星物理学科、同農学部獣医学専修卒業、東京大学大学院理学系研究科地球惑星科学専攻博士課程修了。朝日新聞記者、大学教員などを経て第24回日本ミステリー文学大賞新人賞を受賞。小説に『馬疫』(2021 年、光文社)、ノンフィクションに『地球にじいろ図鑑』(2023年、化学同人)、ニューズウィーク日本版ウェブの本連載をまとめた『ビジネス教養としての最新科学トピックス』(2023年、集英社インターナショナル)がある。分担執筆に『ニュートリノ』(2003 年、東京大学出版会)、『科学ジャーナリストの手法』(2007 年、化学同人)、『AIとSF2』(2024年、早川書房)など。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

米国株式市場=S&P・ナスダックほぼ変わらず、トラ

ワールド

トランプ氏、ニューズ・コープやWSJ記者らを提訴 

ビジネス

IMF、世界経済見通し下振れリスク優勢 貿易摩擦が

ビジネス

NY外為市場=ドル対ユーロで軟調、円は参院選が重し
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:AIの6原則
特集:AIの6原則
2025年7月22日号(7/15発売)

加速度的に普及する人工知能に見えた「限界」。仕事・学習で最適化する6つのルールとは?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    その首輪に書かれていた「8文字」に、誰もが言葉を失った
  • 2
    「細身パンツ」はもう古い...メンズファッションは「ゆったり系」がトレンドに
  • 3
    「想像を絶する」現場から救出された164匹のシュナウザーたち
  • 4
    頭はどこへ...? 子グマを襲った「あまりの不運」が…
  • 5
    日本より危険な中国の不動産バブル崩壊...目先の成長…
  • 6
    「二次制裁」措置により「ロシアと取引継続なら大打…
  • 7
    「どの面下げて...?」ディズニーランドで遊ぶバンス…
  • 8
    ロシアの労働人口減少問題は、「お手上げ状態」と人…
  • 9
    「異常な出生率...」先進国なのになぜ? イスラエル…
  • 10
    アフリカ出身のフランス人歌手「アヤ・ナカムラ」が…
  • 1
    その首輪に書かれていた「8文字」に、誰もが言葉を失った
  • 2
    頭はどこへ...? 子グマを襲った「あまりの不運」が話題に
  • 3
    「ベンチプレス信者は損している」...プッシュアップを極めれば、筋トレは「ほぼ完成」する
  • 4
    日本より危険な中国の不動産バブル崩壊...目先の成長…
  • 5
    「お腹が空いていたんだね...」 野良の子ネコの「首…
  • 6
    どの学部の卒業生が「最も稼いでいる」のか? 学位別…
  • 7
    アメリカで「地熱発電革命」が起きている...来年夏に…
  • 8
    千葉県の元市長、「年収3倍」等に惹かれ、国政に打っ…
  • 9
    ネグレクトされ再び施設へ戻された14歳のチワワ、最…
  • 10
    「二度とやるな!」イタリア旅行中の米女性の「パス…
  • 1
    その首輪に書かれていた「8文字」に、誰もが言葉を失った
  • 2
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 3
    頭はどこへ...? 子グマを襲った「あまりの不運」が話題に
  • 4
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測…
  • 5
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事…
  • 6
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 7
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
  • 8
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
  • 9
    「小麦はもう利益を生まない」アメリカで農家が次々…
  • 10
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story