コラム

宇宙でしてみたい実験は? 米田あゆさんと諏訪理さんに聞いた「宇宙飛行士」としての自覚と興味、AI観

2024年11月08日(金)20時00分

23日に行われた記者会見の冒頭挨拶で、2人はそれぞれ次のように語りました。

「今、宇宙開発は激動の時代にあると思う。今後アルテミス計画のもと、月そして火星に向かっていく中で、私自身がどのように活躍していけるのか、しっかり考えながら、そして何よりこれから活躍していくであろう若い世代に向けて、宇宙の魅力や、何かに一生懸命取り組むことの楽しさを伝えられる、そんな宇宙飛行士になっていきたい」(米田さん)

「宇宙開発は過渡期にあり、国際宇宙ステーションの時代から探査の時代に入ってきている。そこに様々な商業的なプレイヤーの参入もある中で、変わっていく環境に適応しつつ、貢献できる宇宙飛行士を目指したい。また、その中でしっかりと科学的な成果などを創出し、それを地球に届けるといったことにも貢献していける宇宙飛行士になりたい」(諏訪さん)

「月面に降り立つ最初の日本人」になる可能性

また、2人は選抜の段階から、月面探査を想定した募集・試験となっていました。米国が主導する国際有人月探査「アルテミス計画」に参加する日本は、4月に米国側と日本人飛行士2人が月面着陸することを正式に合意しました。米田さん、諏訪さんは、月面に降り立つ最初の日本人になる可能性があります。

月面探査への思いについて、2人は次のように回答しています。

「基礎訓練の間は、天文学や惑星科学を学んだり、実際にローバーが開発されている現場で開発者とお話ししたりした。日本人宇宙飛行士のうち、誰になるかはまだ分からないが、我々のチームの中の誰かが月に行くことになるので、月に行くにあたって何が必要なのか、改めて考えさせられると思っている」(米田さん)

「月探査へ向けての技術開発が進む中、それを間近で見ながら基礎訓練ができたというのは本当に幸せなことだったなと思っている。月を目指すことは科学的な意義もあり、そのこと自体がわくわくする。今後10年、20年の大きなプロジェクトになっていくので、その中で自分ができることは何なのかを常に考えて進めていこうと気持ちを新たにした」(諏訪さん)

プロフィール

茜 灯里

作家・科学ジャーナリスト。青山学院大学客員准教授。博士(理学)・獣医師。東京大学理学部地球惑星物理学科、同農学部獣医学専修卒業、東京大学大学院理学系研究科地球惑星科学専攻博士課程修了。朝日新聞記者、大学教員などを経て第24回日本ミステリー文学大賞新人賞を受賞。小説に『馬疫』(2021 年、光文社)、ノンフィクションに『地球にじいろ図鑑』(2023年、化学同人)、ニューズウィーク日本版ウェブの本連載をまとめた『ビジネス教養としての最新科学トピックス』(2023年、集英社インターナショナル)がある。分担執筆に『ニュートリノ』(2003 年、東京大学出版会)、『科学ジャーナリストの手法』(2007 年、化学同人)、『AIとSF2』(2024年、早川書房)など。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

テスラ会長、マスク氏の後継CEO探し否定 報道は「

ワールド

米、中国に関税交渉を打診 国営メディア報道

ビジネス

NZフォンテラの消費者事業売却、明治など入札検討か

ビジネス

三井物産、26年3月期純利益は14%減見込む 資源
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
2025年5月 6日/2025年5月13日号(4/30発売)

「ゼロから分かる」各国・地域情勢の超解説と時事英語

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来が来るはずだったのに...」
  • 2
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に高く、女性では反対に既婚の方が高い
  • 3
    タイタニック生存者が残した「不気味な手紙」...何が書かれていた?
  • 4
    ポンペイ遺跡で見つかった「浴場」には、テルマエ・…
  • 5
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 6
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」では…
  • 7
    インド北部の「虐殺」が全面「核戦争」に発展するか…
  • 8
    クルミで「大腸がんリスク」が大幅に下がる可能性...…
  • 9
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 10
    中居正広事件は「ポジティブ」な空気が生んだ...誰も…
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新研究】
  • 4
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 5
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドロ…
  • 6
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 7
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 8
    私の「舌」を見た医師は、すぐ「癌」を疑った...「口…
  • 9
    ポンペイ遺跡で見つかった「浴場」には、テルマエ・…
  • 10
    健康寿命は延ばせる...認知症「14のリスク要因」とは…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 7
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 8
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 9
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 10
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story