コラム

宇宙でしてみたい実験は? 米田あゆさんと諏訪理さんに聞いた「宇宙飛行士」としての自覚と興味、AI観

2024年11月08日(金)20時00分

記者会見の質疑応答で、筆者は「認定を受け、"候補者"から"飛行士"になって、自分の中で何が一番変わったか」について尋ねました。

諏訪さんは「訓練はこれからも続いていくし、より難易度の高い訓練に挑んでいくことになる。今まで基礎訓練で学んだことをベースに頑張っていかないと、と気分を新たにしたところだ」と回答。

「これまでは一方的にインプットをいただくだけであったのが、今後はちょっとずつアウトプットも求められる、そんなフェーズになってくると思うので、今の立場で何ができるのかを考えながらやっていきたい」

米田さんは「候補者だったときには、まず宇宙飛行士になるための訓練を積むところに主眼が置かれていて、本当にたくさんのことを学んだ。そして今回、宇宙飛行士になってからの数日間は、宇宙飛行士としての責任は何なのかを考えることがあった」と答えました。

「これまで教えていただいたことを糧に、私は何が恩返しできるのか、それを考えながら責任を果たしていきたいと思っている」

◇ ◇ ◇

これらのやりとりを踏まえて、記者会見の数日後に独自インタビューを行いました。取材用の部屋で待っていると、定刻にJAXAのブルースーツ(訓練やオフィシャルな場で宇宙飛行士が着用する青いツナギ)を身にまとった米田さんと諏訪さんが、「よろしくお願いいたします」と元気に登場しました。

──私の「おふたりがすごくユニークだな」って思うところの1つに、「自分たち宇宙飛行士が専門性を活かして、今後の宇宙開発にどんな研究が必要なのか考えていきたい、提案していきたい」という気持ちを強く感じることがあります。今までの先輩宇宙飛行士たちは、「与えられたミッションをしっかりこなしたい」っておっしゃる方が多かったので、「面白いな」と思って、久留さん(靖史・有人宇宙技術部門宇宙飛行士運用技術ユニット長)に「どうして2人は次世代型の考えをしているのか」と聞いてみたんです。そうしたら「2人は先輩の積み上げた高いところからスタートできるから、より遠くまで見渡せる」とおっしゃったんです。

米田・諏訪 (「おおーっ」という感嘆の声)

──はい、私も「おお、これは!」と思ったのですが、ぜひ、このコメントに対する感想と、ご自身で宇宙空間での実験をデザインできるとしたら、どんなことをして、どんな考察をしたいのか伺ってみたいです。

プロフィール

茜 灯里

作家・科学ジャーナリスト。青山学院大学客員准教授。博士(理学)・獣医師。東京大学理学部地球惑星物理学科、同農学部獣医学専修卒業、東京大学大学院理学系研究科地球惑星科学専攻博士課程修了。朝日新聞記者、大学教員などを経て第24回日本ミステリー文学大賞新人賞を受賞。小説に『馬疫』(2021 年、光文社)、ノンフィクションに『地球にじいろ図鑑』(2023年、化学同人)、ニューズウィーク日本版ウェブの本連載をまとめた『ビジネス教養としての最新科学トピックス』(2023年、集英社インターナショナル)がある。分担執筆に『ニュートリノ』(2003 年、東京大学出版会)、『科学ジャーナリストの手法』(2007 年、化学同人)、『AIとSF2』(2024年、早川書房)など。

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