コラム

参院選後に岸田政権を待つガバナンスなき世界

2022年06月29日(水)10時45分

そこまで先走りせずとも、今年秋の世界は波乱含みだ。バイデン米政権は、11月の中間選挙を前にインフレ退治に必死で、中国産品への「トランプ関税」を一部下げるだろう。その大義名分として「中国に新疆地方でのウイグル人弾圧を止めさせた」と言うべく、責任者だった陳全国(チェン・チュエングオ)前同自治区党書記の昨年末の左遷は米政権の圧力によるもの、とするだろう。

米中の対立は、少なくともアメリカの中間選挙と中国の共産党大会が予定される秋までは一時緩和するだろう。さらにバイデン大統領は、サウジアラビアを訪問して冷却した両国関係を水に流し、原油増産の言質を得ようとしている。この2つは、国際社会におけるロシアの孤立を一層深めさせる。対米関係が小康状態になれば、中国はロシアをさして大事にしないだろうし、サウジが原油を増産すれば原油価格は急落してロシア経済にとどめを刺すからである。

来年、日本はG7の議長国となり23~24年は国連安保理の非常任理事国になる。ポスト・モダンへの着地をうまく取りまとめるだけでなく、「トランプのアメリカ」の再来に備えた布石も打っておく必要がある。

今の日本にその力はあるのだろうか。岸田政権にとっては、参院選を生き残ることが先決だが。

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プロフィール

河東哲夫

(かわとう・あきお)外交アナリスト。
外交官としてロシア公使、ウズベキスタン大使などを歴任。メールマガジン『文明の万華鏡』を主宰。著書に『米・中・ロシア 虚像に怯えるな』(草思社)など。最新刊は『日本がウクライナになる日』(CCCメディアハウス)  <筆者の過去記事一覧はこちら

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