コラム

2023年秋、AI業界勢力図③ アプリ戦国時代の幕開け

2023年10月19日(木)14時00分
AIアプリのイメージ

AIアプリのイメージ Jirsak-Shutterstock

<AI新聞編集長の湯川鶴章氏が解説する、「2023年秋、AI業界勢力図」。第3弾はChatGPTやcharacter.aiなどを皮切りに、業界別の人気AIアプリを紹介する>

*エクサウィザーズ AI新聞から転載

この記事シリーズ「2023年秋、AI業界勢力図①」でテクノロジー業界の主戦場は、業界が成熟するにつれレイヤーが上に進むという話をした。AI業界もまだまだ黎明期ではあるものの、現時点ではハードのインフラレイヤーではNvidiaが首位独走中で(関連記事2023年秋、AI業界勢力図①)、ソフトのインフラレイヤーではOpenAIに独走にMetaが待ったをかけた状態(関連記事2023年秋、AI業界勢力図②)ということで、一時的ではあるが勢力図は固定している状態。そうなれば注目は、さらに上のアプリやツールというレイヤーに上がってくる。確かに、ここ1ヶ月ほどはアプリレイヤーに注目が集まっているようで、シリコンバレーの著名ベンチャーキャピタルAndreesen Horowitzが「How are Consumers Using Generative AI(消費者はどのように生成AIを使っているのか)」というレポートを発表。アプリレイヤーの動きを解説している。

【関連記事】2023年秋、AI業界勢力図① Nvidiaの独り勝ち
【関連記事】2023年秋、AI業界勢力図② Metaがオープンソースで大暴れ

そのレポートによると、アプリレイヤーで最も強いのがやはりChatGPTだ。6月の月間アクセス件数が16億件で、月間ユーザー数2億人。有力アプリ、ツールのトップ50の総アクセス件数の60%をChatGPTだけで叩き出す圧倒的勝者だ。ただこれは想定の範囲内。今回のAIブームに火をつけたのがChatGPTなので、当然それぐらいの人気はあるだろうと思う。

意外だったのが2位のcharacter.aiで、月間アクセス件数が3.3億件と、ChatGPTの件数の21%ほどに達している。映画俳優やスポーツ選手、アニメキャラクターなどのチャットボットと会話を楽しめるというサービスで、10代から20代の若者層に圧倒的な人気を誇っている。このため特にモバイルアプリからのアクセスが多いという。ユーザーは一回のセッションで30分、1日に平均2時間もチャットボットと会話するという。YouTubeの平均視聴時間が20分といわれることを考えると、動画視聴を超える新たな娯楽が生まれたと言えるのではないだろうか。

このチャットボットという新たな娯楽の登場に目をつけたのがMetaで、このほど大坂なおみ選手など有名人のキャラクターを採用したチャットボット28体を開発。同社傘下のインスタグラムなどのSNSで利用可能にすると発表した。また一般企業にもチャットボット開発のためのツールを無料で提供し、開発したチャットボットをインスタ上などで運用可能にする計画を発表している。まずは米国ユーザー向けに運用が始まるようだが、来年はチャットボットとの会話という新しい娯楽が世界的に流行するのかどうか。注目したい。

アクセスランキングにもどると、3位はcharacter.aiからさらに大きく水を開けて、Googleの Bardがランクイン。Bardは、最新の情報にアクセスできるほか、テキスト情報だけでなく画像データも取り扱えるだけでなく、Gmailや YouTube、GoogleマップなどGoogleの各種サービスとも連携。無料ながら、ChatGPT有料版の機能に迫るような充実ぶりで人気になっている。

4位以下はどんぐりの背比べといった感じのアクセス件数になっている。ただ非常に便利なアプリもたくさん存在する。

プロフィール

湯川鶴章

AI新聞編集長。米カリフォルニア州立大学サンフランシスコ校経済学部卒業。サンフランシスコの地元紙記者を経て、時事通信社米国法人に入社。シリコンバレーの黎明期から米国のハイテク産業を中心に取材を続ける。通算20年間の米国生活を終え2000年5月に帰国。時事通信編集委員を経て2010年独立。2017年12月から現職。主な著書に『人工知能、ロボット、人の心。』(2015年)、『次世代マーケティングプラットフォーム』(2007年)、『ネットは新聞を殺すのか』(2003年)などがある。趣味はヨガと瞑想。妻が美人なのが自慢。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

中国粗鋼生産、5月は前年比-6.9% 政府が減産推

ワールド

中国の太陽光企業トップ、過剰生産能力解消呼びかけ 

ワールド

米ミネソタ州議員銃撃、容疑者逮捕 標的リストに知事

ビジネス

米FRB、金利は据え置きか 関税問題や中東情勢不透
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:非婚化する世界
特集:非婚化する世界
2025年6月17日号(6/10発売)

非婚化・少子化の波がアメリカもヨーロッパも襲う。世界の経済や社会福祉、医療はどうなる?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「タンパク質」より「食物繊維」がなぜ重要なのか?...「がん」「栄養」との関係性を管理栄養士が語る
  • 2
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高にかっこいい」とネット絶賛 どんなヘアスタイルに?
  • 3
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波でパニック...中国の輸出規制が直撃する「グローバル自動車産業」
  • 4
    サイコパスの顔ほど「魅力的に見える」?...騙されず…
  • 5
    林原めぐみのブログが「排外主義」と言われてしまう…
  • 6
    メーガン妃とキャサリン妃は「2人で泣き崩れていた」…
  • 7
    若者に大不評の「あの絵文字」...30代以上にはお馴染…
  • 8
    さらばグレタよ...ガザ支援船の活動家、ガザに辿り着…
  • 9
    ハルキウに「ドローン」「ミサイル」「爆弾」の一斉…
  • 10
    構想40年「コッポラの暴走」と話題沸騰...映画『メガ…
  • 1
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の瞬間...「信じられない行動」にネット驚愕
  • 2
    大阪万博は特に外国人の評判が最悪...「デジタル化未満」の残念ジャパンの見本市だ
  • 3
    「セレブのショーはもう終わり」...環境活動家グレタらが乗ったガザ支援船をイスラエルが拿捕
  • 4
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高に…
  • 5
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波で…
  • 6
    ファスティングをすると、なぜ空腹を感じなくなるの…
  • 7
    今こそ「古典的な」ディズニープリンセスに戻るべき…
  • 8
    右肩の痛みが告げた「ステージ4」からの生還...「生…
  • 9
    アメリカは革命前夜の臨界状態、余剰になった高学歴…
  • 10
    脳も体も若返る! 医師が教える「老後を元気に生きる…
  • 1
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 2
    【定年後の仕事】65歳以上の平均年収ランキング、ワースト2位は清掃員、ではワースト1位は?
  • 3
    日本はもう「ゼロパンダ」でいいんじゃない? 和歌山、上野...中国返還のその先
  • 4
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊…
  • 5
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 6
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「Mi…
  • 7
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 8
    あなたも当てはまる? 顔に表れるサイコパス・ナルシ…
  • 9
    ドローン百機を一度に発射できる中国の世界初「ドロ…
  • 10
    【クイズ】EVの電池にも使われる「コバルト」...世界…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story