コラム

日本はもはやロボット大国ではない!?論文数で7位に転落

2019年06月14日(金)12時45分

国際学術団体IEEEのロボット工学カンファレンスで顕著になった日本の退潮 https://www.icra2019.org/

エクサウィザーズ AI新聞から転載

<かつて産業ロボットで世界を制した栄光も今は昔。論文数で転落しただけでなく、これからのロボット開発競争でカギとなるAIなどソフトの研究者が圧倒的に少ない>

ロボットは日本のお家芸だと言われる。これから日本の産業界を牽引するのはAIxロボティクスの領域しかない、とも言われる。ところがロボット工学の世界的なカンファレンスに提出された論文数で見る限り、日本の地位が低下し始めていることが分かった。

ロボティクスの分野で世界的に最も権威があるカンファレンスの一つInternational Conference on Robotics and Automation。今年は5月にカナダのモントリオールで開催されたが、このカンファレンスに提出された論文を国別に見ると、論文数で日本は初めて7位に転落した。

<参考記事>AI時代にGAFAへの一極集中はありえない

早稲田大学の尾形哲也教授によると、十数年前には論文数で日本と米国がツートップだった。過去は、確かに日本はロボット大国だったわけだ。

ところが近年、ドイツが順位を伸ばし、日本は3位に転落。2018年にはさらに中国が台頭し、日本は4位に落ちた。そして今年は英国やスイスなどが急浮上し、日本はついに7位にまで下落した。

「日本の研究者がサボってるわけではないんです。世界的に見て研究者の数が増えたんです」と同教授は解説する。このカンファレンス、数年前には参加者数が2000人を切っていた。それが今年は倍以上の4145人が参加。それに合わせて論文数も急増し、相対的に日本人の論文数の割合が低下したのだという。

メカが得意なだけではダメ

それだけ世界的に見て、この領域に研究者の注目が集まり、競争が激化しているということだ。

とはいうものの、日本はロボットのハードウェアの部分で今だに存在感があるという。「メカに関する論文では、日本が世界をリードしています」と同教授は言う。

ところが最近の研究のトレンドは、ロボットに搭載するソフトウエアの部分。特に機械学習、ディープラーニングなどが、注目領域だ。事実、今年の最優秀論文のファイナリストは、3本とも機械学習に関するものだった。「そして今後注目される領域も、やはりディープラーニングになる」(同教授)という。

<参考記事>瞑想4カ月で7割の人が悟りの領域に!?(TransTech Conferenceから)


残念ながら日本は、ロボットxディープラーニングの領域で特に優位に立っているわけではない。日本には、この領域に詳しい研究者がまだ圧倒的に少ないという。この領域に圧倒的な支援を行なっている中国と違って、日本は公的な支援が少ない。「危機感を持つべきかも知れないが、すぐにはどうしようもない」と同教授は語っている。

ただ日本の民間企業が軒並みこの領域に参入し、国際的な展示会などにも出展し始めた。それは望みの一つかもしれない。

20190618issue-cover200.jpg
※6月18日号(6月11日発売)は「名門・ジョージタウン大学:世界のエリートが学ぶ至高のリーダー論」特集。「全米最高の教授」の1人、サム・ポトリッキオが説く「勝ち残る指導者」の条件とは? 必読リーダー本16選、ポトリッキオ教授から日本人への提言も。


プロフィール

湯川鶴章

AI新聞編集長。米カリフォルニア州立大学サンフランシスコ校経済学部卒業。サンフランシスコの地元紙記者を経て、時事通信社米国法人に入社。シリコンバレーの黎明期から米国のハイテク産業を中心に取材を続ける。通算20年間の米国生活を終え2000年5月に帰国。時事通信編集委員を経て2010年独立。2017年12月から現職。主な著書に『人工知能、ロボット、人の心。』(2015年)、『次世代マーケティングプラットフォーム』(2007年)、『ネットは新聞を殺すのか』(2003年)などがある。趣味はヨガと瞑想。妻が美人なのが自慢。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

イラン無力化すれば原油価格は大幅に下落、トランプ氏

ビジネス

ベトナム、4月以降減便も イラン戦争で航空燃料不足

ワールド

トランプ氏訪中巡り米と協議 ルビオ長官の入国容認示

ビジネス

インド、2月の貿易赤字縮小 中東緊迫で供給懸念も
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:教養としてのミュージカル入門
特集:教養としてのミュージカル入門
2026年3月17日号(3/10発売)

社会と時代を鮮烈に描き出すミュージカル。意外にポリティカルなエンタメの「魔力」を学ぶ

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する「安価で栄養価の高い魚」の正体
  • 2
    ズボンを穿き忘れてる! 米セレブ、下を穿かず「目のやり場に困る」衣装...「これはオシャレなの?」
  • 3
    「筋肉はモッツァレラと同じ」...なぜウォーミングアップは「2セット」でいいのか?
  • 4
    米軍も防ぎきれないイランのドローン攻撃──イラン製…
  • 5
    幼い子供たちの「おぞましい変化」を克明に記録...「…
  • 6
    機内で「人生最悪」の経験をした女性客...後ろの客の…
  • 7
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」…
  • 8
    世界の視線は中東から日本へ...企業主導で築くインド…
  • 9
    ぜんぜん身体を隠せてない! 米セレブ、「細いロープ…
  • 10
    50代から急増!? 「老け込む人」に共通する体の異変【…
  • 1
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する「安価で栄養価の高い魚」の正体
  • 2
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」を裏付けるような動画を公式に投稿してしまう
  • 3
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...撮影はパパ
  • 4
    「日本より、自分の国(フランス)を心配すれば?」…
  • 5
    米軍も防ぎきれないイランのドローン攻撃──イラン製…
  • 6
    「このままよりはマシだ」――なぜイランで米軍の攻撃…
  • 7
    職業別の収入に大変動......タクシー運転手・自動車…
  • 8
    キャサリン皇太子妃、英連邦デー式典に出席...公開さ…
  • 9
    ズボンを穿き忘れてる! 米セレブ、下を穿かず「目の…
  • 10
    世界の視線は中東から日本へ...企業主導で築くインド…
  • 1
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する「安価で栄養価の高い魚」の正体
  • 2
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」を裏付けるような動画を公式に投稿してしまう
  • 3
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...撮影はパパ
  • 4
    見事なカンフーを見せた中国ヒト型ロボットのからく…
  • 5
    アルコールは血糖値を下げる...「脳と血管を守る」医…
  • 6
    「日本より、自分の国(フランス)を心配すれば?」…
  • 7
    「ヘル・コリア」から日本へ7万人 ── 大企業の高給より…
  • 8
    日本の若者「韓国就職」憧れと現実のギャップ ── ビ…
  • 9
    命は長し、働け女たち――88歳「働くばあさん」が説く…
  • 10
    「水道水」が筋トレの成果を左右する...私たちの体に…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story