コラム

Microsoftをなめるなよ! モバイルの次の覇権はAIでゲットだぜ !!

2016年08月18日(木)16時36分

インドで基調講演を行うMicrosoft CEOのStay Nadella  Danish Siddiqui - REUTERS

<90年代の栄華は見る影もなく「イケてないテック企業」の代名詞となった感のあるMicrosoft。しかしソーシャル、モバイルというトレンドに乗れなかった同社も、2年前に就任した新CEOの下、AIを搭載したチャットボットの領域で再び世界を牛耳るべく着々と地歩を固めつつある>

 職業柄「今、最も注目しているテック企業ってどこですか」という質問をよく受ける。質問者は、僕の口から聞いたこともないベンチャーの名前が飛び出ることを期待しているのだろうか。僕が「Microsoftに注目してます」と答えると、「え?Microsoftですか」と拍子抜けしたような表情をする人が多い。

 Microsoftって、いつから「イケてないテック企業」の代名詞になったんだろう。90年代にはテック業界のスーパースターだったのに。でも僕自身も、Microsoftの発表文には目もくれなくなったし、最後に取材したのがいつだったのかさえ思い出せない状態だ。

【参考記事】Windows10の自動更新プログラム、アフリカのNGOを危険にさらす
【参考記事】マイクロソフトの失われた10年

 テック業界関係者の間では「過去の企業」のイメージがすっかり定着したMicrosoftだが、実はMicrosoftは大きく変貌している。

 ソーシャル、モバイルという時代の波にはうまく乗れなかった同社だが、次の人工知能(AI)のパラダイムでは覇権を取れそうな位置にまで進み出ているのだ。中でもAIを搭載したチャットボットの領域では、再び世界を牛耳る可能性さえあるのではないかと思う。

 そう思う根拠は3つ。1つは、基礎研究を続けてきたから。2つ目はCEOが変わったから。3つ目は圧倒的なインストールベースが健在だから、だ。

 昔は多くの大手企業が、すぐに金になるのかどうか分からないような領域の基礎研究でも地道に行ってきたものだった。それが最近では多くの企業がすっかり近視眼的になり、すぐに役立つ研究以外には資金を投入しなくなった。

【参考記事】グーグル「夢の無人自動車」が公道デビュー!

 いまだに長期的視野で基礎研究を行っている大手企業といえば、Google、Appleのように潤沢な資金を持っているところか、それ以外だと日本ではNTT、米国ではMicrosoftぐらい。

 Microsoftは、早くからAIの研究に力を入れていた。その研究がようやく実を結ぼうとしているのだと思う。米国のテック系ブログを読んでいても、MicrosoftのAI、特に対話エンジンの技術を高く評価する投稿を目にすることがある。

プロフィール

湯川鶴章

AI新聞編集長。米カリフォルニア州立大学サンフランシスコ校経済学部卒業。サンフランシスコの地元紙記者を経て、時事通信社米国法人に入社。シリコンバレーの黎明期から米国のハイテク産業を中心に取材を続ける。通算20年間の米国生活を終え2000年5月に帰国。時事通信編集委員を経て2010年独立。2017年12月から現職。主な著書に『人工知能、ロボット、人の心。』(2015年)、『次世代マーケティングプラットフォーム』(2007年)、『ネットは新聞を殺すのか』(2003年)などがある。趣味はヨガと瞑想。妻が美人なのが自慢。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

バーゼル委、銀行監督規則を強化 気候変動関連リスク

ワールド

韓国財政、もはや格付けの強みではない 債務増抑制を

ワールド

米最高裁、トランプ氏免責巡り一定範囲の適用に理解 

ワールド

岸田首相、5月1─6日に仏・南米を歴訪
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された米女優、「過激衣装」写真での切り返しに称賛集まる

  • 3

    中国の最新鋭ステルス爆撃機H20は「恐れるに足らず」──米国防総省

  • 4

    今だからこそ観るべき? インバウンドで増えるK-POP…

  • 5

    未婚中高年男性の死亡率は、既婚男性の2.8倍も高い

  • 6

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 7

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗…

  • 8

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 9

    心を穏やかに保つ禅の教え 「世界が尊敬する日本人100…

  • 10

    「鳥山明ワールド」は永遠に...世界を魅了した漫画家…

  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 3

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた「身体改造」の実態...出土した「遺骨」で初の発見

  • 4

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 5

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 6

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 7

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 8

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 9

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 10

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の瞬間映像をウクライナ軍が公開...ドネツク州で激戦続く

  • 4

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 5

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 6

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこ…

  • 7

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 8

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 9

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 10

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story