コラム

時価総額45億ドルのMagic Leapが拓くミックス・リアリティの世界 スマホは不要になるのか?

2016年04月25日(月)15時06分

 Magic Leapは、特撮技術を持つニュージーランドの映画スタジオWeta Workshopと提携しており、同スタジオがMagic LeapのMRメガネ向けに映像コンテンツを製作しているもようだ。またMagic Leapは、著名SF作家のNeal Stephenson氏をチーフ・フューチャーリストとして雇用している。

 ハード、ソフトの両面から新しい世界観を作り出そうとしていることが、Magic Leapの魅力なのかもしれない。

人工現実(AR)で世の中はどう変わるのか

 ところで、バーチャルリアリティ、ミックス・リアリティなど、〇〇リアリティという流行り言葉が多すぎる。どの言葉がどういう技術を指すのか分かりづらい。そこで米国でも定義し直そうという動きになっているようで、最近では主に次のような定義になってきている。

 バーチャル・リアリティ(VR)は、仮想現実。メガネのレンズ部分を黒く塗りつぶしたようなデバイスを装着すると、仮想空間が目の前に広がる。3D映画のようなものだが、右を向けば右の様子、左を向けば左の様子という具合に、顔の動きと映像が連動されていて、360度を見渡すことができるようになっている。

【参考記事】バーチャル・ポルノがリアルな市場に:2025年の推計値は10億ドル

 オーグメンテッド・リアリティ(AR)は「拡張現実」と訳されている。メガネは透明なので、実際に目の前に存在するものが見えるが、そこにテキストなどを表示できる。例えばパーティーで顔見知りの知り合いと再会したときに、その人の名前を思い出せなくてもARメガネは顔認識技術を使って名前をメガネ上に表示してくれるようになる。

 ミックス・リアリティ(MR)もメガネが透明。ただテキストの代わりに映像が映し出される。

 以前は、MRもARの定義の中に含まれていたが、最近はリアルな現実に文字情報や静止画を映し出すのがAR、動画を映し出すのあMR、というような定義に変わってきているようだ。

 こうしたVR、AR、MRなどの総称として、シンセティック・リアリティ、アーティフィシャル・リアリティ(人工現実)などという言葉も登場している。

 さて、それではこうした人工現実は、今後われわれの社会をどう変えるのだろうか。

 Magic Leapの特許書類を見て分かるのは、身の回りからコンピューターやテレビが消える可能性があるということだ。

 30センチほどの長方形の板をMRメガネで見れば、そこに文字盤が投影され、その板がキーボードになる。白い壁を見れば、そこがディスプレイになり、映画が映し出される。確かにメガネ型デバイスの性能がよければ、ディスプレイや入力装置が不要になるのかもしれない。

プロフィール

湯川鶴章

AI新聞編集長。米カリフォルニア州立大学サンフランシスコ校経済学部卒業。サンフランシスコの地元紙記者を経て、時事通信社米国法人に入社。シリコンバレーの黎明期から米国のハイテク産業を中心に取材を続ける。通算20年間の米国生活を終え2000年5月に帰国。時事通信編集委員を経て2010年独立。2017年12月から現職。主な著書に『人工知能、ロボット、人の心。』(2015年)、『次世代マーケティングプラットフォーム』(2007年)、『ネットは新聞を殺すのか』(2003年)などがある。趣味はヨガと瞑想。妻が美人なのが自慢。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

中国、米NSAが中国標準時システムに長期間サイバー

ビジネス

英中銀、金融政策判断をより詳細に説明へ 11月から

ビジネス

米地銀、ストレス増大 準備金は増加=モーニングスタ

ビジネス

欧州、対中貿易交渉でより積極的な行動を=ドイツ連銀
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:日本人と参政党
特集:日本人と参政党
2025年10月21日号(10/15発売)

怒れる日本が生んだ「日本人ファースト」と参政党現象。その源泉にルポと神谷代表インタビューで迫る

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号返上を表明」も消えない生々しすぎる「罪状」
  • 2
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多い県」はどこ?
  • 3
    本当は「不健康な朝食」だった...専門家が警告する「実は避けるべき」一品とは?
  • 4
    ニッポン停滞の証か...トヨタの賭ける「未来」が関心…
  • 5
    今年、記録的な数の「中国の飲食店」が進出した国
  • 6
    ギザギザした「不思議な形の耳」をした男性...「みん…
  • 7
    自重筋トレの王者「マッスルアップ」とは?...瞬発力…
  • 8
    「認知のゆがみ」とは何なのか...あなたはどのタイプ…
  • 9
    「中国は危険」から「中国かっこいい」へ──ベトナム…
  • 10
    【インタビュー】参政党・神谷代表が「必ず起こる」…
  • 1
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号返上を表明」も消えない生々しすぎる「罪状」
  • 2
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以外の「2つの隠れた要因」が代謝を狂わせていた
  • 3
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多い県」はどこ?
  • 4
    まるで『トップガン』...わずか10mの至近戦、東シナ…
  • 5
    フィリピンで相次ぐ大地震...日本ではあまり報道され…
  • 6
    中国人が便利な「調理済み食品」を嫌うトホホな理由…
  • 7
    日本で外国人から生まれた子どもが過去最多に──人口…
  • 8
    「心の知能指数(EQ)」とは何か...「EQが高い人」に…
  • 9
    「欧州最大の企業」がデンマークで生まれたワケ...奇…
  • 10
    イーロン・マスク、新構想「Macrohard」でマイクロソ…
  • 1
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になりやすい人」が持ち歩く5つのアイテム
  • 2
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ監督が明かすプレーオフ戦略、監督の意外な「日本的な一面」とは?
  • 3
    カミラ王妃のキャサリン妃への「いら立ち」が話題に...「少々、お控えくださって?」
  • 4
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
  • 5
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 6
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 7
    バフェット指数が異常値──アメリカ株に「数世代で最…
  • 8
    「日本の高齢化率は世界2位」→ダントツの1位は超意外…
  • 9
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
  • 10
    【クイズ】日本人が唯一「受賞していない」ノーベル…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story