その中国は当初、「族群」という言葉をも忌み嫌っていた。台湾で民主化が定着するのに伴い先住民の権利意識も高まった結果、漢民族以外の人々に対して「族群」が使われていたからだ。このため中国は「族群は台湾独立の表れ」だとして批判していた。だが台湾先住民の「独立」よりもモンゴル人やウイグル人の民族問題が深刻化すると、仕方なく「族群」を導入した。

「民族」と「族群」のどちらも、中国にとっては諸刃の剣だ。当否を検討せずに外国由来の概念を使うだけでは民族問題の解決につながらない。学界では今や「中国のモンゴル族」との表現はなくなってきたので、メディアも是非「モンゴル人」「ウイグル人」という個人の尊厳を重視する呼び名に転換して欲しいものである。

<2020年10月27日号掲載>

【関連記事】
ニューズウィーク日本版 世界宗教入門
2026年5月5日/12日号(4月28日発売)は「世界宗教入門」特集。

イラン戦争の背景にある三大一神教を基礎から読み解く[PLUS]宗教学者・加藤喜之教授の「福音派」超解説

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら
※画像をクリックするとアマゾンに飛びます