コラム

「時短ハラスメント(ジタハラ)」が起きる会社2つの特徴

2018年11月22日(木)13時20分

現場感覚の乏しい経営者が「ジタハラ」を起こす skynesher/iStock.

<これからは「すぐに労働時間を削ることが可能な仕事」など人間がやる仕事ではなくなっていく。わかっていない上司には要注意>

流行語大賞にノミネートされた「時短ハラスメント(ジタハラ)」

先日、「2018ユーキャン新語・流行語大賞」のノミネート30語が発表されました。私が開発した造語「時短ハラスメント(ジタハラ)」が30語の中に入っており、感慨深いというか、複雑な気分を味わっています。

私が2016年12月に日本企業が直面する新たなリスク ~「時短ハラスメント(ジタハラ)」の実態という記事を書いたときは、ここまで「時短ハラスメント(ジタハラ)」という言葉が広まるとは考えてもみませんでした。

なぜなら、なんだかんだ言って日本人は真面目で、経営者や間接部門の長が、現場に「残業削減」を強要するケースは稀なパターンに限ると想像していたからです。

しかし、この言葉を世に出してから2年。瞬く間にこの「時短ハラスメント(ジタハラ)」という言葉は広まり、各種機関でも実態調査が行われるほどになっています。私も多くのメディアから取材を受けました。

結局のところ、現場感覚の乏しい経営者が多いという実態が、イヤというほど明らかになった2年だったとも言えます。

「ROE至上主義」の罠

たとえば「ROE経営」という言葉があります。ROE(自己資本利益率)を重要指標として経営をする考え方です。他人資本(負債)ではなく、自己資本を使ってどれぐらい利益を出したのかという投資効率を測る指標ですから、非常に重要な経営指標であることは言うまでもありません。

しかしROEを意識しすぎると、本来なら利益を増やしてROEを上げようとするところを、自己資本を減らして達成しようとする経営者も出てきます。

利益を出すのは簡単ではありません。しかし会社の資本を減らすことは、意外と簡単にできてしまいます。人件費や設備・開発投資を削るのです。不採算部門を売却してROEを高め、企業価値を高めることもできます。

しかし当然のことながら、このような超短期的な視点でROEを上げようとすれば、企業の体力は失われていきます。「株主」を意識しすぎる経営者が、このような安直な経営をしてしまうものです。

「生産性至上主義」の罠

時短ハラスメント(ジタハラ)も、同様な論理で組織を疲弊させていきます。

世の中、猫も杓子も「働き方改革」「ワークライフバランス」「生産性」「時短」......。ROEという指標と同じように、「生産性」という言葉が独り歩きしています。

プロフィール

横山信弘

アタックス・セールス・アソシエイツ代表取締役社長。現場に入り、目標を絶対達成させるコンサルタント。全国でネット中継するモンスター朝会「絶対達成社長の会」発起人。「横山信弘のメルマガ草創花伝」は3.5万人の企業経営者、管理者が購読する。『絶対達成マインドのつくり方』『営業目標を絶対達成する』『絶対達成バイブル』など「絶対達成」シリーズの著者。著書はすべて、中国、韓国、台湾で翻訳版が発売されている。年間100回以上の講演、セミナーをこなす。ロジカルな技術、メソッドを激しく情熱的に伝えるセミナーパフォーマンスが最大の売り。最新刊は『自分を強くする』。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

パリ航空ショー、一部イスラエル企業に閉鎖命令 イス

ワールド

アングル:欧州で増加する学校の銃乱射事件、「米国特

ビジネス

豪サントス、アブダビ国営石油主導連合が買収提案 1

ワールド

韓国、第2次補正予算案を19日に閣議上程へ 景気支
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:非婚化する世界
特集:非婚化する世界
2025年6月17日号(6/10発売)

非婚化・少子化の波がアメリカもヨーロッパも襲う。世界の経済や社会福祉、医療はどうなる?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「タンパク質」より「食物繊維」がなぜ重要なのか?...「がん」「栄養」との関係性を管理栄養士が語る
  • 2
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高にかっこいい」とネット絶賛 どんなヘアスタイルに?
  • 3
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波でパニック...中国の輸出規制が直撃する「グローバル自動車産業」
  • 4
    サイコパスの顔ほど「魅力的に見える」?...騙されず…
  • 5
    林原めぐみのブログが「排外主義」と言われてしまう…
  • 6
    若者に大不評の「あの絵文字」...30代以上にはお馴染…
  • 7
    メーガン妃とキャサリン妃は「2人で泣き崩れていた」…
  • 8
    さらばグレタよ...ガザ支援船の活動家、ガザに辿り着…
  • 9
    ハルキウに「ドローン」「ミサイル」「爆弾」の一斉…
  • 10
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
  • 1
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の瞬間...「信じられない行動」にネット驚愕
  • 2
    大阪万博は特に外国人の評判が最悪...「デジタル化未満」の残念ジャパンの見本市だ
  • 3
    「セレブのショーはもう終わり」...環境活動家グレタらが乗ったガザ支援船をイスラエルが拿捕
  • 4
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高に…
  • 5
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波で…
  • 6
    ファスティングをすると、なぜ空腹を感じなくなるの…
  • 7
    今こそ「古典的な」ディズニープリンセスに戻るべき…
  • 8
    右肩の痛みが告げた「ステージ4」からの生還...「生…
  • 9
    アメリカは革命前夜の臨界状態、余剰になった高学歴…
  • 10
    脳も体も若返る! 医師が教える「老後を元気に生きる…
  • 1
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 2
    【定年後の仕事】65歳以上の平均年収ランキング、ワースト2位は清掃員、ではワースト1位は?
  • 3
    日本はもう「ゼロパンダ」でいいんじゃない? 和歌山、上野...中国返還のその先
  • 4
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊…
  • 5
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 6
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「Mi…
  • 7
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 8
    あなたも当てはまる? 顔に表れるサイコパス・ナルシ…
  • 9
    ドローン百機を一度に発射できる中国の世界初「ドロ…
  • 10
    【クイズ】EVの電池にも使われる「コバルト」...世界…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story