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イタリア事情斜め読み

ヴィズマーラ恵子|イタリア

アストラゼネカ製ワクチン接種後イタリア人死亡で接種中断、因果関係は?

アストラゼネカ生産工場 iStock- Roland Magnusson

Ema(欧州医薬品庁)は、2021年3月10日の時点で、欧州経済領域でアストラゼネカ抗コビッドワクチンで予防接種を受けた人々のうち、血栓塞栓症を発症したのは約500万件のうち30件報告があり、調査を継続している。

アストラゼネカワクチンの投与は安全であり、抗Covidワクチンの利点はアストラゼネカのリスクを上回るので、継続できると見なされるべきであると言っている。


イタリアのドラギ首相は、木曜日に欧州委員会委員長のウルズラフォンデアライエンに電話をした。
フォンデアライエン委員長は、EU当局が一段の調査を進めているとしながらも、その会話でヨーロッパでの血栓症の症例とアストラゼネカワクチンの投与との間に関連性の証拠はないとの見解を表明した。


| イタリアの「有害事象」とは

AIFA(イタリア医薬品庁)は、予防措置として、アストラゼネカワクチンのバッチの使用の中断につながる「有害事象」を特定して結びつけることは避けたが、この問題に精通している情報源を引用しているロイター機関は、それがシチリア島で記録された2人の死になるだろうと説明している。


これらの事件の1つは、オーガスタで奉仕している海軍下士官ステファノ・パテルノ(43歳)で、
ミステルビアンコ(カターニア)在住。彼の死について、過失致死罪の容疑者として約10人が捜査対象に挙げられている。
そして、もう1つのケースは、防犯会社の警備員ダビド・ビジャ(50歳)のケース。

海軍下士官ステファノ・パテルノと防犯会社のダビド・ビジャの二人はアストラゼネカワクチンを接種していた。

それぞれ1回目の投与でステファノ・パテルノ(43歳)は翌日に、そしてダビド・ビジャ(50歳)は12日後に亡くなっている。
用量は、AIFAから回収されたバッチに属していた。

現在、これらの死亡とワクチンに起因するという因果関係はないと繰り返し報道されている。

教師のアンナ・マリア・マンタイル(62歳)は、数千人のナポリの教師と同様に、先週の土曜日にモストラドルトレマーレで1回目のワクチン接種を行った。

彼女は科学を信じて健康上の問題がなかったため、ワクチンを接種することに対し躊躇していなかったという。
アンナマリアは90歳の母親と一緒に住んでいて、家族が証言するには特に既知の病状はなく、実に健康的だったという。
数時間後、家に帰ると、最初の症状が現れはじめた。それは、吐き気、嘔吐、倦怠感
最初、彼女も彼女の家族も心配していなかったという。
実際、ワクチンの副反応として起こり得るであろう可能性の症状として事前に警告されてあったものであったし、それらの副反応が彼女にも発生したのだろうと思っていた。
しかし、残念ながら、数時間たっても明らかに症状が改善していくことはなく、ホームドクター(一般開業医)から処方された治療を試したが、教師の健康状態は悪化していった。
家族は救急車を呼ぶことにした。

既に手遅れで、彼女は亡くなった。

救急車を呼んだのは、ワクチン接種から4日後の火曜日の朝である。

当然のことながら、この教師が亡くなったというニュースがソーシャルメディアで一気に拡散され話題となって炎上している。
書き込みの多くは、ワクチンの接種に反対する議論と今進行中のワクチンキャンペーンをボイコットしようという呼びかけのもので占められている。チンパンジーアデノウイル由来の組み換え複製欠損アデノウイルスベクターについて、ワクチンの組成がソーシャルメディアで公開されており、スキャンダラスだという扱いである。

どうして亡くなってしまったのか真相解明を求め遺族は訴訟を起こした。
亡くなった教師アンナ・マリア・マンタイルの3人の兄弟の1人である有名な社会学者であるセルジョ・マンタイルは刑事告訴をした。
兄のセルジョ・マンタイルは、「二度と妹に会うことが出来ないということには変わりはないが、彼女についてを話すことが他の誰かを救ったり、正義と明晰な事実によって、少しでもなんらかの形でお役に立てることができるとするならば、私はとても幸せです。」とこたえている。そして、兄弟のもう一人、フェデリーコも「私たちは皆ショックを受けています」と語った。


書類は検察庁に届き死亡の原因追及のため捜査に入っている。
剖検が行われ、その後、家族と彼女のホームドクターである一般開業医からも事情聴取が行われた。


| 検察庁の注意

検察官ジュリアーナ・ジュリアーノが捜査を担当し、解剖病理学者の任命、そして謎が明らかになるであろう剖検検査を行なう。

事件犯罪を扱う管轄部門は、家族から事情を聞き刑事告発を受理した国家軍警察カラビニエーレのラファエッロ・ファルコーネに委任され、ワクチン接種時の職業上の過失致死についての容疑でも捜査が開始された。

検察は、現時点では予防接種と死亡の関連性を当然のことと考えることはできないとし、 接種後の副反応と死亡例を結びつけることは困難であり注意が必要であると慎重な意見に止まった。
チェーザレ・パヴェーゼの研究者は、教師アンナ・マリア・マンタイル(62歳)の病歴は不明であり、彼女は自身でも自覚していなかった何らかの病状またはアレルギーがあって苦しんでいた可能性もあるという懸念は排除することはできないと言っている。アンナマリア・マンタイルの教え子には、チェーザレ・パヴェーゼ研究所の学生たちがいる。遺族は研究者の発言にはがっかりしているという。一刻も早く検察官による調査をさらに繊細にし、迅速に明らかにする必要がある状況である。

| アストラゼネカワクチンに関するデンマークおよび他のEU諸国の決定

イタリアおよび海外での有害事象が短期間で集中しているという事実は、警戒のレベルを上げた。

3月11日(木曜日)同時に、デンマーク、ノルウェー、アイスランドは、オックスフォード大学とアストラゼネカが共同開発したワクチンの使用を一時停止すると発表した。
特にデンマークでは、これらの有害事象の1つの死亡に関連しての決定である。
デンマーク当局が説明したように、デンマークで報告された「重篤な有害事象」に関連しており、この場合も血栓症での死亡であったという。
しかし、現時点ではワクチン投与との因果関係は定かではないとされている。
デンマークは、アストラゼネカワクチンの使用を14日間停止し、この選択はアストラゼネカワクチンが国内で使用されなくなることを意味するものではないとしたものの、事実上これらのバイアルの使用を完全に断念することを決定した。

デンマークでの有害事象に関連して調査するロット は、イタリアで配布されたバッチ番号「ABV2856」のものとは異なり、代わりにイタリア以外のフランスとスペインを含むヨーロッパの17か国で配布されたバッチ「ABV5300」のものである。

オーストリア、エストニア、ラトビア、リトアニア、ルクセンブルグは、そのバッチ「ABV5300」からのバイアルの使用をブロックした。
オーストリアの事例ではアストラゼネカワクチン接種から10日後に多発性血栓症を発症した女性が死亡している。またもう1人も肺塞栓症で入院した。

| イタリアのバッチABV2856の場合

重篤な副作用の疑いのある用量が属するイタリアのバッチは番号ABV2856で識別である。
接種が影響を引き起こした可能性があると断定された訳ではないが、現在は、「予防措置として中断」されている。
世界で数百万回の注射が行われているにもかかわらず、英国だけで10回以上注射されていると報告されているのが、このバッチABV2856である。
これまでのところ、キャンペーン中に発生した40人の死亡例と、アストラゼネカの投与、特にファイザーとモデルナでの死亡は慎重に調査され、それらの接種と死亡原因には関連性はないと結論づけられている。

現在、吐き気、めまい、皮膚の発疹、胃の痛みなどの副作用を報告した多くの教師がいる。

多くの地域と自治州(ヴァッレダオスタ、トスカーナ、アブルッツォ、カンパーニャ、リグーリア、バジリカータ)で、この度撤回された何千もの用量のバッチがここ数週間投与されたが、今のことろ特定の副反応の報告はされていないという状況である。

| ヨーロッパの諸外国で中断されたのは別のバッチABV5300

3月10日に、ワクチンの使用を一時停止すると発表されたバッチABV5300は、複数の血栓症の症例と投与後の死亡が報告されている。
また静脈塞栓症の症例も報告されている。500万回の投与のうち22の症例。それは、予防接種を受けていない人に見られる発生率と同じだ。
「ワクチンがこれらの状態を引き起こしたという兆候はなく、有害事象の中にリストされていません。製造上の欠陥がある可能性は低いです。」とPRAC(ファーマコビジランス・リスク評価委員会)は言っている。


| 血栓症の症例に対する欧州連合の薬事当局「欧州医薬品庁(EMA)」による反応

欧州医薬品庁のEmaは、予防接種を受けた人の血栓のリスクは高くないと報告した。

「これまでに入手可能な情報は、同ワクチンには依然としてリスクを上回るメリットがある。現時点ではワクチンの副反応とする証拠はない」とし、EMAはワクチンの使用は安全であると繰り返し述べている。
これらすべての国で採用されているアプローチは非常に注意が必要であり、孤立した事例に基づいている。問題は、偶然の一致で因果関係の連鎖を区別することが非常に難しいということだと言う。


| イタリアにおけるアストラゼネカワクチンの安全性

3月10日(水曜日)にAIFAイタリア医薬品庁よって発行されたCovid-19ワクチンに関する第2のファーマコビジランスレポートでは、現在イタリアとヨーロッパで使用されているすべての抗Covidワクチンの安全性は高いと繰り返しここでも強調している。

昨年12月末(最初のワクチンの投与)から2月末まで、ワクチンの種類に関係なく、これまで投与された10万回の投与あたり729件の有害事象の報告が寄せられている。
これらは主に非重篤な有害事象で、発熱、頭痛、筋肉/関節痛、注射部位の痛み、悪寒、吐き気であった。また、アストラゼネカの場合、ほとんどの副反応の症状に、発熱、悪寒、無力症/倦怠感、注射部位の痛みが含まれた。

イタリアでは、これらのレポートの90%は、重大な副反応ではないと分類されており、重篤な有害事象に関する79件の報告のほとんどは、高熱、振戦、めまい、過度の発汗、眠気、呼吸困難、全身の痛みに言及している。

2021年2月26日の時点で、アストラゼネカだけでなくすべてのワクチンについて、ワクチン接種後に「死亡」の結果を伴った事例が40件あったと報告されていた。
しかし、それに対し、AIFA(イタリア医薬品庁)の評価は、ワクチンとこれらの死亡例に関連する因果関係は評価不能としている。
亡くなった人たちにはそれぞれ病歴があり、同時に複数の薬を服用していた人々だった。
致命的な症例の平均年齢は86歳。
アナフィラキシーショックや主要なアレルギー反応による死亡例はなかった。しかし、非常に多くの場合の死因は心血管疾患が根底にある患者で、心血管の原因が関連していた。

| アストラゼネカワクチンはどのような技術を使用しているのか?他と何が違うの?

作用機序は色々あって、

①弱毒化ワクチン
②不活化ワクチン:シノバック、シノファーム(中国)
③組み替えタンパク質ワクチン:ノババックス(米国)、サノフィ(仏国)
④ウィルス微粒子ワクチン

⑤DNAワクチン:アンジェス社(日本)
⑥メッセンジャーRNAワクチン:ファイザー社(米国)、モデルナ社(米国)、第一三共(日本)
⑦ウイルスベクターワクチン:アストラゼネカ(英国)、ガマレヤ研究所(ロシア)、ジョンソン・エンド・ジョンソン(J&J、米国)、I Dファーマ(日本)

などがある。

東京大学医科学研究所の石井教授の解説が実に分かりやすく私でも簡単に理解できたのでここで紹介したい。

ファイザーとモデルナは⑥メッセンジャーRNAワクチン。
RNAを脂質ナノ粒子にくるんで体の中にいれる。そうするとこのメッセンジャーRNAは核に行かずに(⑤DNAワクチンは各細胞へ行くのに対し、こちらはショートカットして)細胞質に入ってスパイクタンパクを作って、私たちの体は抗原提示細胞にスパイクタンパク由来のペプチドを認識させ抗原提示、獲得免疫応答誘導(数週間で取得後、数年続く)となる免疫系を活性化するワクチンである

という解説であった。
モデルナやファイザーはそれぞれ、変異株を追加したブースターの研究を進めているという。


オックスフォードの公式は、それ自体を複製することはできないが、無害な改変ウイルスを「運び屋」(ベクター)として使用し、COVID遺伝子をヒト細胞に運ぶ「非増殖性ウイルスベクター」に基づいたワクチンであると説明されている。

石井教授の解説では、

アストラゼネカは⑦ウイルスベクターである。
他のウィルス(借家)に住むような形で、コロナウイルスのスパイクワクチンを入れて感染させる、しかしこの弱いウィルスは感染した後、核に一旦DNAを書き出してそこからmRNAが転写され、mRNAがスパイクタンパクに翻訳され、あとは同様の抗原提示、獲得免疫応答誘導となり、免疫が構築される仕組み

という説明であった。

ワクチンによって誘導された免疫がどの程度持続するのかは、まだ明らかになっていない。

東京大学医科学研究所は、ポストコロナ時代を見据えた新次元ワクチンの研究をしている。ワクチンの開発の道のりが長く厳しいことやワクチン忌避などもよくわかった。
途中、正反対のタイトルがついた本についての紹介は、聞いているこっちもだいぶ困惑してきた。エビデンスのない所で議論されると、予防接種は本当に打たなくていいのだろうか、打った方がいいのだろうか、最後まで答えが出てこないという結論が正解であるという何とも腑に落ちないオススメの本数冊だったが、賛否両論どちらも読んで、自分なりに何が一番正しいのか情報源を使って全て自己責任で行い理解しましょう!という感じのオチであった。

誰から、なぜ、いつ、どこで、何を、どのように正しい情報を手に入れるかは、そういったコロナウイルスワクチンの真に正しい情報に必要な基本も初っ端からご丁寧に解説してくれている。

頭の良い人は難しい専門用語や意味不な横文字などをやたらと活用してダラダラと蘊蓄を並べるが、誰でも理解できるように、理解し易い簡単な言葉を選んで、例えや比喩で置き換えたりしながら、噛み砕いてシンプルに説明できる人が本当に教え方・伝え方の上手な人であると私は思う。

兎に角、日本の国産ワクチンが期待される。

②死んだ病原体の一部をワクチンとして接種する不活化ワクチン:KMバイオロジクス(日本)
③組み替えタンパク質ワクチン:塩野義製薬(日本

⑤DNAワクチン:アンジェス社(日本)
⑥メッセンジャーRNAワクチン:第一三共(日本)
⑦非増殖性ウイルスベクターワクチン:I Dファーマ(日本)

打倒コロナウイルス、打とうワクチン!

をストーガンに新型コロナウイルスワクチンの有効性や副反応などを、豊中市保健所の松岡所長がテーマごとに動画で解説している。とても分かりやすかった。

ファイザー社製ワクチンの有効性【保健所長が答えるコロナワクチンQ&A】

 

Profile

著者プロフィール
ヴィズマーラ恵子

イタリア・ミラノ郊外在住。イタリア抹茶ストアと日本茶舗を経営・代表取締役社長。和⇄伊語逐次通訳・翻訳・コーディネータガイド。福岡県出身。中学校美術科教師を経て2000年に渡伊。フィレンツェ留学後ミラノに移住。イタリアの最新ニュースを斜め読みし、在住邦人の目線で現地から生の声を綴る。
Twitter:@vismoglie

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