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オーストラリアの診察室から

高尾康端|オーストラリア

テレヘルス

(Rawf8-ISTOCK)

以前のブログで述べたように、コロナウィルス感染の影響でオーストラリアではテレヘルスの活用が広がりました。テレヘルスとは電話やビデオ電話を使って医師と患者が診療を行うことです。日本ではオンライン診療、または遠隔医療と呼ばれています。

オーストラリアではテレヘルスを行うこと自体は以前から可能でしたが、保険適用外でした。オーストラリアでは今年の3月13日からオーストラリアの国民保険でのテレヘルス診療が可能になりました。医療施設での医療関係者と患者への新型コロナウィルス感染を防ぐためです。

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(Antonio_Diaz-ISTOCK)

テレヘルスの保険制度が変わる前は、私の働くクリニックでは受付や看護師が電話で患者さんにコロナウィルス感染の症状がないか確認していました。しかし、これによりいくつか問題が発生しました。まず、受付と看護師の仕事の量が格段に増え、そして医療資格のない受付スタッフがトリアージを行うことも問題となりました。3月、4月の頃はまだ感染の危険性や症状を知らない人も多くいましたが、クリニックとしては、クリニック内での感染は絶対に避けなければなりませんでした。もしクリニックのスタッフが感染した場合、クリニックを一時封鎖し、大掛かりな消毒と特別な清掃が必要になります。そして接触した医師、看護師、受付スタッフはすべて隔離となります。そのため、私が勤務しているクリニックでは、テレヘルスの保険適用が始まってすぐ、すべての初期対応は医師がテレヘルスで診療することになりました。テレヘルスで必要な問診を全て行い、医師が直接診察が必要だと判断した場合のみ、直に診察し、時間も短縮するようにしました。

テレヘルスについての有効性、安全性は医師の中でも意見が分かれます。テレヘルスですと、触診ができないため、診断ミスが起こる可能性がでてきます。ビデオ電話は電話よりはいいですが、聴診器で心音を聞くなどできないことも多くあります。そのため、テレヘルス反対派の医師も多くいます。日本では日本医師会がテレヘルスに反対しているというニュースがありました。テレヘルスを悪用されるという意見もあります。オーストラリアでもテレヘルスが始まって数か月後、保険適用されるのは患者がそのクリニックに12か月以内に実際に受診した場合のみと制限されました。いくつかの新興ビジネスがテレヘルスで『すぐに、いつでも薬を医師からもらえます』などと謳ったビジネスをして問題になりました。これらのビジネスは実際のクリニックを持たない、電話サービスだけのものが多くありました。そして基本的にテレヘルスを行う場合、問診で必要があると判断された場合クリニックで実際に診察できなければ、テレヘルス診療はできなくなりました。

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(recep-bg-ISTOCKS)

テレヘルスには自己負担額がかからないこともあり多くの人に受け入れられ、医療機関にも患者さんにもいくつかのメリットがありました。わざわざクリニックに来なくても良いというのは患者さんにとってもプラスでした。仕事を途中で抜けてクリニックまできたりしなくていいので、移動時間の短縮になりました。また小さなお子さんを何人かお持ちの方なども電話のほうが楽という点もありました。しかし、便利なあまり時間にルーズな方も結構いました。ひどい例では、テレヘルスで電話すると『今、会議中なので、あと5分待ってください』『今買い物中なのであとにして』という方もいました。そして診察が必要なのでクリニックにきてくださいといっても『診療費が余分にかかるから嫌』『一時間以上離れたところにいるので無理』という方も時々しました。また逆に『電話で最初話さないといけないのは面倒だ』という方や、予約の時点で『もうすでにクリニックの駐車場にいるのだけど』という方もいました。

オーストラリア政府は、テレヘルスを当初9月末までの予定でしたが、ビクトリア州でコロナ感染者数がまだ多かったことなどもあり、政府はテレヘルスを保険適応で続ける許可をだしました。実際にクリニックにくる方も増えてきましたが、そのメリットからテレヘルスを希望する方もまだ大勢います。

テレヘルスはまだ完璧ではありませんが、やり方さえ間違わなければ、医療機関と患者双方にメリットがあると思います。

参考

https://ama.com.au/media/covid-19-%E2%80%93-ama-and-government-develop-improved-telehealth-arrangements-patients
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO57597170S0A400C2EA2000/
https://www.health.gov.au/ministers/the-hon-greg-hunt-mp/media/australians-embrace-telehealth-to-save-lives-during-covid-19
https://www.health.gov.au/news/health-alerts/novel-coronavirus-2019-ncov-health-alert/coronavirus-covid-19-advice-for-the-health-and-disability-sector/providing-health-care-remotely-during-covid-19

 

Profile

著者プロフィール
高尾康端

日本、スイス、シンガポール、アメリカで育ち、2004年からオーストラリアに移住。シドニー大学医学部を卒業。現在は東ブリスベンエリアHawthorne Clinicにて家庭医 (GP)として勤務。家庭医の観点からみる病気についての情報、また母国である日本と移住地オーストラリアの医療システムの違いや、オーストラリアで病気になった時に役立つ情報を発信している。

Twitter:@dryasutakao
Facebook:Dr Yasu Takao
ブログ:https://www.dryasutakao.com.au/blog

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