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パリのカフェのテラスから〜 フランスって、ホントはこんなところです

RIKAママ|フランス

マクロン大統領夫妻 うっかり映っちゃった映像の波紋

エリゼ宮 シャンゼリゼ側のゲート  筆者撮影

一瞬の・・ほんの1分にも満たない映像があっという間に拡散されて、大騒ぎになることがあります。

5月末にマクロン大統領夫妻が大統領専用機でベトナム・ハノイ空港に到着した際の映像がまさにこれでした。

極めてプライベートな映像ながら、むしろ、プライベートが垣間見える映像だからこそ、話題になりやすかったとも言えますが、ハノイ空港に到着時に大統領を歓迎するために駐機場に設置されたカメラが偶然に捉えてしまった一瞬の映像でした。大統領が外地に到着して、大統領専用機から姿を表して手を振る映像はよく見る映像ではありますが、飛行機の扉が開いて、大統領が機内から出てくる前の一瞬の時間、まだ正面を向いていないマクロン大統領の顔に赤いジャケットの手が映り、彼の顔を払いのける様子が映ってしまったのです。

マクロン大統領は一瞬、驚いた様子で後ずさりしますが、その時は、このような騒ぎになるとは思いも拠らない感じで、すぐに外に向かって挨拶しています。

夫婦間の他愛もない言い合いというか、ケンカなのでしょうが、それが公式の場?に登場しようとしていた大統領であった場合は、まあまあ衝撃的といえば、衝撃的、これが大げさに拡散されて、「マクロン!夫人に平手打ちを食らう!」などという報道になり、大騒ぎになってしまいました。

即、否定してしまったエリゼ宮 大統領官邸 

これがあっという間にSNSで拡散され始め、エリゼ宮(大統領官邸)は、慌ててのことだったのでしょうが、きちんと確認せずに、とりあえずの火消しのつもりだったのか?「この映像は世論を操作する目的をもってAIによって作成された偽物である」と発表しました。

ところが、すぐ後に、この映像が信頼のおけるAP通信社によって撮影されたものであったことが判明し、より騒動を大きくしてしまった感があります。嘘がバレたときには、騒動が一層大きくなってしまう・・よくあることです。

「世論を操作する目的によるAIで作成された映像」などという弁明に、最もこの捏造を疑われそうなロシア政府報道官までもが、「クレムリンの仕業かもよ・・」などとおちょくるような声明を発表したりして、騒ぎは余計に大きくなりました。

ついには、大統領自身がこの騒ぎに対して、直接コメントする場面も設けられ、ここ最近、彼の映っている映像に対して拡散されている件なども交えながら、「例えば、ウクライナに向かう列車の中の映像などを取りあげられて、コカイン1袋をシェアしているとか、トルコ大統領とセックスしたとか、今度は家庭内紛争を起こしているなどと拡散されている。今回もたわいもない夫婦間のよくある日常のひとコマで、大騒ぎする問題ではない」と過去の映像に対する誤ったSNSでの拡散と並べて、これらの映像は事実ではあるものの、その描写は真実ではない!」と主張しています。

最近のSNSでの誤報の拡散もあいまって、エリゼ宮は過敏に反応してしまったものと思われますが、そもそもの映像自体を否定してしまい、AIによる偽造映像というのは、完全にミスであったと思われます。

この騒動はそもそもが大した問題でもなかったにもかかわらず、騒ぎはなかなかおさまらず、ついには、読唇術の専門家までが登場して、この時のやりとりをファーストレディが大統領に向けて「出ていけ!負け犬!」と言い放っているという報道までされています。

マクロン大統領夫妻の出会いから現在まで

大統領夫人、ファーストレディとなれば、誰しも少なからず注目を浴びる存在ではありますが、この夫妻はその成り立ち?を振り返れば、なかなか特別でもあます。そもそも、このカップルは24歳差の年の差婚。しかも女性の方が年上というかなり珍しいケース。この二人のカップルが誕生するまでには、かなりのハードルを越えてきたものと思われます。

二人の出会いは1992年。当時、マクロン大統領は15歳、夫人が39歳のときのこと。マクロン大統領は彼女の娘の同級生でした。当時、彼女は結婚しており、3人の子どもの母親、しかもマクロン大統領が通う高校の教師でした。

彼女が高校内で主催した演劇ワークショップで彼らは出会いました。彼らはこの演劇のワークショップの中で戯曲の書き直しに取り組みんでおり、「その少年の知性にすっかり魅了され、この取り組みを重ねるにつれて、私たちの間には、信じられない親密さが生まれていった」と彼女は当時のことを語っています。

それ以来、彼らは恋愛関係に至ったわけですが、彼らの年齢差(24歳)、とりわけ彼が未成年であったことから、彼らの関係は未成年に対する性的暴行罪を規定する刑法第 227-27条に該当する可能性があり、未成年の生徒と性的関係を持った教師は最高3年の懲役刑に規定されているため、大スキャンダルを引き起こしました。

その後、マクロンは、パリのアンリーⅣという超エリート校に進学したことで、彼らの関係は絶たれると思われたのですが、それ以降も彼らの関係はひっそりと続いており、その後、2006年に彼女は離婚。その翌年の2007年についに彼らは結婚したのです。マクロン30歳、ブリジット54歳のときのことでした。つまり、現在、彼らは結婚して18年ですが、二人の出会いから33年が経過していることになります。

その後、マクロンが政界に進出していくために、彼女は自らの職を辞して、全面的なバックアップをして、彼を支え、彼ら夫妻が彼女自らが腕を振るって手料理で様々な政界の要人たちをもてなしたりしながら、コネクションを拡げていった様子などは、様々なドキュメンタリーなどですでに伝えられています。つまり、このような映像が拡散されるまでもなく、彼は彼女に頭が上がらない関係であることは、周知の事実だったわけです。

これまでの彼らが辿ってきた道のりには、周囲には想像もつかないほどのハードルがいくつもあったのでしょうが、彼らの圧倒的な年齢差、元教師、元生徒という立場から、なんとなく現在に至る彼らの関係性が垣間見える気がしないでもありません。

読唇術の専門家が言うように、「出ていけ!負け犬!」と彼女が彼に言い放った言葉が事実であるならば、なかなかしびれる一言。夫人72歳、マクロン氏47歳の現在も、スパルタな教師と生徒の関係が今も続いているのかもしれません。

マクロン大統領の任期は二期目の終盤を迎えており、支持率は非常に低く、長年にわたり批判に晒されてきました。つまらないスキャンダルも命取りになりかねない危険な状態でもあります。とはいえ、このことが、致命的な結果に繋がるとは考えづらいですが、少なくとも、これまで彼が築いてきたイメージを毀損するものであったかもしれません。

 

Profile

著者プロフィール
RIKAママ

フランスって、どうしようもない・・と、日々感じながら、どこかに魅力も感じつつ生活している日本人女性。日本で約10年、フランスで17年勤務の後、現在フリー。フランス人とのハーフの娘(1人)を持つママ。東京都出身。

ブログ:「海外で暮らしてみれば・・」

Twitter:@OoieR



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