World Voice

England Swings!

ラッシャー貴子|イギリス

英国クラフトジンの火付け役、Sipsmithの蒸溜所ツアー

こうして情熱を注いでつくられたSipsmithのクラフトジン。ここでいよいよ試飲タイムになった。テイスティングは基本、何も加えずストレートで飲む。ウィスキーのテイスティンググラスに似たグラスにジンが注がれ、まずは香りを楽しむことから。この日は鼻を片方ずつ閉じて香りを感じることを教えてもらった。利き手や利き目があるように、鼻にも感じやすい方があって、しかもそれは日によって変わるそうだ。確かに片方ずつ試してみると、右と左ではまったく香りが違っていた!

と書いていたら、横から夫が、「口を開けることも書いた方がいいんじゃない?」と言ってきた。そうだ、口を開けた方が嗅覚が鋭くなるとも教えてもらい、これも本当だったのだ。(下戸のはずの夫はこの日、水を一滴も飲まないまま、出されたジンをすべて飲み干していた。それなのにわたしたちの中でいちばん素面だったどころか、こんな細かいことまで覚えている。なんで?)

newsweekjp_20250517135913.jpeg

Sipsmithに展示されていたジュニパーベリーの実。これは乾燥させたもので、生のものはブルーベリーに似ている。筆者撮影

ジンは平均40%前後とアルコール度数が高いので、口に含むとぴりっと衝撃が走って一瞬たじろぐ。けれどすぐにジュニパーベリーの香りが立ち上るってくるのがたまらず、癖になる。

Sipsmithでは、ネットにあるだけでも17種類のフレーバーを販売しているので、いろいろな味を試すことになった。レモン系、オレンジ系、ベリー系、変わったところではキノコの香りがするものもあり、合計6、7種類は試したと思う。

それぞれの特徴を説明しながら、お兄さんが気前よく注いでくれるので、こちらも調子に乗ってずいぶん飲んでしまった。わたしは味よりも香りに違いを感じたのだけど、それは味がわからないほど酔ったということかもしれない。途中からは少しずつ残したし、合間に水もがぶ飲みしたんだけどな。ツアーが終わる頃には、夫をのぞく3人はすっかりふわふわといい気分だった(試飲のジンはトニックウォーターや水で割ることもできるし、ノンアルコールのジンを希望することもできます)。

newsweekjp_20250518165913.jpeg

バーの脇に置かれていた蒸留器。Sipsmithでは、19世紀からの製造技術を受け継ぐドイツのメーカーに発注した復刻版の純銅製蒸留器を使っている。銅は不純物を取り除くフィルターの役目をする。筆者撮影

このツアーでは製造現場の見学はなく、笑って楽しませてくれるトークとエキサイティングな試飲で合計1時間30分。気さくなスタッフはツアーの後も質問やおしゃべりに付き合ってくれる。ほろ酔い気分で併設の売店に向かうと、つい財布のひもがゆるむ! ツアー料金は1人25ポンド(約4,700円)で、ミニボトル2本のおみやげがつく。

蒸留所を出たのは7時近かったけれど、春の夕暮れはまだ明るかった。ごきげんなままレストランまでふらふら歩き、わたしたちは久しぶりにワインのないディナーを楽しんだ。

 

Profile

著者プロフィール
ラッシャー貴子

ロンドン在住15年目の英語翻訳者、英国旅行ライター。共訳書『ウェブスター辞書あるいは英語をめぐる冒険』、訳書『Why on Earth アイスランド縦断記』、翻訳協力『アメリカの大学生が学んでいる伝え方の教科書』、『英語はもっとイディオムで話そう』など。違う文化や人の暮らしに興味あり。世界中から人が集まるコスモポリタンなロンドンの風景や出会った人たち、英国らしさ、日本人として考えることなどを綴ります。

ブログ:ロンドン 2人暮らし

Twitter:@lonlonsmile

あなたにおすすめ

あなたにおすすめ

あなたにおすすめ

あなたにおすすめ

Ranking

アクセスランキング

Twitter

ツイッター

Facebook

フェイスブック

Topics

お知らせ