World Voice

NYで生きる!ワーキングマザーの視点

ベイリー弘恵|アメリカ

ツインタワーを設計したMINORUの舞台をつくる脚本・作詞家~明石もも

©明石もも

自分の興味のあったミュージカルを学ぶためニューヨークへ渡り、ニューヨーク大学の大学院へ進学した。2022年に卒業してからも毎日ニューヨークのアッパーウエストにあるアパートの一室で、MINORUの脚本を書くことと、作詞を続けている。時折、夫の住む日本へ戻ったりしながら、二国間を行き来する生活だ。

MINORUは、ツインタワーの設計者である山崎實(やまさきみのる)の人生を描いた作品で、アメリカのリージョナルシアター上演に向け、リーディング公演をニューヨークや日本で行ったりと、着実に実現へむけ前進中。

「毎日、MINORUの脚本も書いていますが、それ以外でも演劇の脚本を書いたり、音楽のための作詞をやっています。NYUでクラスメイトだったアメリカ人の作曲家と組んで、アメリカの音楽だけでなく、インターナショナルな音楽の作品づくりをしています。

作品は英語で作っているので、アメリカ人の友人や、お世話になっている英語の先生にも相談したりして、英語のニュアンスのアドバイスをもらったりします。言葉の壁をチームで解決しながら、自分が日本語でイメージして伝えたいものを英語でちゃんと伝えられるように書いています。」

明石と出会ったきっかけは、うおくにというレストランでマグロの解体ショーのイベントに彼女が居合わせたときだった。なぜ脚本家がレストランでイベントのサポートをしているのか気になった。

「日本では法学部を出てオリエンタルランド※1で働いていました。ディズニー社が作ったキャラクターをテーマパークという場所を使ってより多くの人に楽しんでもらう1を100にする仕事も好きでしたが、自分がまだこの世に生まれていないキャラクターやストーリーを作る、0から1を生み出す作品づくりをしていけるといいなぁ~と思っていたこともあり、そのためにどこかのタイミングで海外へ留学してみたいと考えてました。

ニューヨークへ来て、大学院のミュージカルライティングのプログラムを見学したときに、ミュージカルって作れるのだという感動があったので、その時は何も考えずにその世界に入ってみたのですが、入ってみると、もちろん言葉の壁もありますし、正解のない世界で自分が本当に作りたいものは何かを自問自答し、かつそれを観た人に『よかった』と思ってもらう作品に仕上げて行くためにひたすら作品と向き合い続けることは時に孤独を感じる作業です。

MINORUは大学時代から、卒業論文として書き始めたのですが、すでに2年書いています。それ以外にも短編を書いていて、『注文の多い料理店(宮沢賢治 原作)』のミュージカルを英語版で作りました」

ニューヨークに居ながらも、ときおり一人で散歩したり、友人と外出してみたりという以外は外へ出ることもなく、ほぼ一日中書いているのだという。初対面で、私は明石をニューヨークに駐在中の女子アナだと勘違いしたほど美しい女性なので、男性から声をかけられることもあるだろうに。既婚者なのでデートなんてこともできないだろうから、かなりストイックな暮らしぶりなのだ。アッパーウエストの間借りとはいえ家賃は、高いのでは?

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©明石もも 日本でMINORUリーディングのメンバーたちと(最後列左から3番目が明石)

「日本で8年働いていたときの給与や投資をしていたときの貯金で暮らしていて、主人はときどき日本を往復するときの航空券を買ってくれます。今のアパートは、コロナ禍の時に引っ越してきました。当時、少しだけ家賃が下がっていたのですが、良心的なオーナーが今も同じ家賃にしてくれています。

それまではNYUも近いですし、イースト・ビレッジに住んでいましたが、コロナ禍でレストランやショップが閉店していくうちに、環境が悪くなってきたこともあり、安全なところへ引っ越しました。

ニューヨークにある日系のPR会社でインターンをしていた時期があって、PRイベントの台本を書いたり、SNSに投稿する文書をつくったりしていました。うおくにのイベントでは、イベントの進行台本を作るお手伝いをしました。

フルタイムで働いていると、脚本を書きたいという波がきたときに書けないとか、集中したいタイミングが合わないことが多いですし、公演ができると決まったらその準備を優先したくなります。そのため、今は空いてるときだけ、友達の台本を翻訳するテンポラリーの仕事をお手伝いしたりしながら、自分の制作活動を優先しています。」

モノを書くという仕事という点では、私も同業者なのだが、ここまで書くことに集中できるのはスゴイ!

「スポーツ選手と同じかもしれないですね、スポーツ選手が運動をサボれないのと同じで、書くことをサボれないのです。生活するために書いてるというより、書きたいから生きているって感じです。書きたいものがあるから、朝、時間どおりにちゃんと起きて、生活していこうって思うんです。

一日中書いてるときは、締め切りギリギリだというときもありますが。あまり夜に書ける人ではないので、なるべく週に1,2回は人に会うようにしていて、夜は8時から出かけることがあります。外出しても、アイディアが浮かんだら家に帰って書けるかもしれないって思うので、お酒は飲まないです。あと、貯金が尽きる前にある程度結果を出さないとという焦りもあります。」

ニューヨークは家賃や物価が日本にいる人たちの想像をはるかに超えるくらい高いので、貯金がどれだけあっても足りないだろう。

「2020年の5月と9月にアメリカでリーディングをやったのですが、直したいところがでてきて書き直しはじめました。さらに2月に日本で公演してみて、今度はこうしたいと直したいところがでてきて、書き直しを繰り返しやっています。

同時に、短編のミュージカルを書いてみたいので、そちらも初めています。フェスティバルなどは短編のほうが応募しやすいので。

作品のアイディアは、人に出会ったときに浮かびます。MINORUもワールドトレードセンターの建築家が日系アメリカ人だったという話を聞き、彼の人生について調べていて、この方の話を書きたいと思いました。これから書こうと思っているのは、移住してきた友達から経験を聞いたとき、その話を書いてみたいと意欲がわきました。

二つのアイデンティティーを持つ人たちについて、たとえばアジアンヘイトがあれば、アジア系のコンプレックスが生まれたりしますし、『自分が誰であるかというのをどうやって知って、自信をもって生きていけるのか』ということに興味があって、異文化の中で頑張ってる人たちに出会うと、源を知りたいって思います。

その人の頑張りを描くことによって、ほかの人たちにも影響が与えられたり。いろいろな民族同士が出会うことによる、化学反応を書きたいのです。自分は日本から来ていますが、人と違うことをマイナスではなく、楽しいことなのだって、とらえてもらえる作品をつくりたいです。」

ニューヨークは、まさしく他民族の街だ。しかし移民それぞれの人口が多いからか、思っている以上に、それぞれの民族が混ざることなく、ブロックごとに分かれて暮らしていたりする。

「NYは違うのが当たり前だから、生きやすいです。民族それぞれが交わってるのではなくて、ブロックごとに住まいも分かれている。ブロックによって建築物がちがって、住む人も違って、バラバラな感じなのだけど、NYの摩天楼を中心に撮影すると、それがまとまって綺麗に映る。ダイバーシティーの課題と良さの両方を見れる街です。

MINORUを書き進めると、物語が複雑になってきているのですが、やはりミュージカルはシンプル・イズ・ザ・ベストなので、いろいろなことを詰め込むとよくない。歌があって、踊りもついて、おしゃべりもする、ミュージカルはお客さんが観ていて疲れない作品が一番なのです」

先日、全米ツアーで回っているCATSのミュージカルを観てきましたが、確かに、とてもわかりやすくて、シンプルないい作品でした。ホワイトキャット役の日本人女性のダンスが美しかったし、黒人女性の歌うMemoryに心をうたれて、涙がでました。

「私は、パフォーマーとしての経験はないのですが、演じてもらうという立場になったときに、魂をキャラクターに入れてくれる人はいるんだなって思います。本当にその役の通りに生きているように感じるし、その人生をまっとうしてきたんじゃないかって思わせるパフォーマーがいますね。」

MINORUという作品で一番伝えたいことは?

「私は、2020年のコロナ禍でニューヨークに引っ越してきました。毎日のようにアジアンヘイトクライムのニュースが流れ、私の家から徒歩圏内の場所でアジア人女性が殴られ殺害されたという話も聞きました。人間は、先行き見えない恐怖を感じた時、自分と違う者を敵とみなし、攻撃することで安定を手に入れようとしてしまう時があります。だからこそ、1960年代という今以上に日系人への風当たりが強かった時代に、世界一の高さを誇るワールドトレードセンタービルを建てたミノル・ヤマサキの信念を伝えることに脚本作詞家としての使命を感じています。

違う人同士が世界にいるからこそ、世界はもっと面白くなる。NYの摩天楼を見てて美しいのは、高い建物や低い建物、新しい建物も古い建物もデコボコしていて面白くて、綺麗だなぁ~って思うように、多民族どうしが、違うから関わらないようにしようというのではなく、違う人と関わり、お互いを尊重し、新しい世界が広がることは素敵なことだと知ってほしいです。」

※1.株式会社オリエンタルランドORIENTAL LAND CO., LTD. 展開する事業は「テーマパーク事業」「ホテル事業」「その他事業」の大きく3つに分類されます。 主に東京ディズニーランドと東京ディズニーシー、2つのテーマパークの経営・運営に関わる事業セグメント。

【プロフィール】
明石もも(あかしもも)
ニューヨークを中心に活動する日英脚本家、作詞家、プロデューサー。NYU Tisch School of the ArtsのGraduate Musical Theatre Writing Programにて修士号を取得。

ニューヨーク、ワールドトレードセンターの日系アメリカ人建築家をモデルにした長編ミュージカルMINORU: Scrape the Sky(Music by Ben Ginsberg) の脚本作詞を担当し、挿入曲をFeinstein's/54 Below(NYC)にて2022年5月にて発表、リーディング公演をThe Tank(NYC)にて2022年9月に行う。また、2023年2月には日本語翻訳版のリーディング公演を東京にて開催。

その他主な作品:"The Show Must Go On"(Play) The Sixth Festivalの作品に選定、"Serenity and Delight" (Play) Ren Gyo Sohリーディングシリーズに選定、"The Restaurant of Many Orders" (Musical, Music by Yui Kitamura) をOur Saviour New Yorkにて公演。渡米前は、東京ディズニーリゾートのプロデューサー、ステージマネージャーとして数々のライブエンターテイメントショー・イベントの制作に携わる。

【関連リンク】
明石ももオフィシャルサイト

 

Profile

著者プロフィール
ベイリー弘恵

NY移住後にITの仕事につきアメリカ永住権を取得。趣味として始めたホームページ「ハーレム日記」が人気となり出版、ITサポートの仕事を続けながら、ライターとして日本の雑誌や新聞、ウェブほか、メディアにも投稿。NY1page.com LLC代表としてNYで活躍する日本人アーティストをサポートするためのサイトを運営している。

NY在住の日本人エンターテイナーを応援するサイト:NY1page.com

ブログ:NYで生きる!ベイリー弘恵の爆笑コラム

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