コラム

民主党予備選で着実に支持を上げるエリザベス・ウォーレン

2019年09月11日(水)18時00分

現状の世論調査でウォーレンはバイデン、サンダースに続いて3番手につけているが…… Gretchen Erti-REUTERS

<トップを走るバイデンやサンダースにくらべて、ウォーレンへの支持は着実に強固になっている>

前回コラムで書いたとおり、9月7日土曜日、大統領選のバトルグラウンド(決戦州)として知られるニューハンプシャー州マンチェスター市で州の民主党大会が行われ、19人の大統領候補がスピーチした。

スピーチの順番などに関しては不備があったものの、候補者全員に、支持者が路上や会場前でにぎやかにPRをし、会場内のブースで政策を説明する平等な機会は与えられていた。

この大会時点での全米の世論調査の平均支持率は、トップからジョー・バイデン(29%)、エリザベス・ウォーレン(17%)、バーニー・サンダース(15%)、カマラ・ハリス(7%)、ピート・ブーティジェッジ(5%)、アンドリュー・ヤング(3%)、コリー・ブッカー(2%)、ベト・オルーク(2%)、フリアン・カストロ(1%)、トゥルシー・ギャッバード(<1%)と、トップ3人が他を引き離しているかたちだ。

この世論調査からは、バイデンが圧倒的な人気を保ち、指名候補になるのが確実のようにも思える。だが、現時点では全米の世論調査はあまり役に立たない。

どちらかというと、予備選が初期に行われるアイオワ、ニューハンプシャー、ネバダ、サウスカロライナ各州での様相のほうが重要なのだ。予備選の初期の州で勝利すれば、「勝てる候補」としてまたたく間に全米にムーブメントが広まる。このため現時点で注目するべきなのは、これらの州での有権者の反応である。

ニューハンプシャー州民主党大会で、候補がスピーチを始める前に多くの人からランダムに話を聞いてみた。

驚くことに、早期にバイデン支持を表明した消防士の労働組合のメンバー以外には、バイデンを強く支援する人にはひとりも出会わなかった。多くの人は、「いい人だけれどね......」という前置きの後で、「高齢すぎる」とか「情熱が感じられない」などといった迷いを口にする。現時点でバイデンを選択肢のトップに挙げている人も「トランプに勝てる」という理由であり、他にトランプに勝てる可能性がある候補が現れたら乗り換えるつもりのようだ。

また、彼に好意を抱いているのはオバマ大統領のもとで副大統領を務めていたバイデンをよく覚えている世代であり、20代の若者にとってバイデンは「人種差別や女性差別の過去がある古い世代の人」という印象のようだ。

むしろ、多くの人は「好きな候補はたくさんいるが、まだ誰に票を投じるかは決めていない」と答えた。彼らが支持する複数の候補を挙げるときによく含まれているのがピート・ブーティジェッジだった。だが、彼を第一の選択に挙げる人は少なかった。

そのような状況のなかで、「私はこの候補のみを応援する」と強い決意を口にしていたのが、エリザベス・ウォーレンとアンドリュー・ヤングの支持者だった。

また、3年前にあれほど情熱的だったバーニー・サンダース支持の若者たちはすっかり姿を消し、サンダースのTシャツを着て歩いているのは、ほとんどがヒッピー世代の高齢者だった。「2016年にサンダース支持だった」という若者にも数人出会ったが、それぞれが、現時点ではウォーレン、ヤング、カストロといった別の候補の支持に移っていた。

プロフィール

渡辺由佳里

Yukari Watanabe <Twitter Address https://twitter.com/YukariWatanabe
アメリカ・ボストン在住のエッセイスト、翻訳家。兵庫県生まれ。外資系企業勤務などを経て95年にアメリカに移住。2001年に小説『ノーティアーズ』(新潮社)で小説新潮長篇新人賞受賞。近著に『ベストセラーで読み解く現代アメリカ』(亜紀書房)、『トランプがはじめた21世紀の南北戦争』(晶文社)などがある。翻訳には、レベッカ・ソルニット『それを、真の名で呼ぶならば』(岩波書店)、『グレイトフル・デッドにマーケティングを学ぶ』(日経BP社、日経ビジネス人文庫)、マリア・V スナイダー『毒見師イレーナ』(ハーパーコリンズ)がある。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

米ISM製造業景気指数、4月48.7 関税の影響で

ワールド

トランプ氏、ウォルツ大統領補佐官解任へ=関係筋

ビジネス

物言う株主サード・ポイント、USスチール株保有 日

ビジネス

マクドナルド、世界の四半期既存店売上高が予想外の減
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
2025年5月 6日/2025年5月13日号(4/30発売)

「ゼロから分かる」各国・地域情勢の超解説と時事英語

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に高く、女性では反対に既婚の方が高い
  • 2
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来が来るはずだったのに...」
  • 3
    タイタニック生存者が残した「不気味な手紙」...何が書かれていた?
  • 4
    ウクライナ戦争は終わらない──ロシアを動かす「100年…
  • 5
    インド北部の「虐殺」が全面「核戦争」に発展するか…
  • 6
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新…
  • 7
    悲しみは時間薬だし、幸せは自分次第だから切り替え…
  • 8
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」では…
  • 9
    クルミで「大腸がんリスク」が大幅に下がる可能性...…
  • 10
    朝1杯の「バターコーヒー」が老化を遅らせる...細胞…
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新研究】
  • 4
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 5
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドロ…
  • 6
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に…
  • 7
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 8
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来…
  • 9
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 10
    私の「舌」を見た医師は、すぐ「癌」を疑った...「口…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 7
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 8
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 9
    クレオパトラの墓をついに発見? 発掘調査を率いた…
  • 10
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story