「介護タクシーが予約しにくい」は過去の話...IT FORCEの「よぶぞー」が創る、地域と介護の未来
要介護者の輸送には特殊な車両が必要になることもある
<移動手段の確保が困難な「交通空白地」と介護の問題を解決するのは、DX?>
日本企業のたとえ小さな取り組みであっても、メディアが広く伝えていけば、共感を生み、新たなアイデアにつながり、社会課題の解決に近づいていく──。そのような発信の場をつくることをミッションに、ニューズウィーク日本版が立ち上げた「SDGsアワード」は今年、3年目を迎えました。
私たちは今年も、日本企業によるSDGsの取り組みを積極的に情報発信していきます。
高齢化が進む日本社会では、2025年に国民の5人に1人が後期高齢者だ。加えて、路線バスの運転手不足を起因とした交通空白地の拡大も課題となっている。移動手段を確保しづらい高齢者や障害者にとって、介護タクシーは重要なインフラであるにもかかわらず、予約の困難さなど多くの課題が存在する。
この社会課題に対し、DXの力で解決を試みようとしている企業が存在する。IT FORCE株式会社だ。
■「孫の結婚式に出席できた」との喜びの声
IT FORCEは、デジタル技術を活用して社会と人々の生活を変革することをミッションに、システム開発を軸とした4つの領域で事業展開している。そのうち「社会福祉DX領域」において、同社が開発、提供する介護タクシー予約アプリ「よぶぞー」は、高齢化社会の課題に真正面から向き合った製品だ。
2022年4月に実証実験を開始し、2023年3月には東京都、神奈川県、埼玉県、千葉県でサービスを正式リリース。2024年には大阪府、兵庫県へと対応エリアを拡大し、累計登録者数は2025年7月に1万人を突破した。アプリは誰でも簡単に数回のタップで予約が可能で、利用者の条件に合致する介護タクシー事業者に一斉依頼できる機能を備える。

開発責任者である坂本亮・よぶぞー事業部長は、健康寿命の延伸や社会保障費削減、自治体業務の効率化といった社会的課題への対応を目的に「よぶぞー」の構想を練ったという。開発初期には自動マッチングが未完成で、社員が手作業で予約対応を行うなど困難な時期もあったが、その際に利用者から「ありがとう」の声を直接受けたことが、事業継続の大きな原動力になった。
利用者からは「孫の結婚式に出席できた」「階段だらけの家でもスムーズに手配できた」「リフトタクシーを持っているタクシー会社を探すのは大変だが、このアプリを使えば年末の忙しい中でも簡単に予約取れて感激した」といった声が寄せられ、その実用性と利便性が評価されている。
■対象エリアを拡大し、交通空白地帯の介護に貢献
アプリは進化を続けており、指名予約や料金目安表示などの機能は、事業者とのカンファレンスを通じてフィードバックを受け、実装された。
また、「よぶぞーチケット」により福祉タクシー券の電子化を実現し、自治体の事務負担を軽減。業務のオンライン化によって、印刷・郵送業務の削減や即日給付も可能となっている。
さらに、「よぶぞー」に参画する事業者は、ドライバー評価機能や指名制度によりサービス品質向上への意識が高まり、優良ドライバーが多数登録されている。健全な競争が生まれ、結果として利用者満足度の向上にも寄与している。
今後は、決済機能の追加が2026年春に予定されているほか、電話予約に対応したAI機能の導入も検討されている。高齢者のデジタル抵抗を踏まえた多様な利用手段の提供や、対象エリアのさらなる拡大も進める予定だ。
また、地域交通の課題に取り組むべく、交通空白地におけるニーズに応える形で、対応エリアを随時追加している。

「もっと早く知っていれば」という声が寄せられる中で、今後は認知度向上と共に、移動に困るすべての人々に寄り添うサービスとして進化し続けるだろう。
坂本氏は、「対象エリアについても拡大していく予定です。そのためには拡大したエリアでの事業者開拓が必要不可欠なので、地道に進めていく所存です」と拡大への意欲を語る。このサービスが普及すれば、誰もが住み慣れた地域で安心して暮らせる社会が実現するだろう。
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