コラム

2020米大統領選、民主党有力候補カマラ・ハリスの優等生すぎる人物像

2019年02月28日(木)15時00分

カマラ・ハリスは移民、黒人、女性の3重のマイノリティー Elijah Nouvelage-REUTERS

<民主党予備選の有力候補、黒人女性ハリスが出したあまりに完璧な自己紹介本>

アメリカの大統領選は長い戦いだ。

詳しい流れは拙著『トランプがはじめた21世紀の南北戦争』に書いたが、多くの候補は前回の大統領選が終わったときにはすでに出馬するかどうかを考え始めている。そして、各党の予備選が始まる数カ月も前から委員会を作り、予備選の方向を決める最初の2つの重要な選挙区であるアイオワ州とニューハンプシャー州で有権者の反応を調査し、全米レベルでの世論調査なども行う。

そのうえで候補が「勝ち目がある」とみなして決意したら大統領選の本選の2~1年半前くらいに出馬を公表する。早すぎると飽きられてモメンタム(勢い)を失う可能性があるし、遅すぎると候補について知ってもらう前に選挙になってしまう。このあたりが非常に難しいところだ。

通常なら現職の大統領がまだ1期目の場合にはその党は対立候補を出さない。だから2020年の共和党の候補はトランプということになる。だが、ロシア疑惑の調査が進んでいる状況なので、その成り行き次第で名乗りを上げる準備をしている候補はいるだろう。

そこで、メディアの関心はトランプに対抗する民主党の候補に集中している。

2月27日現在で出馬を公表しているのは、カマラ・ハリス(カリフォルニア州、上院議員)、カーステン・ギリブランド(ニューヨーク州、上院議員)、エリザベス・ウォーレン(マサチューセッツ州、上院議員)、タルシ・ガバード(ハワイ州、下院議員)、エイミー・クロブチャー(ミネソタ州、上院議員)、コリー・ブッカー(ニュージャージー州、上院議員)、ジョン・デラニー(メリーランド州、下院議員)、フリアン・カストロ(オバマ政権でのアメリカ合衆国住宅都市開発長官、元サンアントニオ市長)、バーニー・サンダース(バーモント州、上院議員)、「ユニバーサル・ベーシックインカム」という画期的なコンセプトを提案している起業家のアンドリュー・ヤングだ。 半数が女性だというのもこれまでとは異なる。

そして、近い将来に発表すると見られているのが、ベト・オルーク(テキサス州、元下院議員)、シェロッド・ブラウン(オハイオ州、上院議員)、ジェフ・マークリー(オレゴン州、上院議員)。また、ジョー・バイデン元副大統領も出馬を考慮していると言われている。

非常に数が多いようだが、2016年の共和党の予備選のようにほとんどが初期に脱落する。最初の2つの予備選であるアイオワとニューハンプシャーでかなりの票を集められた候補だけが本命になる可能性を持っている。

現時点で、民主党内で本命視されているのは、知名度が高いバーニー・サンダースとエリザベス・ウォーレン、スター性があるベト・オルーク、ベテランのシェロッド・ブラウン、元副大統領で「ジョーおじさん」と親しまれているジョー・バイデン、そして本書『The Truths We Hold』の著者であるカマラ・ハリスといったところだ。

カマラ・ハリスはある意味非常に2020年的な大統領候補といえる。

プロフィール

渡辺由佳里

Yukari Watanabe <Twitter Address https://twitter.com/YukariWatanabe
アメリカ・ボストン在住のエッセイスト、翻訳家。兵庫県生まれ。外資系企業勤務などを経て95年にアメリカに移住。2001年に小説『ノーティアーズ』(新潮社)で小説新潮長篇新人賞受賞。近著に『ベストセラーで読み解く現代アメリカ』(亜紀書房)、『トランプがはじめた21世紀の南北戦争』(晶文社)などがある。翻訳には、レベッカ・ソルニット『それを、真の名で呼ぶならば』(岩波書店)、『グレイトフル・デッドにマーケティングを学ぶ』(日経BP社、日経ビジネス人文庫)、マリア・V スナイダー『毒見師イレーナ』(ハーパーコリンズ)がある。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

第1四半期の中国スマホ販売、アップル19%減、ファ

ビジネス

英財政赤字、昨年度は公式予測上回る スナク政権に痛

ビジネス

ユーロ圏総合PMI、4月速報値は51.4に急上昇 

ワールド

独、スパイ容疑で極右政党欧州議員スタッフ逮捕 中国
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 2

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の「爆弾発言」が怖すぎる

  • 3

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバイを襲った大洪水の爪痕

  • 4

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 5

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 8

    冥王星の地表にある「巨大なハート」...科学者を悩ま…

  • 9

    「なんという爆発...」ウクライナの大規模ドローン攻…

  • 10

    ネット時代の子供の間で広がっている「ポップコーン…

  • 1

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 2

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 3

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた「身体改造」の実態...出土した「遺骨」で初の発見

  • 4

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 5

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 6

    攻撃と迎撃の区別もつかない?──イランの数百の無人…

  • 7

    「毛むくじゃら乳首ブラ」「縫った女性器パンツ」の…

  • 8

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 9

    ダイヤモンドバックスの試合中、自席の前を横切る子…

  • 10

    価値は疑わしくコストは膨大...偉大なるリニア計画っ…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこと」目からうろこの健康法

  • 4

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の…

  • 5

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

  • 10

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story