コラム

アメリカで黒人の子供たちがたたき込まれる警官への接し方

2017年11月15日(水)11時15分

近年のアメリカでは黒人が警官に殺害される事件が相次いでいる Jonathan Bachman-REUTERS

<アメリカでは武器を持っていないくても黒人が警官に殺される事件が後を絶たない。だから大人たちは黒人の子供たちに「警官との接し方」を教えこまなければならない>

ハリウッドの白人優先主義「ホワイトウォッシング」について先日コラムを書いたが、人種差別に遭遇する機会がほとんどない日本人にこの問題を理解してもらうことの難しさを再認識した。

人種のるつぼであるアメリカでさえ、「ホワイトウォッシング」を擁護する者もいる。たいていは差別される側に立ったことがない白人だ。だが、「ホワイトウォッシング」より深刻で、さらに誤解を受けやすいのが 「Black Lives Matter(黒人の命も重要だ)」のムーブメントであり、プロテストである。

白人の間からは、「命が重要なのは、黒人だけじゃないだろう。白人の命だって重要だ」と「White Lives Matter」などと言い出す者さえいる。

白人の命は、コロンブスがアメリカ大陸を「発見」したときから、先住民よりも優先されてきたし「重要」だった。アメリカの黒人たちは、「同等の権利が欲しい」と求めているだけなのだ。それなのに「逆差別だ!」と怒る白人を、日本人は批判できるだろうか?

「ホワイトウォッシング」を問題視する人への日本人の反論を読むと、「自分が信じてきたことを否定される」ことに不快感を覚えているようだ。その不快感で本質を見ようとしない人が存在するのは日米共通だと思う。

そんな人たちに読んでもらいたいのが小説『The Hate U Give』だ。ティーン向けのYA(ヤングアダルト)小説だが、その枠を超えて、多くの年齢層で高い評価を得ている。

主人公は、16歳の黒人の少女スターだ。低所得層が多い黒人街に住んでいるが、裕福な白人が多い私立高校に通っている。バスケットボール選手のスターには、クラブで仲が良い女友だちもいるし、白人のボーイフレンドもいる。けれども、子ども時代の友だちや近所の人と接しているときの自分と学校での自分は、態度も言葉遣いも異なる。高校では、本当の自分を押さえ込んで別の自分を演じなければならないという心理的なプレッシャーが常にあった。

スターには、母親が異なる兄がいる。若かりし頃の両親が喧嘩をしたときに、父親がヤケで浮気をした結果だった。その兄には父が異なる妹がいて、その父親は、この黒人街を支配するストリート・ギャングのリーダー「キング」である。この因縁が、二つの家族に常に緊張を与えている。

スターの母親はベテラン看護師で、父親は街で唯一のコンビニを経営している。ボーイフレンドのクリスが住む街に住むこともできる収入があるのに、コミュニティのために尽くすことを誓う父は引っ越しを拒否し続けている。

気が進まないまま連れて行かれた地元のパーティで、射撃事件が起こり、スターは幼なじみの少年カリルの車で家まで送ってもらうことにする。カリルとは幼い頃には仲が良かったが、別の高校に通うようになってからは疎遠になっていた。車の中で、カリルは自分が愛する伝説的ラッパーの「2パック」についてスターに語る。

プロフィール

渡辺由佳里

Yukari Watanabe <Twitter Address https://twitter.com/YukariWatanabe
アメリカ・ボストン在住のエッセイスト、翻訳家。兵庫県生まれ。外資系企業勤務などを経て95年にアメリカに移住。2001年に小説『ノーティアーズ』(新潮社)で小説新潮長篇新人賞受賞。近著に『ベストセラーで読み解く現代アメリカ』(亜紀書房)、『トランプがはじめた21世紀の南北戦争』(晶文社)などがある。翻訳には、レベッカ・ソルニット『それを、真の名で呼ぶならば』(岩波書店)、『グレイトフル・デッドにマーケティングを学ぶ』(日経BP社、日経ビジネス人文庫)、マリア・V スナイダー『毒見師イレーナ』(ハーパーコリンズ)がある。

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