就活の常識をぶっ壊せ!ギャップ・イヤーで広がる日本人の選択の自由
やりたい仕事を含め、将来への道を決めるのに役立つ制度として定着している。在学中や卒業して就職するまでの間に行う場合もあるが、多くは大学合格後に授業のスタートを1年間延ばしてもらう。とりわけ野心的な学生は独自に計画を立てる。
例えば、あるアメリカ人学生は貨物列車に無賃乗車して各地を渡り歩くホームレスを研究するため、彼らと長期間生活を共にして密着取材を行った。この取材を基に執筆した論文が注目を浴び、その学生は卒業後ジャーナリストとしてデビューを果たした。
歴史はまだ浅いが、日本でも似たような試みはある。例えば、中国で約6カ月間の留学とインターンを経験できる「アジア夢カレッジ」(亜細亜大学)、首都圏の企業などで長期の就業体験ができる「長期社会協働インターンシップ」(高知大学)などが実施されている。
東京大学は以前、「秋入学」への全面移行を前向きに検討していた。当時の総長濱田純一氏が、9月入学のため、高校を卒業してからの約半年間を海外留学などに当てられるというメリットをアピール(ギャップ・タームという和製英語も誕生)したものの、障壁が多く、結局断念した。
こういう残念な経過も関係しているせいか、日本においてはギャップ・タームの認知度がまだ低い。なので、これらのプログラムを利用すると、就職時期が遅れて不利になるのではないかと懸念する学生も少なくないらしい。でも、歩むべき道を確認するために、学生が学校以外の社会を体験することは大切だ。
経団連も最近前向きな姿勢を見せているし、評価してくれる企業も増えつつあるので、学生自身も勇気を出してギャップ・タームに挑戦してみてはいかがだろうか。社会で経験を積むための休学こそ「人生の選択の自由」を取り戻すための鍵の1つになるに違いない。
トニー・ラズロ
TONY LÁSZLÓ
1960年、米ニュージャージー州生まれ。1985年から日本を拠点に活動。ベストセラーとなったコミックエッセー『ダーリンは外国人』(小栗左多里&トニー・ラズロ)シリーズの主人公。

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