コラム

悪質な客も神様か?──クレーマーをのさばらせる「お客様は神様」と礼儀

2022年07月01日(金)14時18分
トニー・ラズロ

アプリ上でカスハラがいつ発生するかと言えば、それは取引が終わった後。つまり、買い手が他のユーザーの参考になるよう売り手に評価を付ける場面。

僕は今までに100点以上の物を販売し、ほとんどは「良い」評価を付けてもらっているけれど、2件だけ「悪い」評価が付いてしまった。適切な評価であれば仕方がないが、どちらも、こちらが値切り交渉に応じなかったことに対する報復、「嫌がらせ評価」なのだ。

不当に低い評価が付いた経緯をアプリのサポートに説明し、消すように要求しても、結構な確率で対応してもらえない。公平性を期すために消さないポリシーということらしいが、これも客(=買い手)の言動をなんでも受け入れようとする「お客様は神様」文化の影響に思える。

一方、アメリカのフリマアプリ「eベイ」では、悪質なクレーマーが一定数存在することを前提に、売り手を守るポリシーを定めている。

カスハラ対策が求められている今、日本人の美徳とされる「礼儀」について、あるべき姿を考え直す良い機会じゃないかな。1899年に出版された新渡戸稲造の『武士道』にはこう書かれている。「礼(儀)は他を思いやる心が外へ表れたものでなければならない」(岬龍一郎訳)

「他を思いやる心が外へ表れたもの」というのだから、新渡戸がいま生きていたらきっと、嫌な態度の客を神様として扱うことを称賛したりはしないだろう。そして、客と働く人の双方が互いを思いやることが大前提となるはずだ。一人一人の日本人にも、日本の企業にも、新渡戸が説いた「礼儀」が今こそ必要だ。


NW_Tony_Laszlo.jpgトニー・ラズロ
TONY LÁSZLÓ
1960年、米ニュージャージー州生まれ。1985年から日本を拠点にジャーナリスト、講師として活動。コミックエッセー『ダーリンは外国人』(小栗左多里&トニー・ラズロ)の主人公。

20230404issue_cover150.jpg
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2023年4月4日号(3月28日発売)は「小泉悠×河東哲夫 ウクライナ戦争 超分析」特集。日本有数のロシア通である2人の特別対談・前編。戦争の「天王山」/ウクライナ戦車旅団/プーチンの本音と正体……を超マニアックに語り尽くす

プロフィール

外国人リレーコラム

・石野シャハラン(異文化コミュニケーションアドバイザー)
・西村カリン(ジャーナリスト)
・周 来友(ジャーナリスト・タレント)
・李 娜兀(国際交流コーディネーター・通訳)
・トニー・ラズロ(ジャーナリスト)

今、あなたにオススメ

ニュース速報

ビジネス

4─6月国債買い入れ、1年超以上のオファー額のレン

ワールド

政府のこども政策、少子化反転へ3年間で集中取り組み

ビジネス

仏EU基準CPI、3月は6カ月ぶり低水準 エネルギ

ビジネス

ドイツ失業率、3月5.6%に上昇 景気低迷が圧迫

今、あなたにオススメ

MAGAZINE

特集:小泉悠×河東哲夫 ウクライナ戦争 超分析

2023年4月 4日号(3/28発売)

戦争の「天王山」/ウクライナ戦車旅団/プーチンの正体......。日本有数のロシア通である2人の特別対談・前編

メールマガジンのご登録はこちらから。

人気ランキング

  • 1

    生地越しにバストトップが... エムラタ、ばっさりショートに「透け過ぎ」衣装でベッドにごろり

  • 2

    北朝鮮軍の「エロい」訓練動画に世界が困惑!

  • 3

    女性兵士50人が犠牲に...北朝鮮軍が動揺した「鬼畜事件」

  • 4

    ロシアとの戦いで「ウクライナ軍は世界一の軍隊にな…

  • 5

    北朝鮮の「プリンセス」キム・ジュエ、栄養失調の国民よ…

  • 6

    「体が大きく曲がったクジラを目撃した!」──スペイン

  • 7

    モスクワ上空に不気味な「黒い輪」出現 正体めぐり…

  • 8

    ハリウッドの「モテ女」エミリー・ラタコウスキーが…

  • 9

    戦争の焦点は「ウクライナ軍のクリミア奪還作戦」へ…

  • 10

    【レア動画4選】ウクライナとロシア戦車の一騎討ち<…

  • 1

    生地越しにバストトップが... エムラタ、ばっさりショートに「透け過ぎ」衣装でベッドにごろり

  • 2

    「見られる価値のない体なんてない」 車椅子に乗った障がい者女性が下着モデルに...批判にも大反論

  • 3

    大丈夫? 見えてない? テイラー・スウィフトのライブ衣装、きわどすぎて観客を心配させる

  • 4

    金融のドミノ倒し、次はドイツ銀行か

  • 5

    北朝鮮軍の「エロい」訓練動画に世界が困惑!

  • 6

    女性兵士50人が犠牲に...北朝鮮軍が動揺した「鬼畜事…

  • 7

    大事な部分を「羽根」で隠しただけ...米若手女優、ほ…

  • 8

    北朝鮮の「プリンセス」キム・ジュエ、栄養失調の国民よ…

  • 9

    「次は馬で出撃か?」 戦車不足のロシア、1940年代の…

  • 10

    「ベッドでやれ!」 賑わうビーチで我慢できなくなっ…

  • 1

    大事な部分を「羽根」で隠しただけ...米若手女優、ほぼ丸見えドレスに「悪趣味」の声

  • 2

    推定「Zカップ」の人工乳房を着けて授業をした高校教師、大揉めの末に休職

  • 3

    【写真6枚】屋根裏に「謎の住居」を発見...その中には...

  • 4

    ざわつくスタバの駐車場、車の周りに人だかり 出て…

  • 5

    生地越しにバストトップが... エムラタ、ばっさりシ…

  • 6

    年金は何歳から受給するのが正解? 早死にしたら損だ…

  • 7

    【悲惨動画3選】素人ロシア兵の死にざま──とうとう…

  • 8

    プーチンの居場所は、愛人と暮らす森の中の「金ピカ…

  • 9

    ウクライナ軍兵士の凄技!自爆型ドローンがロシア戦…

  • 10

    「この世のものとは...」 シースルードレスだらけの…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story