国民の「安心」のため外国人を締め出す政府は、むしろ「不安」を拡散している
もう1つの例を考えてみよう。最近、緊急経済対策を決定した岸田首相は「財政支出56兆円程度、事業規模79兆円程度と、国民の皆様に安心と希望をお届けできる十分な内容と規模だ」と繰り返した。経済面でどんな具体的成果につながるかは説明していないが、過去最高規模の財政支出にした理由は「国民の皆様に安心と希望をお届けできる」から。具体的成果が不明確だから多くの専門家の批判を招いたのだと思う。
個人的には、こんなに税金をばらまいていいのかと、むしろ不安になる。長期的に経済支援の必要な国民に給付を集中させたほうが適切ではないか。
「みんなを安心させる」のには無理がある。起きた問題の解決を目指して、どんな対応が適切なのかを分析した上で最善の政策を決めるのが本物の政治だ。
残念ながら、最近は日本に限らず多くの国の政治家がそれを忘れがち。デマゴギーで国民を安心させた政治家の一部は当選するだろうが、もちろん政策は失敗する。
西村カリン
KARYN NISHIMURA
1970年フランス生まれ。パリ第8大学で学び、ラジオ局などを経て1997年に来日。AFP通信東京特派員となり、現在はフリージャーナリストとして活動。著書に『不便でも気にしないフランス人、便利なのに不安な日本人』など。
2024年4月23日号(4月16日発売)は「老人極貧社会 韓国」特集。老人貧困率は先進国最悪。過酷バイトに食料配給……繫栄から取り残され困窮する高齢者は日本の未来の姿
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