コラム

イランと日本の意外な共通点──隣国との協力があってこそ今後も発展が続く

2020年04月01日(水)15時15分
石野シャハラン(異文化コミュニケーションアドバイザー)

REUTERS

<「アラブ諸国とまとめて中東」と呼ばれたくないイランと、UAE、サウジアラビアとの関係は、日中韓のそれと似ている>

早いもので3月も後半である。2020年は本当に時事ネタには困らない。中東情勢、イギリスのEU離脱、そして新型コロナウイルス......。国内外の重要な選挙もたくさん控えている。毎日ニュースが読み切れない。

今回は時事ネタや日本への苦言・提言・文句を一度忘れて、私の2つの祖国であるイランと日本の似ている点を紹介したい。

本誌の読者は博識な人が多いと思う。だから、「イラン」のイメージを聞かれて、砂漠やラクダがいっぱいのアラビアンナイトを思い浮かべる人はいないだろう(イランにはまだ日本に忍者がいると思っている人はゼロではない)。

イランは、中東で屈指の経済力と素晴らしい歴史・文明を持つ国だ。とても広い国土を有し、北部は日本の東北地方に似た気候で、冬には雪が降る。しかもしっかり積もる。本当に東北地方に雰囲気がそっくりだ。イランに行くならぜひ北部に寄ってほしい。

言語は主にペルシャ語。イスラム教がイランに入ってくるずっとずっと以前からある言葉だ。ペルシャ語とアラビア語は文字こそ共通しているが、互いの意思疎通は難しい。同じ漢字を使うのに、日本人と中国人が互いの話を分からないのと同じだ。

イラン人は自尊心が強いので、近くの国と一緒にされたくない。イラン人はアラブ人ではなくペルシャ人であるということに強い誇りを持っている。そこには紀元前3000年から続く歴史、さらにアケメネス朝キュロス大王・ダレイオス大王の末裔だという自負がある。だからイラン人はアラブ人と一緒にされることを嫌がるし、「アラブ諸国とまとめて中東」と呼ばれることにも、正直抵抗を感じている。ペルシャ湾をアラビア湾と呼ばれると「違う!」となる。

そういった周辺国との関係が私は日本と似ていると思う。イラン、アラブ首長国連邦(UAE)、サウジアラビアの3国は、それぞれ日本と韓国と中国の関係にとても近い。

数千年前までさかのぼると、日本と周辺国との関係同様、占領したりされたりの歴史があり、恨みつらみはもちろんある。現代における3国間の関係は、日中韓の関係に緊張感も似ていて面白い。

イランは1979年のイスラム革命まで親米・親英国家として大いに発展した。直接投資に支えられ、高層ビルや高速道路が次々と建設され、教育水準も上がり、中東随一の繁栄を極めた。君主は周辺国に多大な援助を行った。エリザベス・テイラーやアラン・ドロン、高倉健ら有名人もイランを訪問した。そして現在は核開発問題と経済制裁で苦境にある。UAEはイランのこの苦境をチャンスに変えた。一昔前は小さな漁村だったドバイは今や金融の一大拠点になった。私は日本が韓国にITで出遅れたのと同じ雰囲気を感じている。

プロフィール

外国人リレーコラム

・石野シャハラン(異文化コミュニケーションアドバイザー)
・西村カリン(ジャーナリスト)
・周 来友(ジャーナリスト・タレント)
・李 娜兀(国際交流コーディネーター・通訳)
・トニー・ラズロ(ジャーナリスト)
・ティムラズ・レジャバ(駐日ジョージア大使)

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

EUに8月から関税30%、トランプ氏表明 欧州委「

ビジネス

GMメキシコ工場で生産を数週間停止、人気のピックア

ビジネス

米財政収支、6月は270億ドルの黒字 関税収入は過

ワールド

ロシア外相が北朝鮮訪問、13日に外相会談
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:大森元貴「言葉の力」
特集:大森元貴「言葉の力」
2025年7月15日号(7/ 8発売)

時代を映すアーティスト・大森元貴の「言葉の力」の源泉にロングインタビューで迫る

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「ベンチプレス信者は損している」...プッシュアップを極めれば、筋トレは「ほぼ完成」する
  • 2
    「お腹が空いていたんだね...」 野良の子ネコの「首」に予想外のものが...救出劇が話題
  • 3
    完璧な「節約ディズニーランド」...3歳の娘の夢を「裏庭」で叶えた両親、「圧巻の出来栄え」にSNSでは称賛の声
  • 4
    千葉県の元市長、「年収3倍」等に惹かれ、国政に打っ…
  • 5
    主人公の女性サムライをKōki,が熱演!ハリウッド映画…
  • 6
    イギリスの鉄道、東京メトロが運営したらどうなる?
  • 7
    【クイズ】未踏峰(誰も登ったことがない山)の中で…
  • 8
    シャーロット王女の「ロイヤル・ボス」ぶりが話題に..…
  • 9
    日本人は本当に「無宗教」なのか?...「灯台下暗し」…
  • 10
    トランプ関税と財政の無茶ぶりに投資家もうんざり、…
  • 1
    「弟ができた!」ゴールデンレトリバーの初対面に、ネットが感動の渦
  • 2
    「ベンチプレス信者は損している」...プッシュアップを極めれば、筋トレは「ほぼ完成」する
  • 3
    日本企業の「夢の電池」技術を中国スパイが流出...APB「乗っ取り」騒動、日本に欠けていたものは?
  • 4
    シャーロット王女の「ロイヤル・ボス」ぶりが話題に..…
  • 5
    「飛行機内が臭い...」 原因はまさかの「座席の下」…
  • 6
    アリ駆除用の「毒餌」に、アリが意外な方法で「反抗…
  • 7
    トランプ関税と財政の無茶ぶりに投資家もうんざり、…
  • 8
    完璧な「節約ディズニーランド」...3歳の娘の夢を「…
  • 9
    為末大×TAKUMI──2人のプロが語る「スポーツとお金」 …
  • 10
    「本物の強さは、股関節と脚に宿る」...伝説の「元囚…
  • 1
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 2
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 3
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事故...「緊迫の救護シーン」を警官が記録
  • 4
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 5
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
  • 6
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
  • 7
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
  • 8
    「小麦はもう利益を生まない」アメリカで農家が次々…
  • 9
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門…
  • 10
    「うちの赤ちゃんは一人じゃない」母親がカメラ越し…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story