コラム

ヨーロッパのデジタルノマドワーカーが実践する「非同期ワーク」とは?

2021年05月11日(火)18時00分

ベルリン最大級のイノベーション・ハブ「Factory」は、ミッテ地区の元ビール醸造工場を改築し、2014年に開設された。©Factory Berlin

<今、在宅ワークが主流になった後に注目される働き方が話題となっている。それが、デジタル・ノマドが実践する「非同期型ワークスタイル」である>

ベルリンとデジタル・ノマド

ベルリンは、東西の壁の崩壊後から、世界のリモートワーカーや現代の遊牧民に例えられる「デジタル・ノマド」の拠点となり、場所や時間に左右されない働き方を牽引してきた都市である。

インターネットとノートPCがあれば、世界のどこからでも「仕事」ができる、主にデジタル関連の人々の数は増大し続けている。急増するスタートアップ・チームやノマドワーカーのニーズに応えるため、ベルリンでは100以上のコワーキング・スペースが設立されてきた。

中でもベルリン最大級のイノベーション・コミュニティである「Factory」は、現在、市内中心部に2箇所(ミッテとクロイツベルク)とハンブルクに大規模施設を有し、約150のスタートアップ、70カ国から約3,500人のコワーキング・メンバーを受け入れている。

takemura20210511_2.jpg

Factoryは市内2箇所に拡張され、ベルリンのスタートアップやフリーランサー、デジタル・ノマドの仕事と社交空間となっている。©Factory Berlin

2019年末の時点で、約77万7千人の外国人がベルリンに住んでおり、そのうち約3万3千人がこの年の新規移住者である。人口の21%が外国人で、世界中から起業をめざしてベルリンに来る人々も多い。その経済効果は、世界有数のスタートアップ都市を成長させ、シリコンバレーを超える輝きをベルリンにもたらしてきた。

パンデミック以前から、ベルリンでリモートワークは珍しいことではなかった。ベルリンのデジタル経済は、フリーランサーやノマドワーカーによって成り立っており、彼らはワークライフ・バランスというより、ワークライフ・ブレンディング(働き方と暮らし方の混合)という生き方を実践してきた。

takemura20210511_3.jpg

ベルリン移民局エントランス。年間3万人以上の外国人フリーランサーがここでビザを取得、更新する。©All About Berlin

オフィスワーク vs リモートワーク

世界中のパンデミックが突然リモートワークを主流に押し上げたことで、人々はようやくリモートワークのメリットを確信し始めた。欧州のほとんどの人はオフィスに戻ることを望まず、パンデミックが収束した後も、リモートワークの継続を確信している。一方、雇用主はオフィスワークの重要性を再認識し、ZOOMでのコミュニケーションの限界や、オフィスでやりとりされる「小さな会話」や対面の情報交換が、創造性やセレンディピティを生むと信じている。

オフィスへの帰還を主張する雇用主と、リモートワークを望む従業員との架け橋となるのが、ハイブリッド・ワークという折衷案である。しかし、オフィスワークとリモートワークを一定の割合で混合するワークスタイルが、パンデミック以後のスタンダードになるのかは不明である。

現在、何百万人もの人々がリモートで作業しているが、ほとんどの人は特定の時間に作業し、自宅待機し、電話に出て、ビデオ会議に参加する必要がある。今、在宅ワークが主流になった後に注目される働き方が話題となっている。それが、デジタル・ノマドが実践する「非同期型ワークスタイル」である。

プロフィール

武邑光裕

メディア美学者、「武邑塾」塾長。Center for the Study of Digital Lifeフェロー。日本大学芸術学部、京都造形芸術大学、東京大学大学院、札幌市立大学で教授職を歴任。インターネットの黎明期から現代のソーシャルメディア、AIにいたるまで、デジタル社会環境を研究。2013年より武邑塾を主宰。著書『記憶のゆくたて―デジタル・アーカイヴの文化経済』(東京大学出版会)で、第19回電気通信普及財団テレコム社会科学賞を受賞。このほか『さよならインターネット GDPRはネットとデータをどう変えるのか』(ダイヤモンド社)、『ベルリン・都市・未来』(太田出版)などがある。新著は『プライバシー・パラドックス データ監視社会と「わたし」の再発明』(黒鳥社)。現在ベルリン在住。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

インタビュー:中東情勢収束のめど立たず、今期業績予

ビジネス

セブン&アイ、米事業上場は最短で27年度に延期 還

ビジネス

米テスラ、より小型で安価なEV開発か 自動運転と人

ビジネス

インドの26/27年度成長率予想6.6%、 中東情
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:トランプの大誤算
特集:トランプの大誤算
2026年4月14日号(4/ 7発売)

国民向け演説は「フェイク」の繰り返し。泥沼化するイラン攻撃の出口は見えない

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    古代のパピルスから新たに見つかった「2500年前の文章」...歴史を塗り替えかねない、その内容とは?
  • 2
    韓国、生理用品無償支給を7月から開始 靴の中敷きで代用した少女たちから10年、アジア初の普遍的支援へ
  • 3
    「南東部と東部の前線で480平方キロ奪還」とウクライナ軍司令官 ロシア軍「⁠春の​攻勢」は継続
  • 4
    「地獄を見る」のは米国か──イラン地上侵攻なら革命…
  • 5
    ポケモンで遊ぶと脳に「専用の領域」ができる? ポ…
  • 6
    米特殊部隊、米空軍兵士救出「大成功」に残る多くの…
  • 7
    戸建てシフトで激変する住宅市場
  • 8
    高学力の男女で見ても、日本の男女の年収格差は世界…
  • 9
    キッチンスポンジ使用の思いがけない環境負荷...マイ…
  • 10
    「仕事ができる人」になる、ただ1つの条件...「頑張…
  • 1
    米特殊部隊、米空軍兵士救出「大成功」に残る多くの疑問
  • 2
    古代のパピルスから新たに見つかった「2500年前の文章」...歴史を塗り替えかねない、その内容とは?
  • 3
    韓国、生理用品無償支給を7月から開始 靴の中敷きで代用した少女たちから10年、アジア初の普遍的支援へ
  • 4
    イラン戦争の現実...アメリカとイスラエル、見え始め…
  • 5
    「南東部と東部の前線で480平方キロ奪還」とウクライ…
  • 6
    「考えの浅い親」が子どもに言ってしまっている口ぐ…
  • 7
    「地獄を見る」のは米国か──イラン地上侵攻なら革命…
  • 8
    攻撃開始日も知っていた?──イラン戦争を巡る巨額取引…
  • 9
    米軍が兵器を太平洋から中東に大移動、対中抑止に空白
  • 10
    【銘柄】イラン情勢で一躍脚光の「NEC」 防衛・宇宙…
  • 1
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する「安価で栄養価の高い魚」の正体
  • 2
    米特殊部隊、米空軍兵士救出「大成功」に残る多くの疑問
  • 3
    「根底にあるのは怒り」...日本の「3Dプリンター住宅」企業が救う、ウクライナの未来
  • 4
    「ノーと言えるスペイン」の背景に国防意識...次期ス…
  • 5
    キャサリン皇太子妃、ナイジェリア大統領夫妻出迎え…
  • 6
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」…
  • 7
    数時間以内に死に至ることも...若者の間で集団感染が…
  • 8
    「日本より、自分の国(フランス)を心配すれば?」…
  • 9
    米軍も防ぎきれないイランのドローン攻撃──イラン製…
  • 10
    メーガン妃、娘リリベット王女との「お手伝い姿」公…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story