コラム

「拡張するインターネット」としてのドローン

2016年04月07日(木)16時10分

ドローンの未来は始まったばかり スイスのSwiss Post、Swiss WorldCargo、米Matternetの3社は、ドローンの物流商用利用に向けて、実証試験を実施。 Pierre Albouy-REUTERS

 仕事柄なのかわからないが、しばしば「インターネットの次に来るのは、なんでしょうか?」と尋ねられる。Appleが創業した1976年から二十年後の1995年に登場したマイクロソフトのOS「Windows95」までが、いわゆる「パーソナル・コンピュータ革命」だとするなら、1996年から昨年2015年までは、「インターネット革命」の二十年間だと言っても間違いないだろう。では一体、これからの二十年間は、どんな変化が起きるのだろうか? それは「拡張するインターネット」に違いない。

未来は常に"怪しいバラ色"だ

 2016年現在、インターネットの端にある「端末」は、スマートフォンやパーソナル・コンピュータだ。だが、これから二十年かけて、あらゆるものがインターネットに接続される。冷蔵庫やトースター、自動車、そして人間の身体そのものが、次々とインターネットにつながることになるのだ。

 IBMリサーチセンターによれば、2020年までに(あと4年後だ!)2120億個のセンサーが様々な機器に搭載され、そのうち300億個のマシンがネットワークにつながると予測している。センサー数だけを考えれば、2020年の時点で地球上の全人口の28倍にも達し、この勢いは加速度的にその後も増え続けることになる。時代は、いよいよ「スマートフォン」から「スマートプラネット」へと移行する。ちなみにAIGの予測では、2020年には450億個のディバイスがネットワークに接続されるという。

 改めて文字にすると不気味だと感じる方もいると思うが、すでに、誘拐などの犯罪を防ぐために、GPSを体内に埋め込むサービスもはじまっている。十年ほど前、「近々、皆さんのポケットやカバンなどのすべてにGPSが入ることになる」と話したら、同じように不気味に感じられたことだろう。しかし、それは既に「現実」である。未来は常にバラ色ではなく、"怪しいバラ色"というが真実なのだ。

クリス・アンダーソンがドローンの可能性に賭けている

 さて、最近はモノのインターネット化を指す「IoT」(Internet of Things)や、工業のデジタル化を指す「インダストリー4.0」なる言葉もあるが、すべて「拡張するインターネット」のことに他ならない。各家庭にある家電製品から工業用機械まで、あらゆるハードウエアがネットワークにつながり、そのいくつかは自動制御されるのだが、これまでと最も異なるのが、空を飛ぶことが可能なドローンの登場だ。

 IT業界きっての識者として「フリー」や「ロングテール」などの著作で知られる米Wired誌の編集長だったクリス・アンダーソンは、3年ほど前に絶筆宣言し、自らドローンの製造販売会社を起業した。Time誌に「世界で最も影響力がある人物100人」(07年)に選ばれたこともある彼は、それまでのキャリアを投げ打って「拡張するインターネット」としてのドローンの可能性に賭けたのだ。昨年、バークレーに住むクリス・アンダーソンに話を聞きに行くと、彼は「現実世界のグーグル」を考えていると明言した。空をドローンが飛び交い、現実世界の情報をドローンが集めてくる様を、「ディジタイジング・ザ・ワールド」と、彼は何度も僕に話した。

プロフィール

高城剛

1964年生まれ。 日大芸術学部在学中に「東京国際ビデオビエンナーレ」グランプリ受賞後、メディアを超えて横断的に活動。総務省情報通信審議会専門委員など公職歴任。2008年より、拠点を欧州へ移し活動。現在、コミュニケーション戦略と次世代テクノロジ―を専門に、創造産業全般にわたって活躍。また、作家として著作多数。2014年Kindleデジタルパブリッシングアワード受賞。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

NY外為市場=ドル対円で一時9カ月半ぶり高値、高市

ビジネス

米国株式市場=S&P4日続落、割高感を警戒 エヌビ

ワールド

トランプ氏支持率、2期目最低 生活費高やエプスタイ

ワールド

トランプ氏、サウジ皇太子と会談 F35売却と表明 
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界も「老害」戦争
特集:世界も「老害」戦争
2025年11月25日号(11/18発売)

アメリカもヨーロッパも高齢化が進み、未来を担う若者が「犠牲」に

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR動画撮影で「大失態」、遺跡を破壊する「衝撃映像」にSNS震撼
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    「ゲームそのまま...」実写版『ゼルダの伝説』の撮影風景がSNSで話題に、「再現度が高すぎる」とファン興奮
  • 4
    マイケル・J・フォックスが新著で初めて語る、40年目…
  • 5
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 6
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 7
    報じられなかった中国人の「美談」
  • 8
    「嘘つき」「極右」 嫌われる参政党が、それでも熱狂…
  • 9
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 10
    「日本人ファースト」「オーガニック右翼」というイ…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披露目会で「情けない大失態」...「衝撃映像」がSNSで拡散
  • 4
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 5
    「死ぬかと思った...」寿司を喉につまらせた女性を前…
  • 6
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生ま…
  • 7
    【写真・動画】「全身が脳」の生物の神経系とその生態
  • 8
    筋肉の正体は「ホルモン」だった...テストステロン濃…
  • 9
    「イケメンすぎる」...飲酒運転で捕まった男性の「逮…
  • 10
    「ゲームそのまま...」実写版『ゼルダの伝説』の撮影…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 4
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 5
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 6
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 7
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 10
    今年、記録的な数の「中国の飲食店」が進出した国
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story