コラム

電気自動車からドローンまで「次のIT」を支えるあの電池

2016年05月25日(水)11時45分

Yuya Shino-REUTERS, 2013

<スマホ、デジカメ、ドローン、そして電気自動車まで、今やあらゆる場面でリチウムイオンバッテリーは必須だ。リチウムイオンバッテリーは、「次のIT」を支える根幹ともいえる>

リチウムイオンバッテリーの飛行機への預け入れが全面禁止

 先日、ドローンを使ったプロジェクトの撮影を日本で行ったのだが、開発していたシンガポールから機体を急いで搬送する際に、思わぬ問題が発生した。ICAO(国際民間航空機関)が、今年2月22日に「旅客機における貨物室内でのリチウムイオンバッテリーの運送の禁止」を発表し、先日4月1日から世界中で全面規制されることになったのだ。

 多くの方々には関係ない話に聞こえるかもしれないが、実際は、ほとんどの方々に大いに関係するリチウムイオンバッテリーの飛行機への預け入れが、ついに世界的に全面禁止になった(機内持ち込みは可能)。

 改めてリチウムイオンバッテリーと書くと、なにか特別のものにも感じるが、スマートフォンやデジタルカメラ、そしてドローンにまで、現在、多くの方々がお持ちのほとんどのディバイスに、このリチウムイオンバッテリーが使用されている。

リチウムイオンバッテリーが、明日を決める

 まず、このバッテリーの良い点は、従来のバッテリーと比べて、一段と速く充電でき、一段と長持ちする点にある。それまでのバッテリーと比べて、より高い出力密度を持っているので、耐用年数が延び、バッテリー自体も軽くなった。このリチウムイオンの登場と実用化によって、僕自身も現在のモバイルライフを享受できているとも言えるだろう。

 特徴は、バッテリー容量の80%まで高速充電し、その後、低速のトリクル充電に切り替わる点にある。この「2:8の法則」ともいうべき複合的な充電プロセスが、デバイスをより短時間で外に持ち出せるようにするだけでなく、バッテリーの耐用年数も延ばしているコア技術になっているのだ。

 そこで、あまり知られていないがリチウムイオンバッテリー製品と上手に長年付き合うコツは、「100%使い切らない」で、「継ぎ足し充電すること」にある。だから、お手持ちのスマートフォンやタブレットをより長く使いたいと思うのだったら、20%未満になる前に充電するのが良い。

 一方、リチウムイオン電池の危険な所は、リチウムが非常に化学反応を起こしやすい物質であるため、だからこそ高いエネルギーを溜め込める性質がある。それゆえ過充電などで、膨張や発火する可能性が高く、ついにICAO(国際民間航空機関)が、「旅客機における貨物室内でのリチウムイオンバッテリーの運送の禁止」するに至ることになった。事実、表にはあまり聞こえてこない事故が多発している。いまでは、ドローン用のバッテリーをオンラインで購入し、日本へ空輸するのにもかなりの苦労を要するようになってしまった。

 しかし、このリチウムイオンバッテリーや、そのマネージメント技術が、「次のIT」を支える根幹だと言ってもいいだろう。表面的には、AIに代表されるソフトウエア技術や、ロボティックスなどのハードウエア技術に注目が集まるが、その動力となるのが、リチウムイオンバッテリーに他ならない。代表的なのが、自動運転も可能な電気自動車である。

プロフィール

高城剛

1964年生まれ。 日大芸術学部在学中に「東京国際ビデオビエンナーレ」グランプリ受賞後、メディアを超えて横断的に活動。総務省情報通信審議会専門委員など公職歴任。2008年より、拠点を欧州へ移し活動。現在、コミュニケーション戦略と次世代テクノロジ―を専門に、創造産業全般にわたって活躍。また、作家として著作多数。2014年Kindleデジタルパブリッシングアワード受賞。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

原油先物小動き、イラク生産減と米関税問題が交錯

ビジネス

EU、次期予算案で原発に資金拠出検討 ドイツは反対

ワールド

中南米海外直接投資、24年は7.1%増 新規は停滞

ビジネス

スウォッチ、中国低迷で上期7.1%減収 フラン高も
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:AIの6原則
特集:AIの6原則
2025年7月22日号(7/15発売)

加速度的に普及する人工知能に見えた「限界」。仕事・学習で最適化する6つのルールとは?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    その首輪に書かれていた「8文字」に、誰もが言葉を失った
  • 2
    頭はどこへ...? 子グマを襲った「あまりの不運」が話題に
  • 3
    日本より危険な中国の不動産バブル崩壊...目先の成長だけ追い求め「失われた数百年」到来か?
  • 4
    アフリカ出身のフランス人歌手「アヤ・ナカムラ」が…
  • 5
    「異常な出生率...」先進国なのになぜ? イスラエル…
  • 6
    ネグレクトされ再び施設へ戻された14歳のチワワ、最…
  • 7
    アメリカで「地熱発電革命」が起きている...来年夏に…
  • 8
    「どの面下げて...?」ディズニーランドで遊ぶバンス…
  • 9
    「細身パンツ」はもう古い...メンズファッションは…
  • 10
    どの学部の卒業生が「最も稼いでいる」のか? 学位別…
  • 1
    その首輪に書かれていた「8文字」に、誰もが言葉を失った
  • 2
    頭はどこへ...? 子グマを襲った「あまりの不運」が話題に
  • 3
    「ベンチプレス信者は損している」...プッシュアップを極めれば、筋トレは「ほぼ完成」する
  • 4
    日本より危険な中国の不動産バブル崩壊...目先の成長…
  • 5
    「お腹が空いていたんだね...」 野良の子ネコの「首…
  • 6
    どの学部の卒業生が「最も稼いでいる」のか? 学位別…
  • 7
    アメリカで「地熱発電革命」が起きている...来年夏に…
  • 8
    千葉県の元市長、「年収3倍」等に惹かれ、国政に打っ…
  • 9
    「二度とやるな!」イタリア旅行中の米女性の「パス…
  • 10
    ネグレクトされ再び施設へ戻された14歳のチワワ、最…
  • 1
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 2
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 3
    その首輪に書かれていた「8文字」に、誰もが言葉を失った
  • 4
    頭はどこへ...? 子グマを襲った「あまりの不運」が…
  • 5
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事…
  • 6
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 7
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
  • 8
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
  • 9
    「小麦はもう利益を生まない」アメリカで農家が次々…
  • 10
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story