山本由伸が変えた「常識」──メジャーを揺るがせた235球の真実

THE MAKING OF A GOAT

2025年11月16日(日)18時54分
柳原直之(スポーツニッポン記者、MLB担当)
山本由伸、MLBの常識を変えた男──伝説を超えた236球の軌跡

連日登板しドジャースを球団史上初の2連覇に導いた山本がMVPトロフィーを掲げる(11月1日) ERICK W. RASCOーSPORTS ILLUSTRATED/GETTY IMAGES

<投手分業制が常識となったメジャーの常識を覆し、仲間から「英雄」と讃えられた。名言「負けは選択肢にない」とともに、山本はMLBの歴史に新たな伝説を刻んだ>

ドジャースのワールドシリーズ(WS)制覇から2日後の11月3日。ロサンゼルスのドジャースタジアムで行われた優勝報告会で選手たちの先陣を切ってグラウンドに登場し、5万人の大歓声を浴びた山本由伸を見ながら、ロサンゼルス・タイムズ紙のディラン・ヘルナンデス記者がつぶやいた。

「万が一、山本が来年から投げられなくなっても、もう大丈夫でしょう。ファンにとって彼は英雄。それくらいのことをした」辛口で知られる同記者らしく、決していい例えではなかったが、私は完全に同意した。山本は「それくらいのこと」をロサンゼルスにもたらした。

2023年オフにメジャーの先発投手史上最高額の12年総額3億2500万ドル(決定時のレートで約462億円)でドジャースと契約し、1年目の昨季は18試合に投げ7勝2敗、防御率3.00。右肩の故障で6月中旬~9月中旬まで約3カ月の長期離脱を経験した一方、ポストシーズン(PS)では4試合に投げ2勝0敗、防御率3.86と活躍し、最終的にはチームに欠かせない投手として存在感を発揮した。

ただ、3年連続で沢村賞を獲得したオリックス時代の山本を知る多くの野球ファンは「由伸ならもっとできる」と思っていたはず。2年目の今季はその真価が問われていた。

SDGs
2100年には「寿司」がなくなる?...斎藤佑樹×佐座槙苗と学ぶ「サステナビリティ」 スポーツ界にも危機が迫る!?
あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

MAGA派グリーン議員、トランプ氏発言で危険にさら

ビジネス

テスラ、米生産で中国製部品の排除をサプライヤーに要

ビジネス

米政権文書、アリババが中国軍に技術協力と指摘=FT

ビジネス

エヌビディア決算にハイテク株の手掛かり求める展開に
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:世界最高の投手
特集:世界最高の投手
2025年11月18日号(11/11発売)

日本最高の投手がMLB最高の投手に──。全米が驚愕した山本由伸の投球と大谷・佐々木の活躍

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    【写真・動画】「全身が脳」の生物の神経系とその生態
  • 3
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生まれた「全く異なる」2つの投資機会とは?
  • 4
    筋肉の正体は「ホルモン」だった...テストステロン濃…
  • 5
    ヒトの脳に似た構造を持つ「全身が脳」の海洋生物...…
  • 6
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 7
    「不衛生すぎる」...「ありえない服装」でスタバ休憩…
  • 8
    「死ぬかと思った...」寿司を喉につまらせた女性を前…
  • 9
    レアアースを武器にした中国...実は米国への依存度が…
  • 10
    「イケメンすぎる」...飲酒運転で捕まった男性の「逮…
  • 1
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 2
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披露目会で「情けない大失態」...「衝撃映像」がSNSで拡散
  • 3
    「死ぬかと思った...」寿司を喉につまらせた女性を前に、男性が取った「まさかの行動」にSNS爆笑
  • 4
    『プレデター: バッドランド』は良作?駄作?...批評…
  • 5
    ドジャースの「救世主」となったロハスの「渾身の一…
  • 6
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」…
  • 7
    【写真・動画】「全身が脳」の生物の神経系とその生態
  • 8
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 9
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生ま…
  • 10
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 5
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 6
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 7
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 10
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中