最新記事
ドローン

ドローン攻撃の目的は突破口を開くことではない...ドローン攻撃を続けるロシアの真の目的とは?

SWARM UND DRANG

2025年10月2日(木)11時30分
ヤシル・アタラン(戦略国際問題研究所〔CSIS〕研究員)

一連の作戦はロシアに、戦争を水平的にも垂直的にも拡大する手段を与えた。ウクライナ国内では大規模ドローン攻撃で、いくつもの地域に同時に圧力をかけられる。国外でも先日のポーランドの例のように、戦争の影響範囲をNATOの領土にまで広げることが可能になる。一部のおとりドローンは弾頭を搭載しておらず、ロシアがNATO域内で見失ったとしても責任を否定できる。


防空網の突破率が急上昇

兵器の精度だけを見れば、この戦略は非効率に思える。シャヘドは時速200キロに満たない低速のドローンで、命中の精度も低い。ウクライナ戦争全体での成功率は、おおむね10%未満にとどまる。

しかし、数字が全てではない。ロシアは圧力をかけ続けることでウクライナ側の士気をそぎ、軍事資源を消耗させ、ウクライナの支援国に対しては長期的コストを再考させようとしている。狙いは精度の高い攻撃ではなく、相手を消耗させること。だから大半が破壊されたとしても、シャヘドのコスト効率はいいという判断になる。

ロシアはドローンの改良にも力を入れてきた。初期型は高度1〜2キロを低空飛行していたため迎撃されやすく、当時はウクライナ側の防空網が手薄だったのに命中率は7〜8%にとどまった。新型のドローンは従来の方法では迎撃が難しい上、多数のドローンを投入して圧倒する最近の戦術も功を奏し、命中率は約20%にまで改善された。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

ウェイモ、自動運転タクシーをミネアポリスなど3都市

ワールド

米CDCサイトが一変、ケネディ長官の反ワクチン主張

ビジネス

補正予算後の国債残高、悪化せず=経済対策で片山財務

ビジネス

ワーナー買収、パラマウント・コムキャスト・ネトフリ
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:世界も「老害」戦争
特集:世界も「老害」戦争
2025年11月25日号(11/18発売)

アメリカもヨーロッパも高齢化が進み、未来を担う若者が「犠牲」に

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判殺到、そもそも「実写化が早すぎる」との声も
  • 2
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 3
    【銘柄】イオンの株価が2倍に。かつての優待株はなぜ成長株へ転生できたのか
  • 4
    ロシアはすでに戦争準備段階――ポーランド軍トップが…
  • 5
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 6
    アメリカの雇用低迷と景気の関係が変化した可能性
  • 7
    幻の古代都市「7つの峡谷の町」...草原の遺跡から見…
  • 8
    【クイズ】中国からの融資を「最も多く」受けている…
  • 9
    EUがロシアの凍結資産を使わない理由――ウクライナ勝…
  • 10
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 3
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR動画撮影で「大失態」、遺跡を破壊する「衝撃映像」にSNS震撼
  • 4
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 5
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 6
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生ま…
  • 7
    【写真・動画】「全身が脳」の生物の神経系とその生態
  • 8
    筋肉の正体は「ホルモン」だった...テストステロン濃…
  • 9
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 10
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 4
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 5
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 6
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 7
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 8
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 9
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 10
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中