他国の追従を許さない、「シャープパワー強国」2カ国...その異なる特徴から分かること
さらに注目すべきは、華僑・華人ネットワークや海外の中国語メディアを通じ、他国の世論や選挙に影響を及ぼそうとしている点である。
2021年のカナダ総選挙では、外国政府の意向で動く個人や団体に登録を義務付けることを目的とした「外国代理人登録法案(Foreign Influence Registry Act)」を推進していた保守党のケニー・チウ下院議員(当時)が、中華系現地メディアで激しいバッシングを受けた。
中国系メディアの報道では、同議員が「中華系コミュニティを弾圧しようとしている」といった、誤解を招く内容が盛んに取り上げられ、地元の中華系コミュニティの間に不信感を生じさせた。
選挙後に発表された報告書で、カナダの情報機関である安全情報局(CSIS)は、同議員が落選した背景に、中国系メディアによる影響力工作があった可能性が「十分にある」との結論を下している。
このようなシャープパワー行使のあり方は、世界各地に華僑・華人ネットワークを抱える中国ならではのものだろう。
ロシア型のシャープパワー
一方で、ロシア型のシャープパワーは、中国型のように国際社会において自らの政治体制や主権に関する問題を積極的に正当化しようとすることよりも、西側社会そのものの分断や不安定化を図ることに重点が置かれている。
とりわけ米国や欧州では、保守派や極右勢力に有利な情勢を作り上げるような形で、世論操作や選挙介入が行われてきた。