他国の追従を許さない、「シャープパワー強国」2カ国...その異なる特徴から分かること
中国型のシャープパワー
中国型のシャープパワーの根底には、「中国共産党による統治の正統性維持」という政策的意図が存在する。この目的の下、中国は国際世論を自国に有利な方向に導くため、多層的な影響力工作を展開していると指摘されている。
例えば、新疆ウイグル自治区での人権侵害に関する国際社会からの批判を回避すべく、外国人記者やインフルエンサーを現地に招き、「幸せなウイグル人」と題する動画や記事を発信させてきた。こうした対外広報は、中国国営メディアにとどまらず、YouTubeなどのグローバル・プラットフォームを通じ、世界中に拡散されている。
中国共産党が「核心的利益の中の核心」とみなす台湾問題においても、中国系のアクターは、台湾の国連や国際機関への関与を強く牽制してきた。その根拠として、中国がメディアやSNSなどを通じた対外発信で頻繁に持ち出しているのが、1971年の国連総会第2758号決議(注:いわゆる「アルバニア決議」。「中華民国」が国連から脱退する契機となった)である。
だが、この決議は国連における「中国の代表権」を「中華人民共和国」に移すことを定めたものであり、台湾そのものの政治的地位や国際機関への参加可否について触れたものではないというのが、欧米諸国で広く受け入れられている見方である。2024年にはカート・キャンベル米国務副長官(当時)も、下院外交委員会の公聴会で、中国が同決議を曲解しているとの立場を示している。