日本の安全神話も崩壊...権威主義国のシャープパワーがいま世界各国で影響力を増している
三つ目の要因は、権威主義国家が、戦場において敵を攪乱するために情報戦を補助的手段として仕掛けるのではなく、軍事や経済と並ぶ中核的手段として用いるようになったことである。
新型コロナウイルスの感染拡大当初、中国は国営メディアのSNSアカウントを通じて、自国の感染防止措置を称賛する投稿やウイルスの米軍起源説を世界中に拡散した。
ロシアもウクライナ侵攻以降、情報戦を本格化させた。紛争の原因をNATOの東方拡大に求める言説や、ウクライナ支援を巡る世論の分断を狙うプロパガンダは、今でもネット上で幅広く展開されている。
こうした中国側やロシア側の主張を支持する人々も少なからず存在する。
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日本におけるシャープパワー
これまで、日本はシャープパワーの影響を受けにくいと考えられてきた。英語や中国語、ロシア語といった、各国で幅広く使用されている言語とは異なり、日本語という特殊な言語が他国による影響力工作からの防波堤になると考えられていたためである。
しかし、日本語で情報発信を行う外国系メディアの活動が活発化している現在においては、こうした「安全神話」はすでに過去のものとなりつつある。
特に中国系の発信主体が日本語で運営を行うメディアの中には、スポーツや文化に関する中国関連のニュースを好意的に紹介する一方で、韓国については歴史問題や領土問題をセンセーショナルに取り上げるものもある。これは、日本国内における対韓感情を刺激することで、日韓の分断を促し、民主主義国家間の連携を弱体化させることを狙ったものと考えられる。