最新記事
民主主義

日本の安全神話も崩壊...権威主義国のシャープパワーがいま世界各国で影響力を増している

2025年8月6日(水)18時00分
水村太紀(国際協力銀行〔JBIC〕調査部 調査役)

三つ目の要因は、権威主義国家が、戦場において敵を攪乱するために情報戦を補助的手段として仕掛けるのではなく、軍事や経済と並ぶ中核的手段として用いるようになったことである。

新型コロナウイルスの感染拡大当初、中国は国営メディアのSNSアカウントを通じて、自国の感染防止措置を称賛する投稿やウイルスの米軍起源説を世界中に拡散した。

ロシアもウクライナ侵攻以降、情報戦を本格化させた。紛争の原因をNATOの東方拡大に求める言説や、ウクライナ支援を巡る世論の分断を狙うプロパガンダは、今でもネット上で幅広く展開されている。

こうした中国側やロシア側の主張を支持する人々も少なからず存在する。

※関連記事:他国の追従を許さない、「シャープパワー強国」2カ国...その異なる特徴から分かること

日本におけるシャープパワー

これまで、日本はシャープパワーの影響を受けにくいと考えられてきた。英語や中国語、ロシア語といった、各国で幅広く使用されている言語とは異なり、日本語という特殊な言語が他国による影響力工作からの防波堤になると考えられていたためである。

しかし、日本語で情報発信を行う外国系メディアの活動が活発化している現在においては、こうした「安全神話」はすでに過去のものとなりつつある。

特に中国系の発信主体が日本語で運営を行うメディアの中には、スポーツや文化に関する中国関連のニュースを好意的に紹介する一方で、韓国については歴史問題や領土問題をセンセーショナルに取り上げるものもある。これは、日本国内における対韓感情を刺激することで、日韓の分断を促し、民主主義国家間の連携を弱体化させることを狙ったものと考えられる。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

NY外為市場=円下落・豪ドル上昇、米政府再開期待で

ワールド

再送-〔マクロスコープ〕高市氏、経済対策で日銀に「

ビジネス

米国株式市場=上昇、エヌビディアやパランティアが高

ワールド

トランプ氏、英BBCに10億ドル訴訟警告 誤解招く
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:世界最高の投手
特集:世界最高の投手
2025年11月18日号(11/11発売)

日本最高の投手がMLB最高の投手に──。全米が驚愕した山本由伸の投球と大谷・佐々木の活躍

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ドジャースの「救世主」となったロハスの「渾身の一撃」は、キケの一言から生まれた
  • 2
    『プレデター: バッドランド』は良作?駄作?...批評家たちのレビューは「一方に傾いている」
  • 3
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 4
    コロンビアに出現した「謎の球体」はUFOか? 地球外…
  • 5
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 6
    中年男性と若い女性が「スタバの限定カップ」を取り…
  • 7
    インスタントラーメンが脳に悪影響? 米研究が示す「…
  • 8
    「座席に体が収まらない...」飛行機で嘆く「身長216c…
  • 9
    レイ・ダリオが語る「米国経済の危険な構造」:生産…
  • 10
    「爆発の瞬間、炎の中に消えた」...UPS機墜落映像が…
  • 1
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 2
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 3
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 4
    『プレデター: バッドランド』は良作?駄作?...批評…
  • 5
    「座席に体が収まらない...」飛行機で嘆く「身長216c…
  • 6
    ドジャースの「救世主」となったロハスの「渾身の一…
  • 7
    「遺体は原型をとどめていなかった」 韓国に憧れた2…
  • 8
    筋肉を鍛えるのは「食事法」ではなく「規則」だった.…
  • 9
    「路上でセクハラ」...メキシコ・シェインバウム大統…
  • 10
    クマと遭遇したら何をすべきか――北海道80年の記録が…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 6
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 7
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 8
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 9
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
  • 10
    今年、記録的な数の「中国の飲食店」が進出した国
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中