最新記事
民主主義

日本の安全神話も崩壊...権威主義国のシャープパワーがいま世界各国で影響力を増している

2025年8月6日(水)18時00分
水村太紀(国際協力銀行〔JBIC〕調査部 調査役)

なぜ今シャープパワーなのか

シャープパワーの存在自体は新しいものではない。しかし、近年になってその影響力に改めて注目が集まっている。その要因の一つとして指摘されるのは、技術環境の急速な変化である。

各国において生成AIの利用が広がるなか、ディープフェイクや偽情報の作成・拡散コストは著しく低下した。また、SNSでは過去の検索結果に基づくアルゴリズムによって、利用者の見たい情報が優先的に表示され、ユーザーは自分の興味のある情報だけに囲まれた「フィルターバブル」に閉じこもりがちになる。

結果として、人々が異なる視点や考え方に触れる機会は大幅に減少し、外部から操作された、特定の政治的価値観に基づくナラティブを容易に受け入れるようになってしまう。

二つ目の要因は、民主主義社会の脆弱性が露呈しつつあることである。ここ数年、ポピュリズム政権の台頭や既存政治に対する不信感の増大といった動きが各国で加速している。それに伴い、政府や報道機関、アカデミアといった、これまで一定の社会的信頼を担ってきた存在の影響力が一層低下している。

こうした状況下では、社会の分断が一層深まり、陰謀論や特定の国を敵視するナラティブがSNS上で共鳴・拡散されやすくなる。その結果として、外部の権威主義国家による影響力工作が容易になり、民主主義の根幹が揺らぎかねない状況が生まれている。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

NY外為市場=円が軟化、介入警戒続く

ビジネス

米国株式市場=横ばい、AI・貴金属関連が高い

ワールド

米航空会社、北東部の暴風雪警報で1000便超欠航

ワールド

ゼレンスキー氏は「私が承認するまで何もできない」=
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 2
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 3
    中国、インドをWTOに提訴...一体なぜ?
  • 4
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 5
    アベノミクス以降の日本経済は「異常」だった...10年…
  • 6
    「衣装がしょぼすぎ...」ノーラン監督・最新作の予告…
  • 7
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「…
  • 8
    【世界を変える「透視」技術】数学の天才が開発...癌…
  • 9
    中国、米艦攻撃ミサイル能力を強化 米本土と日本が…
  • 10
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 1
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 2
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 3
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツよりコンビニで買えるコレ
  • 4
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 5
    中国、インドをWTOに提訴...一体なぜ?
  • 6
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低…
  • 7
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 8
    批評家たちが選ぶ「2025年最高の映画」TOP10...満足…
  • 9
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリ…
  • 10
    アベノミクス以降の日本経済は「異常」だった...10年…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 3
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 4
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 5
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 6
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 7
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 8
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 9
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 10
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中