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トランプに先手を取られ、新興政党には後れを取った──石破政権を待つ「過酷な運命」とは?

Checkmate

2025年7月29日(火)18時13分
北島 純(社会構想⼤学院⼤学教授)

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来日したベッセント財務長官(中央左)との会談に向かう石破(7月18日) SHUJI KAJIYAMAーPOOLーREUTERS

石破首相が続投する最大の大義名分としたのが米トランプ政権との関税交渉だが、ドナルド・トランプ大統領は23日、急きょ訪米した赤澤亮正経済再生担当相と協議を行い、相互関税と自動車関税を15%に引き下げる合意に達したと発表した。石破政権からすれば、参院選投票日前に合意していれば選挙戦の助け舟になったはずだという恨み節をこぼしたくなるタイミングだ。

関税交渉の責任者であるスコット・ベッセント財務長官は17日午後に来日し18日午後に石破首相と面会しているが、具体的な関税協議は行わなかったとされている。しかしベッセント財務長官は事前にジョージ・グラス駐日大使から与党敗北必至という選挙情勢の説明を受けていたはずだ。

「選挙期間中の外交交渉は控える」というのは表向きであり、盟友であるジャイル・ボルソナロ前ブラジル大統領がクーデター未遂で訴追された報復として、ブラジルに50%もの関税を課すと通告したトランプ大統領が、内政干渉を躊躇するとは思えない。


23日の合意はむしろ選挙敗北で弱体化した直後の石破政権に、5500億ドル(約80兆円)の対米投資や米国産コメ輸入75%拡大、米国製品80億ドル(約1兆1700億円)分やボーイング社の航空機100機の購入といった「巨額ディール」をのませる格好のタイミングだったとみるべきだ。

トランプ政権は今、性的人身売買で起訴され勾留中の19年に「自殺」した富豪ジェフリー・エプスタインの捜査資料である「エプスタイン・ファイル」の非公開措置をめぐって、陰謀暴露を期待していたMAGA(米国を再び偉大に)運動支持層からかつてないほどの厳しい批判を浴びている。その失地回復に利用された側面も否定できない。

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例外的に低い日本への税率は同盟国への配慮か、ディールの罠か

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