「平和の国」がいま武装する理由──デンマーク首相フレデリクセン、激動の世界を語る【本誌独占インタビュー】
CAUGHT IN THE CROSSFIRE
一方で、戦略的に重要な技術は「共通の価値観を持つパートナーと提携して自力で開発することが望ましい」とも付け加える。「現時点でアメリカと距離を置き、中国に接近することは、先を見据えれば正しい戦略的な選択とは言えない」
グローバルな難題は山積みだが、フレデリクセンが特に懸念しているのは、気候変動対策が脇に追いやられようとしていること。デンマークはグリーンエネルギー先進国だ。その強みは風力にある。北海とバルト海に囲まれたこの国は強い風が吹き、風力発電が電力供給の半分以上を占めている。
ヨーロッパの他の国々は電力価格の高騰や大規模停電のリスクを警戒して、再生可能エネルギーへの転換に及び腰だ。一方、トランプは地球温暖化そのものを否定。就任後すぐに国家エネルギー非常事態を宣言し、「掘って、掘って、掘りまくれ」と化石燃料の増産に発破をかけている。
「数年前に比べ、気候変動対策とグリーン経済への移行が重視されなくなったようだ」と、フレデリクセンは眉をひそめる。「ヨーロッパが化石燃料依存から脱却し競争力を高める上で、グリーン経済への移行は解決策だ。問題ではない」
グリーンエネルギーの生産拡大と大陸各地を結ぶエネルギーインフラの大規模整備に投資する。それこそが「強いヨーロッパ構築の前提条件」だというのだ。「それにより、ヨーロッパは地球規模の排出削減と気候変動との闘いに貢献できる」