最新記事
太平洋戦争

米軍が長崎への原爆投下を急いだ理由と、幻の「飢餓作戦」「本土決戦」を在日米国人学者が探る

ATOMIC ENDGAME

2025年8月20日(水)15時45分
M・G・シェフタル(静岡大学教授)
原爆投下から約1カ月後の長崎

原爆投下から約1カ月後の長崎。焼け野原に開かれた道を生存者が行く BETTMANN/GETTY IMAGES

<日本が降伏していなかった場合に発動された「飢餓作戦」「本土決戦」が実際に行われていたら、日本はどうなっていたのか>

1945年8月9日、アメリカは2発目の原爆を長崎に投下した。少なくとも現時点では、核兵器が実戦で使用された最後の例だ。あれで第2次大戦の終結が早まったとの解釈もあるが、広島と合わせ数十万の市民が犠牲になったのも事実だった。

あれから80年、長年にわたり被爆者の証言を丹念に記録してきた静岡大学のM・G・シェフタル教授が先頃、原爆投下に関する2冊目の英文著書『ナガサキ:最後の証言者たち』を刊行した(1冊目は昨年の『ヒロシマ:最後の証言者たち』)。


newsweekjp20250820043801.jpg

8月に出版の新著『ナガサキ:最後の証言者たち』 DUTTON(※画像をクリックするとAmazonに飛びます)

以下の抜粋では、なぜアメリカが3日前の広島に続く「2発目」を急いだのか、その先にある「本土決戦」に向けていかなるプランを立てていたのかを検証する。

◇ ◇ ◇


1945年8月8日午前0時30分、西太平洋に浮かぶテニアン島ノースフィールド飛行場。広島への原爆投下ミッションを終えたB29「エノラ・ゲイ」が帰還してから33時間が経過していた。作戦の成功を祝う仲間たちの歓声や記録班の回すムービーカメラの作動音は消え、今は虫の鳴き声と、時折巡回するジープのエンジン音が聞こえるばかりだ。

北西に約2500キロ離れた港町・長崎では、16歳のグンゲ・ノリオが動員先の三菱兵器製作所での夜勤を終え、自宅に向かっていた。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

英CPI、7月前年比+3.8%に加速 24年1月以

ビジネス

アングル:一部証券の評価損益率、プラス転換で日本株

ビジネス

植田総裁、21日から米国出張 ジャクソンホール会議

ビジネス

中国のPEセカンダリー取引、好調続く見通し 上期は
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:台湾有事 そのとき世界は、日本は
特集:台湾有事 そのとき世界は、日本は
2025年8月26日号(8/19発売)

中国の圧力とアメリカの「変心」に危機感。東アジア最大のリスクを考える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに感染、最悪の場合死亡も
  • 2
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人」だった...母親によるビフォーアフター画像にSNS驚愕
  • 3
    「死ぬほど怖い」「気づかず飛び込んでたら...」家のプールを占拠する「巨大な黒いシルエット」にネット戦慄
  • 4
    【クイズ】2028年に完成予定...「世界で最も高いビル…
  • 5
    頭部から「黒い触手のような角」が生えたウサギ、コ…
  • 6
    広大な駐車場が一面、墓場に...ヨーロッパの山火事、…
  • 7
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大…
  • 8
    【クイズ】沖縄にも生息、人を襲うことも...「最恐の…
  • 9
    習近平「失脚説」は本当なのか?──「2つのテスト」で…
  • 10
    時速600キロ、中国の超高速リニアが直面する課題「ト…
  • 1
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大人も大好きな5つの食べ物
  • 2
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに感染、最悪の場合死亡も
  • 3
    将来ADHDを発症する「幼少期の兆候」が明らかに?...「就学前後」に気を付けるべきポイント
  • 4
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 5
    頭部から「黒い触手のような角」が生えたウサギ、コ…
  • 6
    「死ぬほど怖い」「気づかず飛び込んでたら...」家の…
  • 7
    「笑い声が止まらん...」証明写真でエイリアン化して…
  • 8
    「長女の苦しみ」は大人になってからも...心理学者が…
  • 9
    「何これ...」歯医者のX線写真で「鼻」に写り込んだ…
  • 10
    【クイズ】次のうち、「海軍の規模」で世界トップ5に…
  • 1
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベーション、医師が語る熟年世代のセルフケア
  • 2
    こんな症状が出たら「メンタル赤信号」...心療内科医が伝授、「働くための」心とカラダの守り方とは?
  • 3
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大人も大好きな5つの食べ物
  • 4
    デカすぎ...母親の骨盤を砕いて生まれてきた「超巨大…
  • 5
    デンマークの動物園、飼えなくなったペットの寄付を…
  • 6
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅…
  • 7
    山道で鉢合わせ、超至近距離に3頭...ハイイログマの…
  • 8
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 9
    将来ADHDを発症する「幼少期の兆候」が明らかに?...…
  • 10
    イラン人は原爆資料館で大泣きする...日本人が忘れた…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中