適切な保険料はいくら?...「86歳で死ぬ」想定、世界初の「科学的な」保険システムを作った「ある計算式」とは?

2025年7月7日(月)16時53分
ニューズウィーク日本版ウェブ編集部

その後も地中海貿易においては、積荷に損害があった場合、荷主と船主で損害を分担する制度や、保険金を出航前に受け取り、無事に航海を終えると保険金に利子をつけて返還する制度(実質、その利子が保険料となる)などの損害保険の例がある。

生命保険の歴史としては、古代ローマの「コレギウム」と呼ばれる労働組合が最古の例として挙げられる。

古代ローマでは葬儀を重要視しており、葬儀にかかる高額な費用が遺族を悩ませていた。そこで、組合に加入している人が亡くなった場合、その葬儀費用の支給や遺族の生活保障を共同で行っていたというのだ。

"もしも"をどのように計算するか

さて、これらの例からもわかる通り、加入者たちが保険料を出し合い相互扶助の精神に基づいて"もしも"に備えるのが、現在にも通じる保険のシステムだ。

ただ、この"もしも"が「どのくらいの確率で起こるものなのか」、また「その確率に見合った保険料はいくらなのか」という数学的な問題は、実は17世紀に考えられ始めたものであった。

ルネサンス期以降の数学の発展に伴い、保険にどのような数学的視点が加わっていったのかを、ド・モアブルという数学者を通して見ていく。

この数学者は複素数の分野における「ド・モアブルの定理」で有名だが、確率論の研究にも精を出し、人々の死亡率に関する研究から、保険業界に数学的手法を取り入れた功績が存在する。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

アマゾン、プライムデー米売上高28%増の238億ド

ワールド

トランプ氏、公判中のブラジル前大統領擁護 「ボルソ

ワールド

EXCLUSIVE-米支援の団体名義でガザ住民向け

ワールド

フーシ派、紅海でギリシャ企業の貨物船を攻撃 今年初
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:大森元貴「言葉の力」
特集:大森元貴「言葉の力」
2025年7月15日号(7/ 8発売)

時代を映すアーティスト・大森元貴の「言葉の力」の源泉にロングインタビューで迫る

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    シャーロット王女の「ロイヤル・ボス」ぶりが話題に...「曾祖母エリザベス女王の生き写し」
  • 2
    「飛行機内が臭い...」 原因はまさかの「座席の下」だった...異臭の正体にネット衝撃
  • 3
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...父親も飛び込み大惨事に、一体何が起きたのか?
  • 4
    アリ駆除用の「毒餌」に、アリが意外な方法で「反抗…
  • 5
    「やらかした顔」がすべてを物語る...反省中のワンコ…
  • 6
    米テキサス州洪水「大規模災害宣言」...被害の陰に「…
  • 7
    為末大×TAKUMI──2人のプロが語る「スポーツとお金」 …
  • 8
    後ろの川に...婚約成立シーンを記録したカップルの幸…
  • 9
    ギネスが大流行? エールとラガーの格差って? 知…
  • 10
    新党「アメリカ党」結成を発表したマスクは、トラン…
  • 1
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...父親も飛び込み大惨事に、一体何が起きたのか?
  • 2
    「やらかした顔」がすべてを物語る...反省中のワンコに1400万人が注目
  • 3
    後ろの川に...婚約成立シーンを記録したカップルの幸せ映像に「それどころじゃない光景」が映り込んでしまう
  • 4
    【クイズ】「宗教を捨てる人」が最も多い宗教はどれ?
  • 5
    職場でのいじめ・パワハラで自死に追いやられた21歳…
  • 6
    為末大×TAKUMI──2人のプロが語る「スポーツとお金」 …
  • 7
    「本物の強さは、股関節と脚に宿る」...伝説の「元囚…
  • 8
    「飛行機内が臭い...」 原因はまさかの「座席の下」…
  • 9
    シャーロット王女の「ロイヤル・ボス」ぶりが話題に..…
  • 10
    アリ駆除用の「毒餌」に、アリが意外な方法で「反抗…
  • 1
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 2
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 3
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の瞬間...「信じられない行動」にネット驚愕
  • 4
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事…
  • 5
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 6
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
  • 7
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
  • 8
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
  • 9
    「小麦はもう利益を生まない」アメリカで農家が次々…
  • 10
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中