適切な保険料はいくら?...「86歳で死ぬ」想定、世界初の「科学的な」保険システムを作った「ある計算式」とは?

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<17世紀まで、保険システムは破綻しがちで短期間で潰れてばかり。そんな状況を一変させたのは「ある数学者」の存在だった──>
「保険は若いうちに入るとお得」という広告をよく見るが、それが比較的最近できたシステムであるのをご存じだろうか。
17世紀までは若者と老人が同じ保険料の商品があり、そのために保険会社はすぐに潰れていたと、数学史ライターのFukusuke氏はいう。Fukusuke氏が上梓した『教養としての数学史』(かんき出版)より、近代的な保険システムを生んだド・モアブルの功績について解説する。
紀元前から存在した保険システム
2020年から始まった新型コロナウイルス感染症の大流行。
このとき、「コロナ保険」という保険商品が多くの保険会社から発売された。その一例を挙げると「500円の保険料を払うことで、3カ月以内に新型コロナウイルス感染症に罹患した場合、5万円の保険金が支払われる」というものだ。
しかし、こういった商品を販売した保険会社の多くは赤字となり、保険料の値上げや保険適用の範囲の縮小をせざるを得なくなった。理由は予想をはるかに上回る感染爆発と安価な保険料とのバランスがとれていなかったからだ。
保険システムのバランスをどのようにとるか。本記事はその歴史をたどる。
最古の保険システムとしていくつかの説があるが、最も古いものだと紀元前のハンムラビ王の時代にまでさかのぼる。
「隊商(キャラバン)」による交易において、ある隊商が自然災害や盗賊によって被害を受けたとき、隊商全体でその損害を補填し合うという仕組みが存在していた。