戦時下での選挙は「ロシアの思う壺」...ウクライナが急いで大統領選を行ってはいけない「これだけの理由」

世論調査ではゼレンスキーは引き続き圧倒的なリードを保っている。出馬の意向を公言している候補者の中で最も有力なライバルは、前回19年の大統領選でゼレンスキーに大敗したペトロ・ポロシェンコ前大統領だが、支持率はゼレンスキーの半分以下。

ザルジニーが参戦しない限り、ゼレンスキーが圧倒的な有力候補であることに変わりはない。

仮に有力なライバルが現れて勝利したとしても、戦争の基本的な構図は変わらないだろう。ゼレンスキーと彼が率いる「国民の公僕」党に対する主な反対勢力や批判は、国家主義的な中道右派と国家志向の市民から集まっている。

ロシアとの和解に前向きな大物政治家はウクライナにはほぼ残っておらず、わずかな支持者がいるだけだ。

22年以降、ユーリー・ボイコ元副首相やドミトロ・ラズムコフ前最高会議議長は有権者の支持を失い、親ロシアのビクトル・メドベドチュクや元メディア王のエフゲン・ムラエフは国を離れた。大統領選有力候補と目される人物はいない。

ゼレンスキーは、ユダヤ系にもかかわらず、ロシアから頻繁に「ナチス」のレッテルを貼られている。ロシアとの和解を推進する西側諸国では、彼を「タカ派」とみる向きも多いが、ウクライナ国民の多くは、政治家としてのキャリアの初期から彼を比較的穏健でハト派の政治家と認識してきた。

19年の就任以来、ゼレンスキー政権はロシアに対して過度に楽観的で軟弱、優柔不断であると国内で批判されてきた。ザルジニーの人気が高いのは、ロシアに対してより毅然としていて効果的であるとの期待もあるからだ。