最新記事
シリア情勢

「そもそも安定した時代がなかった」シリアの運命はダマスカスとアレッポを結ぶ「回廊の覇者」が決める【地政学】

FRAGMENTED BY GEOGRAPHY

2024年12月19日(木)15時45分
アラシュ・ライシネジャド(テヘラン大学助教〔国際関係学〕)

シリアの戦いの歴史

newsweekjp20241219053400-c1dbd4d76124c56ff715803cec946c14feb044f4.png


南西部のオアシスは、レバノンとの国境を成す山岳地帯と、東側の砂漠との間に挟まれている。首都ダマスカスはこのオアシスの中央に位置する。しかし、全国各地と有機的に結ぶルートが整備されておらず、歴代政権は力によって脆弱国家の内部崩壊を防ごうとしてきた。

北部の商都アレッポは、小アジアとメソポタミアを結ぶ交易の要衝だ。いつの時代も、小アジアを支配する者(東ローマ帝国、オスマン帝国、そして現在のトルコ)は、多くの人でにぎわうアレッポを物欲しげに見てきた。

シリアの政治の中心であるダマスカスにとっても、アレッポは重要なライバルであり、常に支配下に置いておきたい街だった。


外国軍の支援は海から

西部の地中海沿いには小高い山が連なっており、歴史的にアラウィ派(イスラム教シーア派の分派)やキリスト教徒といった宗教的マイノリティーが暮らしてきた(シリアの多数派はイスラム教スンニ派)。

このエリアに位置する都市ラタキアとタルトゥースは世界への玄関口だ。歴史的に、遠方の外国(最初はフランス、現在はロシア)との同盟は、この地域を通じて築かれ、ダマスカスの権力者を支えた。

この地中海沿岸部とアレッポの間には、オロンテス川と平行に南北に走る回廊があり、ダマスカス周辺のオアシスと、アレッポ商業圏を結んでいる。この回廊に位置する代表的な都市が、ホムスとハマだ。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

パラマウント、ワーナーに敵対的買収提案 1株当たり

ワールド

FRB議長人事、大統領には良い選択肢が複数ある=米

ワールド

トランプ大統領、AI関連規則一本化へ 今週にも大統

ビジネス

インフレ上振れにECBは留意を、金利変更は不要=ス
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
2025年12月16日号(12/ 9発売)

45年前、「20世紀のアイコン」に銃弾を浴びせた男が日本人ジャーナリストに刑務所で語った動機とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だから日本では解決が遠い
  • 2
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価に与える影響と、サンリオ自社株買いの狙い
  • 3
    キャサリン妃を睨む「嫉妬の目」の主はメーガン妃...かつて偶然、撮影されていた「緊張の瞬間」
  • 4
    ホテルの部屋に残っていた「嫌すぎる行為」の証拠...…
  • 5
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 6
    人生の忙しさの9割はムダ...ひろゆきが語る「休む勇…
  • 7
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 8
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
  • 9
    死刑は「やむを得ない」と言う人は、おそらく本当の…
  • 10
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」は…
  • 1
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 2
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価に与える影響と、サンリオ自社株買いの狙い
  • 3
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」が追いつかなくなっている状態とは?
  • 4
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
  • 5
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 6
    ホテルの部屋に残っていた「嫌すぎる行為」の証拠...…
  • 7
    戦争中に青年期を過ごした世代の男性は、終戦時56%…
  • 8
    キャサリン妃を睨む「嫉妬の目」の主はメーガン妃...…
  • 9
    イスラエル軍幹部が人生を賭けた内部告発...沈黙させ…
  • 10
    人生の忙しさの9割はムダ...ひろゆきが語る「休む勇…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 4
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 7
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 8
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 9
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 10
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中