最新記事
アフリカ

ニジェール駐留米軍の撤収で中国国営メディアが高笑い

China's State Media Reacts to US Withdrawal From African Military Base

2024年8月8日(木)18時30分
ジョン・フェン
ニジェール中部アガデスの米軍ドローン基地

ニジェール中部アガデスの米軍ドローン基地(2018) Mehdi Chebil / Hans Lucas via Reuters Connect

<ニジェールが「西側諸国の軍事介入を排除する道」をまい進していると歓迎>

中国の国営メディアは今週、米軍が西アフリカのニジェールからの撤退を完了したと報道。「西側の軍が追い出された」最新の例だと伝えた。

【動画】米軍に先駆けて完全撤退したフランス軍

中国共産党機関紙人民日報系のタブロイド紙「環球時報」は8月6日、無署名の社説の中で、アメリカはサハラ砂漠南部で貧しさにあえぐサヘル地域で重要なイスラム過激派対策の拠点を失ったと述べ、今回米軍が「渋々ながらニジェールから撤退」したのは、米政府がアジアで中国に対抗することに注力しようとしていることを示していると結論づけた。

この前日、米軍南アフリカ司令部はニジェール中部アガデス近郊に1億ドルを投じて設置した201ドローン基地をニジェール軍に引き渡し、10年に及んだ同国での活動を正式に終えた。

米当局者とニジェールの軍事政権は2024年に入ってから米軍の駐留継続について交渉を行ったものの合意に至らず、9月半ばまでに米軍を撤退させることを決定していた。米軍は7月に、ニジェールの首都ニアメー近郊にある101空軍基地から撤退している。

グローバルサウスのリーダーの一員を自認する中国は長年にわたって、アメリカの他国への軍事介入に反発し、米軍がアフガニスタンから撤退した際の性急なやり方も強く批判してきた。

米軍を追い出してロシアに接近

中国は、今回の米軍のニジェール撤退を恰好のプロパガンダ材料として歓迎している。環球時報はニジェールが「西側の軍事介入を排除する道」をまい進し、「西側諸国からの完全な独立」に向かっていると称えた。

同紙はさらに「今回西側の軍がニジェールから撤退したことを受けて、さらに多くのアフリカ諸国が同様の措置を取って外国の軍への依存を減らし、自衛能力を強化することにつながっていく可能性がある」と述べた。

約1年前にクーデターで実験を握ったニジェールの軍事政権は、フランス軍にも撤退を命じ、一方で今春にはロシアから軍事教官を招いている。

アメリカは2023年に、クーデターの発生を受けてニジェール向けの支援を一時停止したと発表していた。当局者らは、米軍の撤退が両国の二国間関係の構築の妨げになることはないと述べている。

ニジェールからの撤退により、アフリカにおけるアメリカのプレゼンスはさらに縮小した。アフリカ大陸唯一の常設基地であるジブチのキャンプ・レモニエには、現在も米軍が駐留している。ただしジブチには、中国も海外初となる軍事基地を置いている。

また米海軍は2023年にケニアの港湾都市モンバサに、防衛外交を目的とした活動拠点を開設した。米国防総省が毎年発表している基地構造報告書(米国内外の米軍施設に関する唯一の公式目録)によれば、ここはアメリカの外交政策目標を推進する目的で使用されている世界に数百ある軍事施設の一つだ。

ニューズウィーク日本版 英語で学ぶ国際ニュース超入門
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年5月6日/13日号(4月30日発売)は「英語で学ぶ 国際ニュース超入門」特集。トランプ2.0/関税大戦争/ウクライナ和平/中国・台湾有事/北朝鮮/韓国新大統領……etc.

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

エルサルバドルへの誤送還問題、トランプ氏「協議して

ワールド

米民間セクター代表団、グリーンランドを今週訪問 投

ビジネス

伊プラダ第1四半期売上高は予想超え、ミュウミュウ部

ワールド

ロシア、貿易戦争想定の経済予測を初公表 25年成長
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
2025年5月 6日/2025年5月13日号(4/30発売)

「ゼロから分かる」各国・地域情勢の超解説と時事英語

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来が来るはずだったのに...」
  • 2
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に高く、女性では反対に既婚の方が高い
  • 3
    タイタニック生存者が残した「不気味な手紙」...何が書かれていた?
  • 4
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 5
    ポンペイ遺跡で見つかった「浴場」には、テルマエ・…
  • 6
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」では…
  • 7
    インド北部の「虐殺」が全面「核戦争」に発展するか…
  • 8
    クルミで「大腸がんリスク」が大幅に下がる可能性...…
  • 9
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 10
    中居正広事件は「ポジティブ」な空気が生んだ...誰も…
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新研究】
  • 4
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 5
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドロ…
  • 6
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 7
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 8
    私の「舌」を見た医師は、すぐ「癌」を疑った...「口…
  • 9
    健康寿命は延ばせる...認知症「14のリスク要因」とは…
  • 10
    ポンペイ遺跡で見つかった「浴場」には、テルマエ・…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 7
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 8
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 9
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 10
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中