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【独占取材】岸田首相が本誌に語った「防衛力の強化」と「外国人労働力」の必要性

JAPAN’S CALL TO ARMS

2024年5月10日(金)16時04分
トム・オコナー(本誌外交問題担当)

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米輸送機V22オスプレイが登場した2022年の陸上自衛隊の実弾演習 TOMOHIRO OHSUMI/GETTY IMAGES

昨年5月に広島でG7サミットを主催した際、岸田はインドネシアとベトナムをASEANの代表として、あえて招待した。

シンガポールのシンクタンクであるISEASユソフ・イシャク研究所が今年4月に発表した調査結果によれば、ASEAN諸国が中国とアメリカの2大国のうち1つを選んで同盟を結ぶことを強いられた場合にどちらを選ぶかという質問で、中国とする回答がアメリカをわずかに上回った。

日本は両国を抑えて、最も信頼できる国に選ばれている。

アジア地域との結束を強化しようとしている日本の意思を示そうと、岸田は4月に訪米した際、バイデンとフィリピンのフェルディナンド・マルコスJr.大統領との初の3カ国首脳会談に臨んだ。

その少し前には、インドネシアのプラボウォ・スビアント次期大統領と会談し、安全保障などの分野における協力を強化することで合意している。

中国、北朝鮮、そして韓国社会の一部には、日本に対する疑念がある。中国と北朝鮮の場合は日米の同盟関係と日本の過去がその要因だと、シンガポール国立大学のジャ・イアン・チョン准教授(政治学)は指摘する。しかし台湾や東南アジア諸国では事情が異なると、彼は言う。

「(台湾や東南アジアは)日本による地域参加の拡大を歓迎するかもしれない。日本とは数十年に及ぶ協力関係に基づく高い信頼感があり、地域の安定を維持する上で大きな役割を担えるとみている」と、チョンは本誌に語った。

「日本は国益を守り、友好関係にある国々と協力していく一方で、北東アジアの近隣諸国の一部との間に不要な摩擦を増やさないよう慎重に動かなくてはならない」

岸田は首相に就任して以来、韓国との関係修復に力を入れてきた。北朝鮮による核・ミサイル開発については日本と世界にとっての脅威と見なしているが、北朝鮮との緊張関係を緩和するために金正恩(キム・ジョンウン)総書記との初の直接会談を検討する可能性にも言及している。

金との直接会談については、その可能性を4月の訪米の際にアメリカ側と協議し、韓国政府との継続協議の中でも話していると、岸田は語った。

「北朝鮮との懸案の解決に向けて、首脳会談を行う方向で努力を続ける」。この件での協議は、5月下旬に予定される日中韓3カ国のサミットでも行われるだろう。

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