【独占取材】岸田首相が本誌に語った「防衛力の強化」と「外国人労働力」の必要性
JAPAN’S CALL TO ARMS
安倍ドクトリンの継承者
岸田は中国が東シナ海の尖閣諸島で「一方的な現状変更の試み」を強化していると非難したが、本誌のインタビューでは「わが国は主張すべきことを主張するが、同時に対話を重んじる」と強調した。
外交と軍事の2方面で並行する努力は、過去の経験をなぞるものでもある。かつて岸田は安倍政権で外相を務め、短期間だが防衛相を兼務したこともあった。
愛国者を自認した故・安倍晋三は日本で在任期間が最長の首相だったが、いくつものスキャンダルを抱えるなか、健康悪化を理由に辞任した。それでも安倍は、日本の軍事構想を大幅に変更した初めての首相だった。
安倍が打ち出した「自由で開かれたインド太平洋」という概念は、今やアメリカの戦略関連文書のどこにでも用いられ、日米豪印でつくる協力枠組み「クアッド」の土台になっている。安倍は22年に衝撃的な銃撃事件で命を落としたが、岸田は故人のレガシーを引き継ぐというのが、大方の見方だ。
「今の日本は、アジアで自由主義の国際秩序を維持かつ先導している。それは、日本と域内諸国の国益にかなうことだ」と、第2次安倍政権で内閣官房副長官補(外政担当)と国家安全保障局次長を務めた兼原信克は本誌に語った。
「人はみな平等で自由であり、自らの幸福を追求する権利を持つ。そういう個人の自由は日本人のサムライ精神に合致する」
安倍が15年に行ったように、岸田も4月の訪米の際、米連邦議会で演説し、日米同盟関係のさらなる強化を主張した。「議員たちから幅広い支持、拍手、そして意見を得ることができた」と、岸田は振り返る。
脅威は国内にも
日本国内では、これほど拍手を受けることはない。自民党は野党勢力が弱いこともあって権力を維持し続け、総選挙も来年秋まで行う必要はない。
だが内閣支持率が20%台に沈むなかで、岸田は今年9月の任期満了に伴う自民党総裁選で敗れる恐れがあると、元米外交官でアジア・ソサエティーの国際安全保障・外交担当副所長であるダニエル・ラッセルは言う。
「彼の直近の難題は、9月以降も首相の座にとどまることだ」
経済を見ると、日本は1960年代以来初めてGDPがドイツを下回り、世界4位に甘んじている。人口の減少と高齢化の問題が重くのしかかる日本経済だが、ようやく30年に及んだデフレを脱してインフレに転じ始めたところだ。